表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/134

誰かの記憶

とはいえ…困ったわね、

私は「ピンク」の事には詳しくても

あかりの中にいるあの人の事は名前すら解らないのよ…


33歳医者で男、最推しは若葉ちゃんって情報しかない!

そ、そうだ!コズミック5メンバーなら詳しいかも!


「ねえ、焔、ブルー

 あかりの好きだった物とか嫌いだったものとか解る?」


2人は顔を見合わせると


「好きな食べ物はチョコレートパフェ…って言ってたけど

 打ち上げとかでは好んでチャンジャとか食べてた」

と焔が言い、

「ダイエットしてるって言いながら

 奢ってやると炒飯大盛りにラーメン一杯

 餃子2人前はサラッと行ってたね」

とブルーが続ける。


「え…ええ!?私そんな食べないよ!」

あかりが顔を赤くしながら言う。

…元々アニメでのピンクも食べるのは好きなんだけど…

男の人の前でガツガツ食べるのは恥ずかしがりそうね。


「なら俺、隣のスーパーでチャンジャ買ってきます!

 ちょっと待ってて下さい!」


「僕も付いてく!ピンクちゃんの事あんまり詳しくないから役に立てないだろうし」


「あ…ありがとう」


フユキと緑川は会議室を出る。

フユキは流石の行動力ね…初めは着いてきて戸惑ったけどいてくれて助かったかも。


私もできる事をしなくちゃ!

あかりの好きそうだった物…あ!


「わっ…リリア、どうしたの急に!」


私はおもむろに焔に抱きつくと、あかりの方を見る。


…別に見せつけている訳じゃない。

あかりは私と焔が仲良さそうにしているのを見てよく興奮していた。

もしかして…あかり(33)は所謂カプ厨ってやつなんじゃ…!


「あかり…この様子を見てどう思う?」


私が問うと、彼女は一瞬顔を赤らめて口を覆った後に私達を見つめ、


「くっついてるだけって感じであんまり萌えないかも…」

と呟く。


「「…え?」」


焔と私は、斜め上の回答に思わず声を上げる。


「私がときめくのは抱きついてる光景じゃなくて抱きつくまでの経緯なんだよね…

 どうしてお姉さんが焔君に抱きついているのか、

 そこを見た上で接触という結果を

 堪能したいのであって

 今お姉さん特に照れた様子もなく

 焔君に抱きついたよね?」


「あ…まあ…」


「無言だから経緯も解らないし全然エモくない

 お姉さんは知らないドラマの

 キスシーン唐突に見せられて感動できる?

 出来ないよね?

 あれは2人がキスに至るまでの経緯を

 キスという結果で見せられるから

 感動するんだよ

 ただ抱きつかれただけで私が興奮すると思ったら大間違い!」


「あかりちゃん!?落ち着いて!」


あかりは物凄い剣幕で言い放つ。

やっぱりだ!長いし怖いし何言ってるかいまいち解らないけど反応してる!

あかり(33)はカプ厨なんだ…!


「あかり、私たち最近まで喧嘩してたの…!

 私が異星人って知って焔がショックを受けちゃって…

 でも最近仲直りできたからこのくらいくっつける様になったのよ!どうかしら…!」


「あの…リリア?さっきから何を…」


「…中々やるじゃない…

 そういうシチュは嫌いじゃないよ…!」


「ピンクも何言ってるのさ!?」


「…焔、元々のピンクはその…

 男女のイチャイチャを見るのが好きだったのよ」


「あ…確かにそんな感じはしたかも…

 …じゃあリリアと俺がイチャつけばいいって事?」


「へっ?」


焔は私の体に手を回すと、

頬にキスをする。


「ひゃっ!?なななな…何やってんの!」


「だって…こうすればピンクの記憶戻るんでしょー?

 俺だって仕方なーくやってるんだよ?」


彼は力を込めながら言う。

嘘つきなさいよ、絶対私情も挟んでるでしょ…!


「あーだめ!やめて見せないで!

 こんな刺激の強い物見たらおじさん

 焔君の結婚式まで死ねなくなる!」


目を塞ぎながらブルーが叫ぶ。

…そういえばこの人も大概だったわね…。


私はチラリとあかりの方を見ると、

彼女は震えながら手でグッドサインを出している。


「いい…喧嘩後のイチャイチャは

 いくらあったっていいと思います…!」


なんか満足げだ!あともうひと押しあれば思い出してくれそうな気がする…!


私が手応えを感じていると、ガチャりと会議室のドアが開く。


するとレジ袋を持ったフユキが私とレッドを見て固まった後

「あー!ずるいです先生!何してるんですか!?」

と声を上げる。


「何って…イチャついてた」


「俺もリリア様とイチャつきたいです!」


そう言うと彼は机に袋を置いた後後ろから私に抱き付く。


「うわっ…帰って来た途端リリアちゃんが挟まれてる!?何やってんの!」


後ろから現れた緑川が言い放つ。


「わ、私だってよく分からないわよ!」


「えへへ…リリア様の体って少しひんやりしてますよね…」


私はフユキと焔に挟まれる様な形で思考も回らずに固まってしまう。


「え、何々…そういう感じ!?

 フユキ君ってライバルなの!?そうなの!?」


目を塞いだ手にスキマを作りながら興奮気味にブルーが言う。


「何見せられてんの僕たち…」


対照的に緑川は呆れながら呟いた。


「フユキ君…?さっき焔君がそのお姉さんのほっぺにキスしてたよ」


あかりが意地悪な笑みでフユキに言うと、

フユキはむくれながら


「えー!そうなんですか?

 …真面目な話してたのに

 隙あらば抜け駆けしようとして…!

 じゃあ俺もチューしちゃお!」

と言い、

私の耳にキスをした。


「ひょえっ…」


私が変な声を上げると同時にはあかりは悲鳴を上げながらそのまま気絶してしまった。


「ご馳走様です…」


彼女の最後の言葉は、幸せそうな笑みから放たれたのだった。


「ピンクさん…死んじゃいましたよ」


フユキが無邪気に言う。


「死んだって言うか…ちょっと飛んでるだけよ、すぐ戻ってくるわ」


ーーーー


ー気絶したあかりは、夢を見ていた。


…る


光!


「うわ!」


「お前また居眠りかよ!そんなんじゃ医者になれないぜ」


少年が笑う。

…あ、思い出した…こいつは「佐藤寛也」。

俺は…「園部光」、だ。


なんだか、女の子になるみたいな変な夢を見た気がする。

変なの…俺は男なのにさ。


寛也は、俺の親友。

凄く明るくていい奴、運動神経もいいから女子にもモテるらしい。


「寛也君!光君!一緒に帰ろう!」


…彼女は「丸山悦子」、えっちゃんって呼んでる。

多分だけど、えっちゃんは寛也の事が好き。

俺はと言うと、えっちゃんの事が好きかどうかは解らない、けど


楽しく話す2人の背中を見て…

2人が幸せになればいいなとは、思っていた。


(…何…これ…誰の記憶…?)


『光君、思い出して』


(…誰の…声?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