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暴露

私はウリュウが呼び出した面子を見て顔を引き攣らせる。


「ミカゲ、これどうやって食べるんだ?ウリュウん家で出てくる食いもんって美味いけど食い方解んねえんだよ。」


「適当にウリュウの手元を真似ておけばいいんじゃないか?俺はいつもそうしてる。」


ミカゲとシノ……と言うことは?


「この2人に襲撃作戦の説明をする。」


「ああ……確かにこれは骨が折れるわ。完全に頭から抜けてた。」


私達は咳払いをすると、彼らの方をじっと見る。


「あのね……?双星襲撃も近くなったでしょ……?それに向けて予定変更があったと言うか……作戦変更があったのよ!」


私はそのまま、双星襲撃作戦を2人に説明する。


2人はそれを聞いて顔を見合わせると不思議そうに私達を見た。


(うう…!そんな顔で見られても困る…!)


「要するに……我々がネメシスより先に双星に行き、先に生徒達を避難させ教員に話を付けると言うことで合ってますか?」


ミカゲが言うとウリュウは甘えた声で

「流石ミカゲ君ー!その通りだよ!」

と言う。


「何の為にそんな面倒なことを。」


シノが私たちを睨みながら言う。

まあ、この男からしたら地球人が多少犠牲になったところでどうでもいいだろうし、こんな反応にもなるか。


「解ってるなら話が早え、正直地球人が多少怪我しようと俺様には関係ないからよ。

優しく避難させてやるなんてごめんだぜぇー」


シノはそう言って机に伏して寝始める。

食べてすぐ寝るなんて……!ガキくさい奴!


「俺はリリア様が決めたことに意見する気はありませんが……少々私達の負担が大き過ぎやしないでしょうか?」


ミカゲさんが困ったように尋ねる。

確かに……この方法で一番疲弊するのは他でもない我々、もっと言うと私以外の3人。

しかし、何とかやってもらわなくては困るのだ。


「お願い!負担があるのは重々承知で……!それでも協力して欲しいのよ!

貴方達は優秀だし、本気を出せばこんなのきっと朝飯前でしょ!?」


「ふむ……」


ミカゲさんは黙り込んでしまう。

よくよく考えたら、無条件にやってくれる程甘くは無いだろう。考えが足りなかった。


「勿論タダで頑張れとは言わない。ミカゲ君にもシノにもそれ相応の報酬を出す予定だよ。もし望むなら、リリアと二人で幹部への推薦状を書いてもいい……どうかな?」


ウリュウが作ったような笑顔で言うと、シノがゆっくり頭を上げミカゲさんに何か耳打ちする。


シノからしたら、私たちからわざわざ説明されなくとも意図を理解している筈。

何を企んでいるのだろう……?


「それより……何でその作戦になったのかを教えろよ。結構興味あるぜ。」


シノがいやらしい笑みを浮かべながら言う。


「確かに……経緯は気になります。

何故そこまでして地球人の無事を確保しようとするのです?以前言っていた組織の破滅と何か関係が……?」


私とウリュウは顔を見合わせると小さく頷く。


「えっと……ミカゲさんの言う通りよ。私が前に見たヒーローと敵対したらこの組織は破滅するって未来、それを避けるためにこの作戦を考えたの!

ヒーロー側の印象を少しでも良くするためには犠牲が少ない方が良いでしょ?」


「なら初めからネメシス襲撃を教えてやりゃあいいじゃねえか?何でわざわざ先にこっちが襲撃すんだよ。」


「ヒーロー本部から派遣されたヒーローがどんな人か予測できないから……異星人は全て殺すって過激思想の持ち主だったら、私達も危険だしネメシスの人が虐殺される可能性もあるの。」


「……何故ネメシスの人間を庇おうとなさってるんです……?」


ミカゲさんが眉間にしわを作りながら言う。


「その……異星人からもできるだけ、不要な恨みを買いたくないから……」


「ウリュウよお、黙ってるけどお前さんはどうなの?

