ハッピーエンドの後に
私はあかりからのメッセージに少し動揺していた。
どなたですかって…
どういう事?何かの冗談よね…?あかりが私の事忘れるなんて…
まさか!田村と接触したんじゃ…!?
「リリア様、ウリュウ達が帰ってきましたよ」
「えっ…あ、ああ…!」
不安だけど…今は「何もなかった」事を信じるしかないわ!
次会ってみればはっきりする事だもの。
それより今は…
「おーい!みんなー!」
若葉ちゃんが嬉しそうに手を振る。
ウリュウ達の船が、浜に帰ってきたのだ。
私達が船に走り寄ると、緑川が気恥しそうに降りて来る。
「記憶…戻ったよ、皆どうも…ありがとう」
彼はそう言って軽くお辞儀する。
「あんまり心配してなかったけどよ、良かったんじゃねーの?」
シノの言葉に、私とミカゲさんは吹き出す。
「…なんで2人は笑ってんの?」
ウリュウが不思議そうに尋ねるとシノは舌打ちしながら
「しらねぇよ」と呟いた。
良かった…若葉ちゃんが幸せそうで。
…でも、良かったで済ませる訳にも行かないわね。
「ねえ、早速で悪いんだけど…聞きたいことがあるのよ」
私は真剣に切り出す。
「貴方の記憶を消した存在について教えてほしいの」
私が言うと緑川は重々しく口を開く。
「僕の記憶を消したのはコズミックイエロー…田村喜助だ」
「え!?コズミックイエローが…!?」
若葉ちゃんが口を覆う。
「密偵だと勘づかれたのか?」
ミカゲさんが問う。
「いや…そういう訳じゃ無さそうだった
なんかこう…個人的に気に入らない事があったみたいな…」
緑川は自信なさげに答える。
それもその筈、「原作厨」の存在なんて転生者でさえやっと理解が追いつく存在。
元々この世界の住人である彼に理解しろと言う方が酷だ。
彼はきっと、私やあかりも狙っている。
どうやって決着を付けるべきか…
「…どうして記憶を消したか、なんてどうでもいいよ」
突如、若葉ちゃんが呟く。
「え…」
「イエローは私と緑川君の絆を引き裂こうとしたんだよ?
じゃあ、やる事は一つ!
地獄に落とすだけ…」
黒黒しい瞳で若葉ちゃんが言う。
男性一同と私は、その様子を見て完全に引いていた。
「お前…凄いのに捕まったな
覚悟しとけ、あの手のタイプは一生離してくんねえぞ」
シノは真っ青な顔で言う。
心の声が聞こえる彼なら、私達よりもっと凄い言葉を耳にしててもおかしくない…
緑川は少し口角を引き攣らせると、
「忠告ありがとう…」と震えた声で言い放った。
シノが車で若葉ちゃんを送って行くと言うのでそのまま私たちは解散すると、
私はウリュウ車に乗り込み
「…ねえ、ナギの顔見てから帰ってもいい?」
と尋ねる。
彼は淡白に「いいよ」とだけ答えると、
車は医療班のアジトに向かって走り出した。
…
医療班のアジトに着くと、苦しそうに眠っているナギが目に入る。
「ナギ…ねえ、回復はしてるの?」
「多少生命力は戻って来てるみたいだけど…まだ活動できる程じゃないね」
「そう…」
「ユウヤ君の体調も戻ったんだし、
君も少し休めば?
ずっと働き詰めだったろ」
ウリュウは私を心配そうに見つめて言う。
「私は…大丈夫!ナギの分まで頑張りたいの
何か手伝える事はある?」
そうよ、休んでる暇なんて無い!
ナギが起きた時余計な仕事を増やさない様にしなくちゃ!
「…なら、まだ聞いて無かった潜入の結果報告を聞こうか
ヒーロー本部の分断は出来そう?」
私はその言葉を待ってたと言わんばかりににっかり笑う。
「な、何…その顔」
「単刀直入に言えば…『分断』は出来る可能性大よ!」
ウリュウに青柳さんの事や
今日のブルーとピンクのやり取りなどを彼に話した。
「ヒーロー本部に疑問を持ってる上層部がいるし、
ブルーは証拠さえあればヒーロー本部を抜けるって言った…
ヒーロー側にも味方になってくれそうな人がちゃんといるの!
だからね…きっと地球人と異星人の仲は緩和できるわ」
そう言って私が微笑むと、彼は少し不服そうに俯く。
「解ってるって態度取られるの…嫌いって言ったよな?」
「何よ嬉しい癖に!私にもっと期待してくれたっていいのよ!」
嬉々として言う私に対して、彼は呆れ気味にため息を吐く。
「まあ、僕の気持ちはともかく
ヒーロー本部の分断は進めておいて損はない…
そうだ、ユウヤ君をブルーに会わせてみたらどう?」
「ブルー…に?」
「彼はコズミックイエローに記憶改竄された事を証言出来る
更にコズミックレッドの力を暴走させたのが誰かまで分かれば上出来
ブルーを動かすには充分だろ」
そっか…もうブルーを説得できる証拠は揃って来てる!
あとはエリヤのやった事を証言できる人がいれば…!
凛太郎とコンタクトが取れればブルーを味方に出来るかも!
「解った!証言出来る人を集めてブルーと話をしてみる!」
私はそう彼に笑顔で言い放った。