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レッド

ギリギリ教室に着くと、先程見た顔ぶれもちらほら確認出来た。


あ!ホワイトいるじゃない!可愛い!

あの金髪坊主もいる…まああっちはどうでもいいか。


「ねえ、レッドってどんな感じなんだと思う?

 テレビで見た時は小柄だったし…女の子かな!?」


「まっさかー」


前の席の子が楽しそうに話している。

小柄?おかしいな、コズミックレッドは

アニメと同じ「赤城焔(あかぎほむら)」が担当してるのよね?

だったら多分仮面姿の大男として認知されてる筈なのに…


「皆、遅くなってごめんね」


そう言って扉から出てきたのは先程私達にゼリーをくれたあの小柄な少年だった。


あれが…コズミックレッド…!?


教室がざわつく。

「ヒーロー史上最強の男」と言われたその男…「赤城焔」は

年齢も謎、顔も謎、生い立ちも謎だけど…

内に燃える正義を最後まで貫いた偉大なヒーロー…

その死を以てホワイトに正義のあり方を示したキーマンでもある。

その彼が…こんな若い訳…!


彼は私に気付くと、こちらを見てにこっと笑う。


「見た!?今こっち見て笑ったよ…!」


「可愛いー!」


「この度は俺の授業を受けに来てくれてありがとう

 俺はダガーが得意だから…

この一ヶ月皆にダガーの講師をします!

 よろしくね」


「はい、いっすか」


先程のイキり金髪坊主が自信満々に手を挙げる。


「なんでしょう」


「俺、多分あんたより強いですよ」


彼がそうレッドに言い放った途端、教室はザワつき出す。

何よあいつ!レッドに向かって…!


「ねえ、あの金髪坊主…態度でかいけど何者?」


私は前の席に座っていた女子に小声で尋ねる。


「ひゃっ…変な呼び方しちゃだめだよ!

 あの子は『黄瀬ゆかり』君、双星でも稀に見る天才らしくて

 今一番ヒーローに近い存在って言われてるの

 だからあんまり…」


はーん、それで調子乗ってんのねあいつ!

ちょっと才能があるからって講師に喧嘩売るなんて何様なのかしら!


「って能力があるし…あれ、聞いてる!?」


「ありがとう!参考になったわ!」


「ほんとかな…」


「赤城焔…あんた双星きっての天才らしいね

 でも俺、この前あんたの体力テストの記録を抜いたんだ

 先生に言われていやいや参加させらたから来たけど

 自分より弱い奴に教えて貰うとか、俺無理だわ…帰っていい?」


かーっ、生意気

授業くらい自分で選択して受けなさいよね。


「戦ってみないと君が俺より強いか解らないですよ」


「じゃあ戦わない?模擬戦闘スペースでさ!」


「うん勿論、授業が終わった後でね」


レッドは満面の笑みで金髪坊主に返す。


「え…」


「ほら、君だけの為に時間使ってたら授業出来ないでしょ?

 終わったら相手しますので、君は何処かで時間潰しててね」


クスクス…と我慢しきれ無かったであろう誰かの笑い声が響く。

あんなに啖呵切っといて軽くあしらわれちゃあ笑われもするわね…。


「何で俺があんたの都合に合わせなきゃ…!」


「それはこっちのセリフなんだよなぁ」


ビクッと体を震わせ萎縮する金髪坊主。

近くに居るわけでも無いのに私の心臓も縮み上がる程の覇気だ。


「君一人の我儘のせいで

 どれだけの人間が時間を無駄にすると思ってるの?

 ヒーローっていうのは団体行動が主、

 君みたいな奴は才能があっても人間性が原因で社会から弾かれる

 勿論俺の教室からも…授業を受ける気がないなら出て行きなさい」


「チッ…ぜってー負かす!」


情け無くも臆したのか、金髪坊主はそう吐き捨てて教室から出ていった。


すっごい圧…アニメで見た通りの厳しさ…!

間違いない、本当にこの人「赤城焔」なんだ!

4年であんな大きくなるもの!?子供になる薬飲んでるとか、ヒーロースーツが実は着ぐるみだったとかそのレベルを疑いたくなる成長ね…!


