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襲われる前に襲え

「あーあー、また結構なやらかししたな君

 戦う前から敵アジトのちっちゃい支部潰してどうすんのさ」


ウリュウ宅で、彼は報告を聞いた後に呆れながら言う。


「ごめんなさい…」


こればっかりは言い訳する隙も無い…


「何で冬樹君がいるのかと思ったら…助けて貰ったからとはね

 忘れてない?彼って一応敵サイドなんですけど」


「はい…仰る通り…」


「ウリュウさん、そんな厳しい事言わないであげて下さい!

 リリア様も頑張って有用な情報手に入れたんですから!

 後俺は敵じゃないです!リリア様の味方!」


フユキは無邪気に笑って言う。

それを見てウリュウは深いため息を吐いていた。


「そ、そうなの!有用な情報も手に入れたのよ!」


「…聞こうか?」


「まず…ネメシスにはお金がないみたい…

 多分今日フユキが使った手榴弾もかなり痛い消費だったはずよ

 銃を持てるのも一部の精鋭だけで、他は殆ど生身みたい」


「あ、銃も手榴弾も何個か盗んできましたよ」


フユキはそう言って拳銃と手榴弾をウリュウの机に並べる。


「あーあ…冬樹君が僕の部下だったら良かったのに」


ウリュウは唇を尖らせながら言う。

うう…悔しいけど仕事って点では完敗よ…

私に気付かれずこんな成果を出すなんて…!


「彼らは元々自分たちに資金も物資も無いって解っていたから

 あえてヒーロー本部ではなく双星を狙った…!

 しかも、奇襲である事しか彼らの強みは無いように思えたわ

 相手は殆ど子供だと思ってなめてるんだと思う、

 双星にカウンターの準備をされちゃったら

 あっちが勝てる見込みは0に近い」


「…つまり?」


「双星にネメシス襲撃を予告するべき、

 きっと本当だと解れば信用も勝ち取れるし

 デメリットが少ないわ!」


私が言うと、ウリュウは少し首をひねる。


「うー…ん…どうかな?ヒーロー本部にこの事を伝えれば

 十中八九現役ヒーローが護衛に派遣されるよね」


「まあ…そうでしょうね」


「そのヒーローって…本当に大丈夫なタイプの人達?

 まず、過激な思想を持っている可能性があるし

 僕たちの事を見て敵対して来るかも」


ウリュウは試すように私を見つめる。

あ…そうか、ヒーローも一枚岩じゃない

青柳さんやブルーの様にいいヒーローもいれば…

異星人に容赦のないヒーローもいる。


双星の生徒を助ける私達でさえ敵対して襲ってくるかもしれないし…


『あそこの彼がいた組織、

 酷いヒーローに当たったらしくて

 家族が無抵抗のまま暴行されて重症を負ったらしい』


私はカグラの話を思い出す。

過激なヒーローはネメシスの事を徹底的に排除しようとするだろう、

そんな事になったら大虐殺が起こるかもしれない…!


「こちらとしても、無駄な恨みは買いたくないんだよね…

 しかも同じ異星人との軋轢を生むなんてリスクでしかない

 できるだけ無血で終わるのが理想なんだけど

 君としてはどう?

 このままヒーロー本部に双星襲撃を教えて良いと思う?」


…確かに、必要以上に犠牲を増やすのは良くない…


「なら、リリア様と連携できている

 ヒーローにだけ協力をお願いするのはどうですか?

 ブルーさんとレッド先生だけでもかなり戦力になりますよ」


「あれ?ピンクはどうしたの?

 一番最初に仲間になった筈だよね?」


ウリュウが言うと、私とフユキは顔を見合わせる。


「実は…」


私はウリュウに、あかりの記憶が改竄された可能性がある事を話した。


「改竄だ!?またやられたの!?」


「そう…みたい…あかりはイエローの事信用してたから…」


「…まあどちらにしても…

 ブルーもレッドも今すぐ本部を抜けられる訳じゃない

 ヒーローである以上報告せざるを得ないと思うよ

 つまり、何にしてもリスクは避けられない

 ヒーロー本部に予告をすれば異星人と

 予告しなければ地球人と軋轢を生むかもしれない

 …君の知る未来としては、どちらに着地する方が望ましいの?」


ウリュウは真剣な顔で私に尋ねる。


「…どっちにしたって…あなたの理想とはかけ離れるわね」


私がそう呟くと、彼は顔を真っ赤にしながら目を見開く。


「なっ…なんで今僕の話が出てくるんだよ!」


「えっ…だ、だって…地球人と異星人が仲良くできたらいいって思ってるんでしょ?」


「わー!素敵な理想ですねそれ!」


フユキが言うと、ウリュウは顔を机に伏せてわかりやすく取り乱す。 え…私、何か変な事言ったかしら?


「ウリュウ様…?」


「僕の理想とやらは一旦抜きにして考えてくれ! 君はどうしたいんだ!?」


どうしたいって…そりゃ… 正直ネメシスの方を味方したくないからヒーロー本部にこの事を伝えたいけど

虐殺が行われるのも見たくはない…

なら、予告はせずに迎え撃つのが正解だろうけど、

そうすると今度は生徒達の被害が大きくなるかもしれない。


こちらの助けだって磐石じゃないのだ、

重症者が出る可能性だって充分にある。


なるべく被害を減らすには… どうしたらいい?


「俺たちが今日みたいに先に敵のアジトを襲撃できたらいいんですけどね」


「特定が難航していてね…難しそうなんだ」


先に…襲う…


「あ!」


「どうしたんですか?」


「そうよ!先に襲っちゃえばいいんじゃない!?」


私は意気揚々と言い放つ。


「だから、敵の本丸は特定出来てなくて…」


「襲うのは敵の本丸じゃないわ!  双星学園の方よ!」


「「…は?」」

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