異世界転生 十四日目
魔王軍の定期略奪を止めてしまったという派手な行動の結果は、きちんと露呈という形で返ってきた。
従軍名目の略奪行為の日と同様に、街道沿いからやってきたのは冒険者ギルドの一団だった。村人が避難することはなかったが、村の守衛をしている僕は当然のように、そいつらと対面することになった。
「守衛。最近、魔王軍を撃退した冒険者がいるそうだな。連れてこい」
ギルドの先兵にそんなことをいわれてしまった僕は、一瞬悩む。
ここでしらを切ったところで村長等が困った顔で僕を差し出すし、ここで先兵らを殺したところでこの村がやっかいごとに巻き込まれる。
守るためとはいえ、すでに行動してしまったのだ。もう後には引けない。
正直に答えることにした。
「僕がお探しの冒険者です」
「はぁ? 畑仕事までやらされている守衛に用はない」
「ですから守衛をやりながら畑仕事をしているのです。あと冒険者を名乗ったことはありません」
「だぁかぁらぁっ! おれらも暇じゃねーの。早く呼んでこい? あとでお目玉くらってもしらねえよ?」
話が通じないタイプのようだ。
殴り倒してしまうことで証明としようかと思案していると、
「おまえが本物なら証明しろ。ロビンスを倒してみせよ」
団体の後ろから、長身の女が出てきた。
汚れ一つない綺麗な甲冑を身にまとった、茶髪の女だった。二十代前半ぐらい。女に道をあけるように、冒険者勢が割れていく。ロビンスと呼ばれた先兵も、地べたに片膝をついてかしこまっている。
「ずいぶん偉そうですが、偉いんですか」
「王国軍殲滅隊隊長シュル。現在は冒険者ギルドの相談役の座におさまっている、ただの無料飯ぐらいさ」
この国の最も野蛮とされる軍隊の長にして、さらに野蛮そうな冒険者ギルドを実質的に統括支配しているという王族出のお嬢様のようだ。
「倒したあとで暴行罪で逮捕とかやめてくださいね」
「安心しろ。我々に一般人の拘束権は与えられていない。代わりに装備の携帯許可があるだけだ。夜道に独りで歩くときは注意するんだな」
野蛮な奴らだ。少しだけ力を解放することにした。
ロビンスが剣を抜く。すでに女王様が出てきた以上、話し合いで解決はないようだ。
「すまないな。加減をすると、お嬢に殺されるんでな。死んでくれ」
そんな物騒なことを口走りながら、上段から振り落とされた必殺の一撃。剣道なら面打ち。回避できようのない一撃。
僕は剣の軌道を見つめながら、それを指で摘んだ。ポッキーをポキっと二つ折りにするように直剣を折った。
ロビンスが折れた剣を握ったまま硬直している。その足下に折れた剣の先端をポンっと投げてやった。
「ご満足ですか」
「ご満足だ。話をしようか」
ただの天下りで相談役をやっているわけではないようだ。
お嬢さんのキモのすわりようはなかなかだった。
ここまでキチった力を見せつけても、畏怖するどこか、楽しんでいる。ロビンスくんなんて目を丸くしたままへたりこんでいるのに。
「私には、魔王を倒せるような技術が足りなかった。私には意志がある。魔王を殺して世界を平穏にするという強い意思だ。ただ筋力も技術も、まだまだ未熟。魔王殺害しうるという志だけは人の万倍あるのだが、それ以外なにもない。貴様は私の剣になるといい。私の意志で、おまえの剣で、魔王を滅そうじゃないか」
こういう人は強い。能力はないのに意志だけはある。おごっているわけではない。自分を理解しているのだ。客観力がある。
人の上に立つ資質。それがある。僕にはない。人の上に立って人を導く意志はない。
ならば。
これは運命なのだろう。
力を彼女に託すことは。
寒村を出て、冒険者ギルド一行と共に、街へ出ることになった。
魔王を滅するために。




