何か違う
ブルーの電話を受け、私達が事務所に向かうと
そこには動揺した様子のブルーとさらに動揺した様子のあかりがいた。
「ブルーさん!……どうしたの?」
2人の異様な距離感を見て、焔が尋ねる。
「あかりちゃんが変なんだよ焔君!」
「焔君聞いて!大吾さんが私のことおかしいって言うんだよ!」
2人がほぼ同時に訴えかけるので、焔は頭を抱えて俯いてしまった。
…
「で?何がどうおかしいの」
事務所内の会議室に腰掛け、焔が問う。
ブルーは少し申し訳無さそうにあかりを見ると
「なんか……普通の女の子になっちゃったって言うのかなぁ……?
今まで奢るって言ったら限界まで詰め込んで『ごちそーさんす!』って笑ってたのに、今日急に『ダイエット中だからコーヒーだけでいい』とか言い出して……」
と震えた声で言う。
「……それだけ?」
焔が呆れたように言う。
「ブルーさん、反抗期迎えた娘さんに動揺するお父さんみたいです!」
フユキが満面の笑みで言い放つと、ブルーは彼のノンデリが効いたのかガクッと項垂れてしまった。
「……他に無いの?あかりの変わったとこ。」
尋ねると、
「うーん…何かいつもより落ち着きもないし
知性もあまり感じないというか…」
とブルーが首をひねる。
「悪口ですよそれ!」
ブルーはあかりの変化に気付いてるのに言語化が出来ないみたいだ。
恐らくあかりは記憶を消されているが……緑川の時みたいに全ての記憶を消されてる訳ではないように思える。
まるで原作のピンクみたいになるように改竄されているんだ。
「ねえあかり、私のことってわかる?」
「ごめんなさい……わからない」
あかりの応答で、ようやく場の人間が違和感を抱き出す。
「え……そんなわけないよね?2人は合同訓練の時も一緒だったし……」
焔が目を丸くしながら言う。
「あかり、ここに包帯があるから焔に巻いてみて」
私は鞄から包帯を取り出すと、あかりに渡す。
彼女は少し動揺しながらも焔の向かいに座ると、ぽっと顔を赤らめた。
「男の子に触るの……初めてで」
……焔のことを、意識している……?
「い、いいから早く巻いて!」
私が急かすと、あかりは焦りながら焔の腕に包帯を巻く。
しかしその出来はあまりにも散々で、ブルーと焔はその変わりように絶句していた。
「お姉さん、包帯巻くのあり得ないくらい下手ですね!」
フユキが言うと、あかりにもノンデリが効いたのか彼女まで項垂れてしまう。
「ちょっとフユキ!
……一生懸命やったのにあんなこと言わなくて良いわよね」
私は笑顔であかりに寄り添う。
彼女だって被害者なのだから、何もわからない中追求ばかりしては駄目だ。
彼女は今アニメに出て来たピンクそのものと言っていい、ちゃんと労わなくてはいけない。
「うっ……どなたか存じ上げませんがありがとう……」
「でも焔からは離れて。検証は終わったんだから元の席に戻りなさい。」
そう、それとこれとは話が別である。
「ヒェッ……」
あかりは私に怯えると元の席に戻っていった。
「……皆解ったと思うけど、あかりの様子は確かに変わってるわ。
医療知識や技術が無くなってるし、私のことも覚えていない。」
「これって……裕也君のこととは関係あるの?」
ブルーが尋ねる。
「断言はできないけど……あると思う。緑川の時と同様、あかりは記憶を改竄されたんだと思うの。」
「記憶改竄……?」
ああ、焔とフユキは知らないのか。
大まかに緑川の記憶喪失事件について話すと、2人は驚いたように顔を見合わせる。
「緑川が狙われた理由は定かじゃないけど、ヒーロー本部での訓練中に襲われてる。
私達みたいな外部の人間が他にいた可能性も無くはない。でも、緑川が指導室から出て来た時様子が変だったって証言的に……ヒーロー本部に在籍してる人間の犯行である可能性が高いわ。
だってあの場所、本来は役員しか入れないらしいから。」
会議室にいる皆は、困惑したようにお互いの顔を見ている。
……まあ、こんな突飛な話中々受け入れられないか。
予定は早まってしまったが、緑川をこの場に呼ぶのが一番手っ取り早い…!
「緑川裕也をここに呼ぶ!……そこで彼に……誰が自分の記憶を消したのか証言してもらうわ!」
ーーーー
緑川を事務所に呼ぶと、彼は5分と待たずにここへ到着した。
……大方、例の喫茶店で若葉ちゃんといちゃついていたのだろう。
緑川はなぜ呼び出されたか理解できていないという様子で会議室に腰掛ける面々を眺めていた。
「初対面の子もいるけど……これって何?」
「初めまして!俺真白冬樹です!」
「あ……あーはは……どうも?」
「緑川、ここにいる人達に記憶が消えた時の事話して欲しいの。」
言うと、緑川は何かを察したように咳ばらいをしてから口を開く。
「僕が合同訓練の休憩中に売店で買い物してたら、コズミックイエロー……田村喜助に声を掛けられたんだ。」
緑川の言葉にブルーと焔は顔を顰める。
それもそのはず、仲間の名前が唐突に出てきたのだ、訝しく思って当然だろう。
「その後、田村さんに指導室に連れて行かれて……急に、頭を掴まれたんだ。そしたら記憶が無くなってた。戻すの大変だったんだから。」
緑川は思い出しながら、険しい顔をする。
「ちょっと……信じられないな。イエローさんは仲間だし……」
焔が視線を落としながら言う。
緑川の証言だけでは不十分だっただろうか?
どうすれば田村が怪しいとわかってもらえるだろう。
「あ……田村さんなら……私もこの前話したよ?」
あかりがボーっとした表情でそう口にする。
「!」
「何か……えっと……ロールプレイがどうとか言って……頭撫でてたのかな、私の……あれ……思い出せない……」
「なんだそりゃ?……なんにしたって裕也君の記憶を消した裏付けにはなんねえだろ。
なんか勘違いしてるんじゃないの?」
ブルーが首を押さえながら言う。
その時に記憶をいじられたに違いない。
やはり思い出してもらわないことにはあと一歩足りないようだ。
「誰があかりの記憶をおかしくしたのか解らないなら!とりあえずあかりに元に戻ってもらう事から始めない!?
あかりが元の……おじさんっぽいあかりに戻れば!犯人だって簡単にわかるはずよ!」
できたら1部を夏が終わるまでに終わらせたく、
間に合うか解りませんが以前同様一日2回更新したいと思います。
たまに公開したい話があって気持ちがはやったら3話くらい更新するかもしれませんが
ゆっくりお手隙の際に読んで頂けたらと思います。




