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僕が異世界転生するまでの30日間  作者: 小柳和也
二部 世界が終わりそうなので、昔の友達だけでも助けてみた 。

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日本滞在 1日目

 正直感慨深い想いがあって、日本に帰ることを選んだわけではない。

 帰ることができたから帰ってきただけだった。

 思い出に浸るつもりもなかった。


 顔もまったくの他人にして変更してから、転生した。

 昔世話になった人達の現状を遠くから見つめて、無事に暮らしていることだけを見守って、また異世界へ帰るつもりだった。


 チート特殊能力も限界突破して成長し尽くしていたおかげで、見知った人がどこにいるのか補足することも可能になっていた。

 そして気づいた。

 僕の生きていた頃とは、世界が変わったことに。


 2021年の春だった。桜が咲き乱れる季節。北海道札幌ではまだ桜が満開になるまでしばらくかかる季節。

 世界は、未知のウイルスが蔓延し、人々は混沌の中にいた。

 いきなり死亡するようなウイルスではない。

 ただ潜伏期間が数週間以上あり、変異もする。高熱や肺炎症状が続くことで持病持ちで高齢者の死亡率が高かった。ウイルス蔓延の阻止を名目に、世界各国で都市閉鎖や外出自粛がだされていた。


 自粛の影響で飲食店や遊技店が営業自粛に追い込まれ、僕のかつて生きていた世界は、ちょっとこの前までとは、別の空気に満たされていた。


 劇的に生活が変わったわけではない。

 ただウイルスを感染させないように自らを律する人と、大したことないとうそぶいて律さない人と、仕事しないと生活できないと嘆く人々の関係により、より感情の混沌が増していた。


 外出アイテムとしてマスクはほぼ必須だった。毎日身に着ける衣服に近しいものになったせいか、使い捨ての節約のためか、センスを試されるような布マスクが市場に登場するようになっていた。ワクチン接種が進んでいるようだが、それでも世界の形は確実に変わっていた。


 そんな世界で、僕が転生前に世話になった人らはどうしているんだろうか。

 それぞれの人生を歩んでいるようだった。

 三十路をすぎても。異世界転生しても。日常は続いていってしまうようだ。


 僕にできることはあるだろうか。果てしない資金と人脈は、いくらでもある。数万数十万の人を助けることはできるだろう。


 でも僕は僕の目の前の人を助けることしかしたくない。

 だから。

 田村さんを、三上さんを、先生を。棚沢さんを助けるよ。


 昔やっていた二郎系ラーメンが潰れそうだ。店の前に大金を置いておけば営業を続けてくれるのだろうか。あとで置いておこう。


 日本に。世界に。物理的精神的な助力を届ける気力はない。

 でも目の前にいてくれた人達を。

 昔よくしてくれた人達ぐらいは。救いたい。救ってもよいのなら。


 ・


 見知った世界を闊歩していると、見知った顔の女神がやってきた。

 敵意満々。今にも僕を殺したそうな瞳だ。両手の拳は握られている。


「なにしに帰ってきたんですか」

 語感から察するに、今すぐ死ねと言われているようだ。察してしまったが、世間話をするように、帰ってきた理由を語る。

「異世界を攻略し尽くしてさ。ちょっと地元に帰ってくる感覚だったんだけど、大変なことになっているね」

「あなたには関係がないことです。いえ、あなたは干渉してはいけないことです。あなたは指をパチンと鳴らすだけで世界情勢に影響を起こせるレベルの人なのですから」

 女神の仕事はこの世界を救うことではないのだろう。

 救うことだとすれば、僕のような存在を異世界転生させはしない。


 より地球宇宙圏などの大きな視点から、物事を判断する。

 今の世界の状況もなんとかすることはせず、ただ見守るのだろう。

 でも訊かずにはいられない。


「女神の力でどうにかできないのか」

「私の手を下すようなレベルの話ではありません。世界を救うのが仕事ではありませんから。平穏と混沌と秩序です」

「そういうと思ったよ」

「なのであなたが異世界で獲た力で、この世界を救おうというなら、全力で妨害します」


 僕に世界は救えない。救うことも許されない。救う力はあったとしても。

 そうだというなら、なにができるのだろうか。なにをしてもいいのだろうか。

 わからなかった。判断できない。


 だから感じたことだけを、口にする。

「世界を救えないのなら」

「なんですか」

「目の前にいる人を数人だけなら、こっそり助けるぐらいなら許されるかな」


 女神はため息をつきながら、諦めたように目を伏せた。拳は解かれていた。

「影響力が最小単位である限りなら、目をつぶります。ただそれだけにしてください。自己満足がすんだら、帰ってください」

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