幕間 田村さん
「あー、すみません、一生っ!」
一生がちょっかいかけていた成人男性は手を振りながら、列の向こうへ消えていった。
こんなご時世に見知らぬ成人男性なんかに声をかけないでほしい。買い物につれてきていることだってリスクが大きい。
一生は去っていった男性を見送りながら、
「はーい」
と、答えた。
「一生。勝手に知らない人とはなしちゃ駄目だって、いっつも言ってるよね?」
「でもママ。あのおじさん僕と同じ名前なんだよ」
「え?」
「だからいいんだよ。それに優しい人だったし。ママを大切にしてねって。だから大丈夫だよ」
同じ名前。
あの人と。
ただの偶然?
珍しいよりの名前ではあるけど。
でもそんなことって。
嘘だよね?
でも。
感じ取ってしまう。
あなたなのでは? あのとき死んでしまった、いなくなってしまったあなたなの。
そんなことはあり得ない。
でも。でも。でも。
唐突に、田村は確信した。
あのときいなくなってしまったあなたなんだ、と。
嘘。ありえない。でも。でも。
確かにいた。
そこにいた。
会えたかもしれない。
でももういない。
いってしまった。
そこにいたけど。
でももう会えない。
会いに来てくれた。でももう会えない。
田村は涙をこぼしていた。不思議そうな一生少年の頭を抱きしめる。
「来たんなら。声くらいかけなさいよ。ほんと。バカ」