何でこの作戦を支持してんだ。まさか妙な気が起きて自分もエリヤと一緒にここを裏切ろうとか考えてねえよな?」


シノの言葉に、言い知れない緊張感が漂う。


全員がウリュウに注目していると、彼は静かに口を開き

「この案なら……地球人と異星人どちらの犠牲も少なく済みそうだと思った。

……僕の理想は地球人と異星人が共存できる社会を作ること。

その理想に叶う案をリリアが考えてくれたから採用した。」

と静かに言い放った。


「ちょっとウリュウ……!?」


そんなことを彼等に言っていいのだろうか。

事情を知ってる私に言われるのすら嫌がっていたことなのに……


「君がそんなことを…?もしかしてユウヤに憑依されて……」


「ないってば!どいつもこいつも……!いいか、僕はな!地球人と龍族のハーフなんだよ!」


ウリュウは机を叩きながら声を上げる。


「地球人の血が入ってるってだけで煙たがられてきて……!地球人のコミュニティに逃げようと思ったこともあったけど、それだと今度はきっと異星人の血が入ってることで嫌煙される!

今まで僕には居場所がなかったんだ……!

……君らも気持ち悪いと思うだろ?別に笑ってくれて構わない。」


ミカゲさんはシノの顔を見る。

シノは肩をすくめると

「俺は知ってたから別にどうでもいいけどな」

と軽く言い放った。


「………え?」


「俺の能力忘れてねえか?お前いつも結構そのこと考えてるからとっくに俺にはバレてたぜ。」


「申し訳ないが、俺もエリヤから聞いていたから知っていたよ。

大前提君は出自なんかより性格に難があるから大して気に留めていなかったが……」


2人がそう言った事でウリュウは下を向いて顔を背ける。


(あ……にやけてる……?嬉しいんだ……)


「そんで?僕ちゃんが生きやすい世界を作る為になるべく敵を作らない方向に舵取りしたいから、協力してくれって言いたいわけか?」


「……悪いかよ……」


「いや?君にしちゃ素直に要望を言えたじゃないか。良く解らないまま付き合わされるより好感が持てる」


シノとミカゲさんが茶化すように言うと、ウリュウの耳が赤くなっていることに気付く。

きっと今ウリュウは内心ボロボロだろうな……


「やってくれないか……?金なら出すよ……」


ウリュウは下を向いたまま震えた声で言う。


「……いいぜ、解った。どうせ面倒なことに変わりはねえんだ。ゲームついでにガキの避難もやってやるよ。」


「リリア様の策であれば誠意をもって取り組みますとも、解っているとは思うけど君の為じゃないからな、ウリュウ。」


二人は何かを期待したように意地悪な笑みでウリュウを見る。

ウリュウは上目遣いでその様子を確認すると、

「あ……りがとう……」

と小さな声で呟いた。


「でもそうするとゲームのルールってどうなんだ?」


「まあ……幹部を倒した数とかでいいんじゃないか?」


呑気に2人がゲームの話をする中、ウリュウだけがずっと息絶えそうに震えていた。


……


話し合いが終わり、ウリュウがあれから一切顔を上げなかった為、私が二人の応対をして一旦帰ってもらうことにした。


「二人とも帰ったわよ、そろそろ顔上げたら?」


「……うるさい、こっちはいろんなもの失ってるんだよ……話しかけるな。」


「で、でもほら良かったじゃない!あの二人はあんたのこと気持ち悪いって思ってないのが解って!」


「あー!もう黙れ黙れ!今それ聞きたくないんだってば!」


ウリュウは子供のように声を上げると耳を塞いで机に伏す。

私はその様子を見てため息を吐いた。


今は何を言ってもウリュウのプライドを傷つけそうだ。

しかしこれも日頃の仕返しと思えばいい気味かもしれない。


「……ねえ、ウリュウ?」


「……何。」


「ありがと、作戦の為に言いにくいことまで話してくれて。」


言うと、ウリュウはやっと顔を上げる。


「……僕の為にやったことだ、勘違いするな」


ウリュウはそう言って立ち上がると、私の手を引き玄関まで押し出す。


「子供はさっさと寝るんだな!」


そう言ってウリュウはぶっきらぼうに玄関のドアを閉めた。


(何よ、素直じゃない奴!)


だが……ウリュウがここまで頑張ってくれたのだ、私も頑張らなくては。

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