ーーー


レッドに案内されるまま、生徒達は

何事も無かったかのように道場に着く。


「皆も知ってると思うんだけど…

 ヒーローは自分の能力を引き出せる武器を個人的に発注して

 それを用いて戦います、例えば俺の場合はこれ」


彼はそう言って腰から刀を抜く。

刀は炎に包まれていて、その火は美しく揺らめいていた。


「燃える刀…『紅丸(べにまる)』だよ!かっこいいでしょ!

 こういう接近武器が使えるようになると、後々役に立つと思うんだ

 だからその為に今日は基本的な動きを覚えようね!

 まずは素振り2000本!1000本ごとに休憩挟むから頑張って!」


彼はそう言って満面の笑みを浮かべた。


「ねえナギ…素振り2000本って言った?あの人」


「言ったね!流石ヒーロー!肩慣らしでそんなハードなメニューを…!」


ナギは嬉しそうに目を輝かせる。

言ってる場合!?レッドはアニメでも超ハードメニューをこなしてた印象だし

もしかしてこの授業…地獄の始まりなんじゃ…!



「はーい、いったん休憩!

 皆頑張ったね!」


素振り2000回を終え、私は床に倒れ込む。

コズミックレッド…!

あの人一緒に竹刀振ってたくせに全然疲れてない…!

こっちは手も痛いし腕もガクガクなのに!


今の「ヒーロー達の良き敵になる」って方向性に舵を切れば、

その内あの人は私の「宿敵」になる。


アニメのリリアも能力的に相性の悪い彼とは何度も衝突していたもの…

 でもこの体力の差じゃ全然勝てる気しない…ちょっと怖くなってきたかも。


「はあ…はあ…!死ぬ…!」


「リリア大丈夫?水飲もう水…!」


「あり…がと」


ナギが私に水を渡してくれる。

あー…!水美味しい…!


それにしてもナギはそんなに疲れてないのね…流石ブラック♡

 でも…つい最近までドヤ顔でこの人に戦闘指導してたって思うと何か恥ずかしいわ。


「…あの」


「あら…さっきの…」


床で項垂れている私に心配そうに話しかけて来たのは、ホワイト…にいずれなる少年だった。

あれ?素振り2000本この子もしたのよね?

全く息が切れてない?


「さっき助けてくれたの、ありがとうございました」


「それ…さっきも…聞いたわ…別に…当然のことしただけ…」


私は今できる限りの凛々しい顔でグッドサインをする。


「俺、さっきからあなたの練習してる所見てました!

 あんまり体力無いんですね!」


彼は私の前でしゃがみ込むと、満面の笑みで言い放つ。

そうだ忘れてた…!コズミックホワイトは通称「ノンデリサイコ君!」

正直すぎるあまりに言葉が鋭利な子なんだった…!


でもきっと、言葉はきついけど悪意は全く無いんだろうなあ…


「わざわざそんな事言いに来たの?

 お前勘違いしてるかもしんないけど

 リリアはお前が困ってるから助けただけで

 友達になった覚えないから…馴れ馴れしくすんなよ」


ああ!アニメだとあんなに仲良かった二人が険悪な感じに!


「お兄さんは体力すごいですね!

 なんかこう言うの慣れてるって感じしました!」


「え…ああ、まあな…」


アニメでもそうだったけどこの子、人の事しっかり観察してるのよね、

ナギの実力まで見抜いてるなんて流石だわ。


「一方君は全然持久力が無いし

 素振りのフォームもへにゃへにゃで見てられなかったくらいなのに…

 縁君に挑んじゃうなんてすごいです!

 俺だったら絶対にやりません!」


「褒められてんの…?」


「勿論!リリアは勇敢なんですね!」


「何で名前…」


「さっきお兄さんが呼んでました」


「様を付けろよ、無礼だぞ」


「解りました、リリア様!

 俺、一緒にいてもいいですか?

 もっとリリア様の事知りたいです」


「別にいいけど…知れる様な余裕ないと思うわよ…?」


ジャブでこれなんだから…!次はもっとヤバいのが来る!

あのレッド、優しそうなのは多分見た目だけ…!


「皆結構疲れちゃってるねー…困ったな、

 これじゃこれ以降のメニューもこなせないかも

 そうだ!体力付けるために今日は20キロ分走ろうか!」


その言葉を聞いて全員が青ざめる。

やっぱり鬼だ…!でもこれが出来なきゃレッドには勝てない…!

最後までやり切ってやる!

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