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僕が異世界転生するまでの30日間  作者: 小柳和也
二部 世界が終わりそうなので、昔の友達だけでも助けてみた 。

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日本滞在 3日目④ 三上さん

 三上さんのお家で飲むことになった。

 いい度胸だね、と言っておいた。

 ほかに行くところないし、襲ってきたら殺す度胸があるからいい、とのことだった。


 どこぞの元教師とは別次元に綺麗な、落ち着いた汚れ具合の部屋だった。

 きちんと見えている床の上に置かれた三脚テーブルの上に、綺麗なグラスと高級なウイスキーが注がれた。三上さんはそれを一息に飲み干してから、再び手尺で注いでいく。やば。思っていたよりガチ目にアルコール依存かもしれない。


「つまらない話よ。親に逆らえなかった。以上おわり」


 三上さんはロックのウイスキーを水みたいに飲み干しながら、語り始めた。


 プロに勝った日、いわれたの、バスケは大学で辞めてほしいって。

 私がなんでそんなこというのって激昂したら、おまえにのたれ死んでほしくないっていわれた。ショックだった。バスケをそんなふうに見られていたって。同級生の子みたいに刺されてもいいんかって。それは関係ないでしょっていったけど。ほんと最低。だからその場で縁を斬りたかった。でも全部親の金で生きていたから。だから。卒業してからは。バスケも辞めて、親からも離れて。意外と独りでも生きていけるね。時々寂しいけどお酒あるからいい。


 決定打は父親との抗争。

 でも。

「でもね。もうそれも十年ぐらい前の話だから。今なら少しわかる。私はプロでやり続ける技術はあったけど、モチベーションはなかったかもしれない」


 あそこで生きていくのはほんと大変。

 なるのは大変、なり続けるのはもっともっと最高につらい。


 プロに勝ったということだけでもしかしたら満足しちゃったのかもしれない。父はそれを会場で観て感じてしまったのかもしれない。もうわかんないよ。でも父は試合のあとわたしに就職を命令して、私は反発して逃げ出して、ということです!


 夢を叶えそうになり。叶えそうなところまで行って。でも彼女はもう夢の中で戦う元気はなくなっていた。

 プロに勝つということが、逆に彼女の物語を終わらせてしまった。


 お酒を飲み続けながら、三上さんは、昔の友達に自慢したかったと語る。

 死んじゃった友達に自慢したかった。頑張ってプロに勝ったって。君がやれっていって、それで頑張ってプロに通用するまで頑張ってプロに勝ったまでいったって。


 でももう駄目。疲れちゃったかもしれない。父は正しかったかも。当時の私が納得できなかっただけで。ほんと、だから、おやすみ。


 三上さんは語り疲れたように眠り落ちていった。そこら辺に置いてあった毛布をかけてやり、枕を頭の下に差し込んだ。起きそうもない。


 ほんと頑張って頑張って結果だして。

 そして満足してしまったのだ。


 満足して彼女はバスケを辞めてしまった。

 世界がこんな状況でも彼女は彼女らしく生きて行けそうだ。


 少しだけ美味しいお酒を飲めるだけの現金を置いていくことにした。

 アル中の気配があったから、それもこっそり処置。できれば長生きしてほしい。


 大好きなお酒を飲みながら。

 夢をみせてくれたお礼だから、少しぐらい神の采配加えてもいいよね?

 少しだけホッとして安心して、三上さんのおうちから離れた。


 鍵を外から閉めて、ドアポストに落とす。さようなら。

 それから二度と三上さんとも会うことはなかった。

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