3日目
僕の死んだ理由を、どうしても、知りたかった。
僕が一時とはいえラノベの主人公のような人生を過ごしたのか、それが死亡原因の理由であるのか、関係ないのか、理解したくて仕方がなかった。
なのでいつも通り駄女神を呼び出すと、用件を伝える。
「僕の生前十五日前までの出来事を知りたい。教えてくれ」
「そこまでの情報を得るには、しかるべき手続きと期間が必要ですね」
「女神なんだろ? 一応だけど、神様の分類だろ?」
「手続きと申請をしないと、何でも出来るようにはなっていないんですよ」
「無力な神様」
「一応すべての情報を、あらゆる権限に、手続きさえ踏めばアクセスできるのですから、十二分に超然性はあると思いますが?」
「期間は」
「数日で十分です」
ということで、地球圏を担当している女神様の力により、数日後に僕の生前十五日前から死ぬ前までの細かい情報を手に入れることが可能になったらしい。
女神はそれでも難しい表情を崩さない。
「ただしそれで犯人が分かるかどうかは不明瞭です」
「?」
「獲得できる情報はあくまで、あなたの喪失している記憶になります。死亡理由の記録ではありません。あなたが見て、あなたが感じた情報を得られるのです。起こった出来事すべての真実が判明するわけではありません」
「起こったことすべての真実の記録を申請してくれない?」
「それを申請して通すにはあなたがその期間に、間接的直接的問わず、接触したすべての人間の情報を獲得しないといけないので、数ヶ月か半年はかかります。真実は判明するかもしれませんが、あなたがすでに異世界転生したあとになります」
「じゃあ、僕だけの記憶なら、数日なんだな」
「本人の了解は得ており、あくまであなたが見て感じたことを、ダウンロードするだけ、というイメージですね」
「おっけだ。それでいい」
とりあえず数日は待機確定となった。
申請さえ通せば、有り体のことは何でも出来るということなので、詳細を詰めることにした。
「ほんとに何でもできるんだな?」
「おおむねは通ると思います。大量虐殺をおこなう、全世界時間停止するなどの、地球的な影響が大きく有ると認められる事象以外は、大抵は」
「初めて神っぽく感じている」
「素直な思いは心のうちに秘めておいた方がいいですよ? どのみち把握しますが」
神だ、こいつは。
「あなたが要望しそうなことといえば、自分以外の人類全員を時間停止させてお触りしたい、は無理でしょうが、たとえば学校内の人間全員を五分間だけ時間停止なら、さほど影響力ないと判断されて通ると思います」
「おまえは僕をなんだと思っているんだ?」
「札幌市内全員の女性の下着を消失させる、は無理でしょうが、目の前を歩いているちょっと勝ち気な女性の下着を消失させる、なら小規模なまか不思議現象が個人に起こっただけなので、おそらく通ります」
「分かった、おまえが僕に対して抱いている感情はよく分かったよ」
とはいえだった。
「そこまで何でも出来てしまうと、逆に迷うね」
「欲張りですね」女神様はにこにこだった。「何でも出来るだから、なんでもやりたいことを要求すればいいんですよ」
制限がある自由の方がやりやすいことはある。
特殊能力を何か考えろ、とひとくくりにされるより、日本刀を使用した必殺技を考えろ、と限定された方がわかりやすい。
僕の状況の場合、明確な敵がいるわけでも、生命の危機に瀕しているわけでもない。
いや、そう考えると、僕には僕を殺した敵がおり、すでに生命を絶たれていた。
「僕を殺した犯人にたどり着ける、なにか特殊能力がほしいね」
「ですから、それに関しては申請済みですよ? あくまであなた視点のあなたの当時の記憶という状態ではありますが」
「それってやっぱり刺された直後の僕の記憶をみるだけだから、それだけで犯人確定ってわけじゃないよね?」
「あなたが犯人の顔をみている、そして犯人があなたの顔見知りであれば、十分それで事件は解決、さっさと異世界転生めでたしめでたし、では?」
この女神様は二言目には異世界転生だ。
「そんなに異世界転生させたいのかよ」
「女神の査定に響くんですよ。営業成績はあくまで契約ベースなので、一件でも増やさないと」
「女神様って、なに、誰でも出来るの?」
「その辺りの詳細は禁則事項ですー。ということですが、有り体にいえば、毎年有能な人材は発掘されます。その際に、成績が伴わない女神は、女神であることを剥奪されますね。記憶などは当然消去されて地球か異世界のどこかに放り出されているとされます。成果主義が採用されています」
「シビアだね」
「生きるって大変ですよね。ということで、犯人探しは協力しますが、そつなく転生もしてくださいね」
なんだか、と感じた。
釘を刺されてしまったような気がした。
そして特殊能力を付与してもらう話は、なんだか宙に浮いていた。
犯人探し、か。
誰かと面と向かって会話するしかないようだ。




