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僕が異世界転生するまでの30日間  作者: 小柳和也
二部 世界が終わりそうなので、昔の友達だけでも助けてみた 。

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日本滞在 5日目

 忘れていたわけではないが、田村さんの元彼がどこにいるかも把握していた。

 どうやら新聞販売店で働いているようだ。まあ収まるところに収まったという感じだろうか。彼のことだから大学進学もせずにプータローしていて、適当に求人で見つけたところに収まったという感じだろう。


 早朝二時起き。二百部ぐらい配達し、翌日のチラシ作り。その後九時頃に事務員がくるまで当番。夕刊まで寝て、夕刊配達五十四部。夕刊後は営業と集金。主に契約済みの客への更新のお願い。


 そんな感じで一日が終わっている。どうやら彼以外に社員はいないようだ。

 新型ウイルスの影響で対面集金が禁止されはじめているようで、田村さんの元彼は毎回のようにコンビニ払いのお願いに回っていた。


 それでも高齢者などからは腰が痛い、外出したくない、来てほしいなどといわれている。

 かつて僕を恫喝し、人の話を一切聞いていなかったはずの田村さんの元彼だが、すっかりそんな幼い頃の面影はなくなり、正直引くぐらいの好青年に様変わりして、営業スマイルをてきぱき発揮して、高齢者のお客に対応していた。


 たまに本社からの営業が入るそうだが、田村さんの元彼以外とは契約したくないと断られることが非常に多いそうだ。

 営業成績優秀。集金率よし。配達の不着もなし。年齢も三十代前半。お店としては文句なしの戦力だ。

 特に困ってないようなのでこいつには別に現ナマあげなくてもいいかな、と確信しながら観察を続けた。


 違和感を覚えたのは業務内容ではなかった。

 仕事は完璧に近いレベルでこなしている。


 ただ、時々時間があると、セイコーマートのイートインや朝当番の時間に、小さめのパソコンみたいなものを開いているのだ。


 何か業務用の作業をおこなっているわけでもない。

 すぐにひらいて、即座に起動するらしく、すぐにキータッチを開始する。

 一体全体なにをしているのかと思えば、小さなパソコンを入れていたケースにpomeraと刻印されていた。


 試しに調べてみると、物書き御用達のネット機能などを排除し、文字入力のみに特化した、実質的な持ち運び可能サイズのワープロのようなものだった。


 そういえば、僕も昔試しに購入したことがあったような気がする。

 僕は書き専ではなく、読み専であることがすぐにわかったので、最初に起動して以来、触らず実家のどこかに収まっているはずだ。


 物書きを生業にする人に一定以上の需要があるらしく、フリマサイトなどでは頻繁に取引もされている。


 軽くネットに潜ってみた限りでは、ノーパソなどでは重すぎるし、ネットに接続してしまう誘惑がある。pomeraにはその機能はそもそも無く、起動後二秒で書き始めることができるので、てきぱき仕事する人にとって、デジタル文房具として重宝されているそうだ。


 そんな物書き御用達のpomeraを、なぜ田村さんの元彼みたいな陽キャがつかっているのだろうか。

 軽く覗いてみることで、それも理解した。

 こいつ、ラノベ書いてやがったのだ。


 おいおいおい。

 陽キャの権化みたいなやつがラノベ書いてやがった。

 しかも最近青春ラブコメのようだ。なんだよ、結局そういうジャンルはお前らみたいな奴が書くのかよっ!!


 一通り憤ったあと、改めて田村さんの元彼の様子を探る。

 配達終わりが五時。チラシ制作は十五分。新型ウイルスの影響で、スーパー関連はもとより、頻繁に入っていたパチンコなどのチラシもなくなっているようだ。

 そのおかげ五時半ぐらいから九時まで、田村さんの元彼は執筆時間に当てていた。

 時々新聞が届いていないなどの連絡があるが、それでも業務時間中にきっちり数千文字を、毎日のように書き続けているようだ。


 昨日今日書き始めた人間のペースではなかった。手慣れてもいる。

 なんだか。とっても。

 なぜだか判らないが。


 負けた気分になった。

 田村さんの元彼がラノベを書いているのだ。

 許し難い気持ちにさせられる。


 ちょっとこいつにはいろいろ説明してもらわないといけないようだ。

 そういえば昔、田村さんと一緒に行動しているからって、詰められた思い出があった気がする。

 とにかく話を聞かせてもらわないことには、赦されない。

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