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因縁

――フユキとゆかりがネメシス幹部を撃破していた頃、東口では校庭からの侵入を断念した異星人達で溢れていた。


「こちら東口B班!異星人の数が多すぎますー!応援をお願いします!」


女子生徒がその数に押され、通信機に訴える。


『ラジャ、今から向かうので建物の中に隠れていて下さい!』


すると爽やかな少女の声が応答し、そのまま通信は切れた。


「あー!誰でもいいから早く来てー!」


「いくらなんでも数が多すぎんだろ!」


班の全員が文句を言いながら建物内に隠れると、馬に乗った少女が現れ、後ろに乗っている少年が銃を乱射する。


「わ……あれ……佐伯さんじゃない!?」


「後ろは緑川だ……学校辞めてなかったんだ。」


銃が当たった異星人達は次々眠りに落ち、倒れていく。


それに続き、オレンジ色の髪の少女が軍勢の群れの真ん中に突っ込んで行くと、爆風でそれを倒して行った。


「コズミックピンク……!」


「現役ヒーローだ!やっぱり強いんだ……!」


若葉は周りを見渡し、異星人達が身動き取れなくなったことを確認すると馬から降りる。


「全員やっつけたかな?」


「数、多いって聞いたから皆で来たけど案外すぐに片付いちゃったね、持ち場に戻る?」


ピンクは息をつきながら言う。


全体の戦闘力が高いこともあってか場の空気は少し緩んでおり、彼らは足元で転がる異星人達を縛ろうともしていなかった。


「お、あかりちゃんやーん!何しとんのこんな場所で。」


その一言で、場の空気は一気にひりつく。


「田村さんに……赤松所長!?何で双星に……」


「15周年を祝いに来たんだが、これは一体?」


「あー…ネメシスっていう異星人組織が襲撃して来たん…です」


「は?んなら何で通報せんの?」


「ここ、通信が妨害されてて……」


バツが悪そうに答えるあかり。

赤松は異星人達を見ると、ゆっくりと近付く。


「……寝ているのかな?」


「あ、はい……麻酔銃で……」


「何故、殺さない?」


赤松の問いにピンクの思考は停止する。


「な……何を……」


「何故殺さないんだ、目の前にこんなに沢山の異星人がいるのに」


そう言うと赤松は1人の異星人の頭を掴みナイフを抜く。


「寝ている間に死ねるとは幸運な奴だ。」


赤松が異星人の胸目掛けてナイフを振り下ろそうとした、その時。

若葉が彼の手を掴みそれを止める。


「若葉ちゃん!何してんの!」


「殺さなきゃ……駄目なんですか?」


若葉の真っ直ぐな目を見て、赤松はナイフを放し苦しみ出す。


「やめろ!そんな目で私を見るな!」


赤松は暫く唸った後、スっと立ち上がり

「……私は墓参りを済ませる。喜助君、後は頼んだ」

よろけながら、どこかに姿を消した。


「あーあー若葉ちゃん、あの子に似とるもんなぁ。赤松さんのトラウマ刺激してもうたみたいやわ。」


「田村さん……私、貴方とずっとお話したかったの。緑川君の記憶を消したって本当?」


若葉が田村を睨みながら言う。


「ああ、本当やで。その様子だと記憶戻ってしもたん?あーあ、また消さんとあかんか。」


「もう消させたりしない……!田村さん、私は……貴方を倒します!」


「若葉ちゃんダメだ!そいつは僕達じゃ勝てないよ!」


緑川の制止も聞かず、若葉はダガーを抜く。


「えっ!?ちょっとどうなってるの!?」


ピンクはこの異常な状況に戸惑うことしかできず狼狽えていた。


「あーあー……めんどいなあ……若葉ちゃん、悪いんやけど今のあんたじゃ俺には勝てへんよ?」


田村はそう言い放つと不気味に笑った。


★ ★ ★ ★


「誰もB棟に近付かなくなっちゃったわね……」


私は屋上の手すりの上で頬杖を付きながら呟く。


「まあ元々俺達待機の予定だったし……体力温存しておこう。」


焔が笑顔で言う。


「そうね、異星人も色々種族がいて……地の戦闘力が高いやつとかもいるし。」


ふと、玉馬の基地で出会った大男を思い浮かべる。

私の氷を簡単に砕いてしまったあの男……私やウリュウとはまた違う存在のようだった。


「鬼族とか龍族のことかな?確かに戦ったことあるけど……あの人達は戦うとかなり厄介だね。

ネメシスにはあまりいて欲しくないな。」


焔が厄介だと言うなら本当に油断できないのだろう。

龍族に鬼族……見た目の特徴からして、あの男は鬼族だったのだろうか?


まだ敵が残っていないか確認しようと下を覗き込むと、校庭に誰かいることに気付く。


スコープを覗くと、そこには玉馬で出会った少女が怪我を抱えながら校庭をふらふらと歩いていた。


(リカちゃん!?……また怪我してる……… )


撃った覚えは無いので、どこかから逃げてきたのだろう。

あんな子供まで参戦してたなんて……!


瞬間、急な耳鳴りに襲われる。


「……っ!」


「リリア!大丈夫!?」


焔が私に駆け寄り、私の肩に手をやる。

頭が痛い……!ここに来たばかりの時に襲った、あの痛みによく似ている。


『お姉ちゃん……!』


誰のものかも分からない声と、波の音が私の頭の中に響く。


(たす……けなきゃ……!)


何かに駆られるように、私は走りだす。


「焔!私ちょっと校庭に行ってくる!」


「え!?ちょっとリリア!待機してろって言われたでしょ!?」


焔の制止も聞かず校庭に降りて行くと、リカちゃんは限界を迎えたかのようにその場に座り込む。


「リカちゃん!」


駆け寄ると、リカちゃんは不思議そうに私を見た。


「あ……この前玉馬にいた人……?」


「ええそうよ……大丈夫?誰にやられたの、その傷?」


「この前私の足蹴ってきた人とさっき鉢合わせちゃって……顔見るだけでも不快だって言って突き飛ばされちゃったの。」


あの男、また子供に手を上げたようだ。


「どこが痛いの?」


「足と……背中を思いきりぶつけて……」


足が腫れてる、また折れたのだろうか?

服から覗く背中の打撲も痛そうだ。


「大丈夫よ、私が冷やしてあげる!その男、どこにいた?B棟付近をうろついていたのかしら。」


「う、うん……さっき裏にいたよ。すごくイライラしてて……怖い顔してた。」


リカちゃんが言い切ると、私と彼女に大きな影が落ちる。


「へえ、それってこんな顔か?」


背後から男の不気味な声が聞こえてきて、私の心臓は凍った。

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