新たな協力者
私は意を決して拳を握ると、ブルーに
「あのね…前のあかりは…普通の女の子じゃなかったの」
とまっすぐ見つめながら言う。
「それは…何となく感じてたよ、妙に大人びてたって言うか…」
「ピンクはね…33歳男性の医者が転生した存在…
所謂『転生者』なの」
私が言うと、その場にいる全員が何を言っているか解らないと言わんばかりに首をひねる。
「あー…人ってほら、死ぬと転生して別の人間になるとかって…
聞いた事ない?彼女もそうなのよ
それにくわえて転生前…つまり前世の記憶があるのがあかり」
私がそこまで言うと、
「つまり、ピンクさんは14歳の女の子だけど
精神は33歳男性って事ですか?」
とフユキが尋ねる。
流石理解が早いわね…
「…そういう事」
「…前、ピンクとリリアが話してた転生者がどうとかって話も
それと関係があるのかな」
そっか…焔は一応あの話全部聞いているんだっけ。
「ええ、関係あるわ
私も転生者なの、15歳の受験生が死んで今の私に転生してる」
ブルーは理解を拒むように目をぎゅっと瞑りながら何かを考え込んでいる。
…まあ、こんな話理解しろって方が難しいわよね。
「あかりちゃんが33歳男…いや…確かにそれっぽい…
普通の女の子ですよって言われた方が無理があったって言うか…
俺とも若干キャラ被ってたし?
でもなあ…そんなファンタジーな事急に言われても…」
ブルーはぶつぶつと呟いている。
…正直、私達が「転生者」だと証明する事は難しい。
勿論未来の事を予言すれば「転生者」の概念を理解している
ウリュウ等の信用は得られるけど…
そうじゃない人間の場合予言能力の証明にしかならない。
私に説明できるのはここまでで、
後はもうブルーがこれを「飲み込むか」「飲み込まないか」
それに委ねるしかない。
後押ししようにも、私にはどうすることも…
「…信じてくれなくてもいいわ、
でもあなたも確かに違和感を感じている筈
あかりから『おじさん』らしさが無くなって
普通の子になちゃったって気付いているんでしょ?」
私が尋ねると、ブルーはゆっくりと頷く。
「…恐らくだけど…今の彼女はその『おじさんだった』記憶を消されてるの
今は何の変哲もない普通の女の子になってる
いつ誰が消したかは判断付かないけど…」
「待って、ああなった時期ならわかるかも!
裕也君達と喫茶店で話した帰りに彼女と事務所に寄ったんだ
で、俺が書類提出した帰り…
変なとこでボーっとしてるあかりちゃんがいて…
肩に手置いて話しかけたら」
『きゃっ!大吾さんったら…
女の子に急に触らないで!
自分がかっこいいって自覚少しは持ってよね?』
「って赤い顔しながら言われたから
普段とのギャップでおじさん怖くなっちゃった」
「俺もピンクにそれ言われたら怖いかも…」
「ならその時33歳のあかりは『消された』んだ!
事務所にいたならヒーローサイドの人間が犯人である可能性が高い…!
確信でないにしろ、疑うには十分だわ」
私が言うと、ブルーは宙を見ながら「確かに?」と呟く。
後もうちょっとで説得できるかも…!
私は焔を見ると、
「焔、ブルーに合同訓練の件話して欲しい」
と声を掛ける。
「おお、それは俺も聞きたかったんだ!
あの日…一体何があったの?」
焔は、ブルーにエリヤとのやりとりを説明する。
ブルーはそれを聞いて顔面蒼白になっていた。
「あかりちゃんから少し聞いてはいたけど…
まさか本当に役員の仕業とはな」
「そこにいるリリアが潜入してたのがバレて…
ただ俺、彼女の質問には答えてないんだ
戸惑っていたら急に攻撃されて…」
「しかもエリヤって人、
リリア様のお姉さんらしくて
だから彼女が異星人って解ったみたいです」
フユキがそう補足するとブルーはじっと私を見て
「言われてみれば…確かに似てるな、
異星人が役員に…?」
と呟いた。
「…焔の件は私が悪いのもあるけど…
でも、明らかに行き過ぎた行動だと思う
ヒーロー本部は完全な正義じゃない、
少なくとも焔があの場所に身を置くのは危険だわ!
…ねえブルー、私からも提案させて…!
ヒーロー本部を抜けて新たな場所を作らない?」
私は、期待の眼差しで彼をじっと見る。
彼は少し目を伏せてため息を吐いた後、私をしっかり見ると
「君が信用に足る人物だって証明できる?」
と言う。
「今は出来ないけど…行動で示すわ…!
もう焔を危険に晒すような事はしない
絶対に私が彼を守ってみせる」
「え!?いやそれ俺が言うセリフじゃ…」
「レッド先生は守られる側かー、俺と逆ですね」
「冬樹うるさい!」
「…うーん、おじさんに嘘を見抜ける能力とかあったらよかったな
でも…解るよ、なんとなく…君から悪意を感じた事は一度も無い」
ブルーは真剣な顔から一転、笑顔を見せると
「一旦直感で信じてみようかな!俺は…焔君とヒーロー本部を出るよ」
と言い放った。
彼の返事に、思わず顔がにやける。
やった…!説得に成功したんだ、私…!
「ブルー!ありがとうー!」
私が抱き付くと、彼は小さく悲鳴を上げてから困ったように微笑む。
「はは…やっぱり子供だなー君も…
あんまり俺とくっつくと反感買うよ?」
「え?」
私が後ろを振り向くと、焔は物凄い剣幕で睨みながら燃えている。
「そうやって…すぐライバルを増やそうとする…!」
「あ…いや焔!これは…!」
「余裕がないですねえ先生は!俺だったら抱き付くくらい気にしませんよ?
俺もやるから!」
フユキはそう言うとブルーに抱き付いている私に抱き着いた。
「ちょっと重いよ君達!」
ウリュウ、説得に成功したって言ったらきっと喜ぶだろうな…!
報告するのが楽しみ!