日本滞在 6日目
今まであえて触れていなかったが、家族の元にも一応寄ってみることにした。
母親と妹がいるはずだ。変わらぬところの倒壊しそうな一軒家。平岸一丁目。
死んでからあまり触れず、死んだあともあまり触れなかった家。
小学校になってから移り住んだ家だった。
小学生低学年の頃までは、新札幌の方に住んでいた。それより前は夕張市にいた。父親はいない。昔はいたけど、今は不倫相手と一緒にいるかもしれない。
普通に感謝しており、普通の家族だと思っている。
それでも死んでしまったときは寄らなかった。
父親がいないから、最終的には、母親が六十七十過ぎた頃には自分がきちんと介護するなり、老人ホームにいってもらうなりするつもりではあった。
申し訳なかったのかもしれない。
死んでしまう前まで、なんの恩も返せず。
いなくなってしまったことを。みてられなかったのかもしれない。
異世界転生して十年以上経過して、ようやく。
僕だけでは使いきれない資金を得て、ようやく。
ようやく。
僕は帰ってくることができた。帰ることの気持ちができた。
だからすぐに気づく。
僕は親に申し訳ないと思っていたのだ。
せっかく産んでもらったのに。
なんの恩も返せないまま死んでしまってごめんないさい、と。
ようやくなにかしらを返せるようになって。
僕はようやくこの家の前までやって来られた。
そして現実は実に。
本当に。
常に残酷だ。
別れた父親が出入りしていた。
金を無心している。
家では母の財布が放り出されている。
妹が泣きながら母を叱責している。田村さんの彼氏が出入りしていた頃は落ち着いていたが、いまはだめらしい。
そういう人間なのだ、あいつは。
そういう人間の血が流れていることが嫌なのかもしれない。
僕が終わらせないといけない。
だからかもしれない。
今の今まで近づかなかった理由は。
もし。
こんな状態のときに。あの父親がやってきていたら。
僕はもう我慢しない。だから。
そして。そして。そして。
僕は父親の姿をみてしまった。
その、あまりに当時と変わらぬ醜悪な姿を。
精算しないといけない。
親は選べない。
子供として、親への責任を果たすことが、せめてもの。
最後の親孝行だ。




