ネメシスへ潜入
「ん…」
ウリュウが唸りながら目を覚ます。
「起きた?すっごくぐっすり寝てたわよ」
「ああ…真理愛か」
「リリア!報告したい事があったのに目覚まさないから
こんな時間になっちゃったじゃない」
「僕が起きるの待ってたの?」
「…そう…疲れてるかもしれなかったし…」
私が言うと、彼は少し可笑しそうに笑う。
何がおかしいのよ失礼ね…!
…それに…さっきの
「エリヤ」って…しかも「愛してる」…とか
どういう関係なんだろう…?
ウリュウってエリヤの事…焔をあんな風にした人の事
好き…なのかな?
「それで?報告したい事って何」
「あっ!?ええっと…!
喜びなさい!ブルーが味方になったわよ!」
私が満面の笑みで言うと、ウリュウは少し驚いた顔をした後「そう」と言って微笑む。
うふふ、やっぱり嬉しそう…!
「おい、なんだよそのやっぱり嬉しいんだーみたいな顔」
「えっ」
何故バレた!
「私解ってますって態度取るなよ、ムカつくな」
そりゃ…結構一緒にいるし、この前本音も聞いちゃったし?
ウリュウがどういう奴とかはある程度解って来たつもり
それだけ仲良くなったって事じゃない、
嫌がらなくたっていいのに。
「じゃ、嬉しくないの?」
「…」
彼は私を見下ろし少し黙ると、
「…いや、嬉しいよ
よくやった」
と言いながら私の頭を撫でる。
「えっ…」
ウリュウが私を褒めた!?頭を撫でた…!?
「転生者に乗っ取られ」
「違うって言ってるだろ!」
彼は大声で言い切ると、悲しそうに俯く。
「…ナギがこうなった時に…
もう少しちゃんと褒めたり
労ってやれば良かったと思ってさ」
後悔してるのね…私も同じ。
彼がこうなる前に、もっと感謝したり労ったりできたら良かったって思ってる…
でも、それはきっと目が覚めた時でもできるから…!
「へえ…じゃあ起きた時いっぱい褒めてあげなさいよ!」
「君に言われなくてもそうする…
真理愛は?疲れてないか?」
「疲れてないわ!ナギの為にももっと頑張るつもり!
…ナギ、どう?回復してる…?」
「…経過は悪くないと思うよ
彼が目を覚まして能力さえ使えるようになれば…
生命力を吸う事で回復出来ると思うんだけど」
「その時沢山吸ってもらう為にも
元気溜めておかなきゃね!
私のメイド、珍味を見つけるのが得意なの!
宇宙食虫植物の種とかー、ジェルトカゲの尻尾とか!
それ食べて精をつけるわ!」
「うわ…とんでもないもん食べてんだな君
大概にしておかないとその内腹壊すぞ」
彼は呆れたように言う。
「大丈夫よ!私って強いんだから!
ね、次は何をしたらいい!?」
私が言うと、彼はおもむろに何かを取り出す。
…地図…?
「君…ちょっと忘れてそうだけど
そろそろ双星襲撃が近いだろ
それユウヤ君が今日入手して来た
ネメシスのアジト情報…
と言っても本丸じゃないんだけど」
「ええ!?」
緑川、今日普通にしてたのにそんな大仕事した後だったの!?
い、一応優秀なんだあの人…!
「この付近を偵察して…
余裕があれば内部の人間を装い情報を収集して欲しい
…先に言っとくけど顔が割れてそうだから
レッドとブルーは巻き込むなよ
理想は君の単独…出来そう?」
単独任務…!しかも結構危険な仕事ね
本来ならナギとかに任せる仕事だったんだろうな…
私はナギの顔をじっと見る。
…そうよ、彼が目覚めた時に無理をさせない為にも…!
私が頑張らなくちゃ!
「勿論やるわ!いい報告を期待してなさい!」
「…気をつけろよ」
ウリュウは俯きながら言う。
「もち…ろん」
何か…調子狂うわね、こいつが素直なのも。
ーーーー
…後日、私は以前ナギに貰ったメガネを装着すると
放課後フユキに気付かれないようそっと校門を抜ける。
彼、私がいると着いてきちゃうからね…。
よし、見つかってないみたい!よかっ…
「リリア様、こそこそしてどうしたんですか?」
「どぅわ!?」
フユキ!?どうやって私を見つけたのよ!
「あはは、リリア様の反応おもしろーい!
もしかして俺の事避けてました?」
私はギクリと肩を震わせる。
流石鋭い…!
「私これから大事な任務なの…!
遊びじゃないから着いて来ちゃだめよ、解った!?」
「危険なお仕事ですか?」
「そう!」
「なら、尚更1人はダメです
ナギ君がいない間リリア様に何かあったら彼悲しみますよ」
な、何よ…私1人じゃ出来ないって言いたいわけ…?
「心配しなくても平気!私はプロなんだから…!
とにかく絶対着いてこないで!解った!?」
私は彼に言い放つと、足早に駅へ向かった。
…ウリュウに任された大事な仕事なんだもの、失敗出来ない…!
私は双星の生徒だとバレない為にぐるぐると駅を跨いだ後地図の場所へ向かう。
ふふ、何だか本当にスパイみたいね!
なんだ、私も結構いけるじゃない!
地図の場所は玉馬川の河川敷で、
橋の下には堂々とテントが貼られていた。
玉馬のエリアって今何処が管理してるんだっけ…ああ、知らない名前の異星人組織だ。
恐らくネメシスの傘下だから場所を貸してるのね。
見た目は皆バラバラ…制服とか着てるわけじゃないから潜入しても誤魔化せそう…あ、子供もいる?
武器の整備してるのかしら?
どのくらい内部の連携が取れてるか解らない以上あまり勘付かれずに動いた方が良さそうね…
私が茂みに隠れて様子を見ていると、
「そんな所で何してるの?」
と声をかけられる。
ま、まずい!見つかったー!