ホワイト
ここが…双星ヒーロー養成学校
私の好きなコズミック5が育った学校…!
コズミック7はもちろん、名だたるヒーローを多数輩出してきた伝説の学校。
アニメでも「ヒーローになるなら双星に行け」って言ってたくらいの場所!
思わず目が輝いちゃう!
迸る正義の香りがするわー!
…しれにしても、試験も何も受けて無いのにどうして入学できたのかしら?
「リリア凄いね、聞いたよ?昨日ウリュウ様と話した後入試試験の筆記で
90点取ったんだって?」
入試試験…?あーーー!あの良く解らないテスト用紙!?
これ何?って聞いても「学力のテスト」としか教えてくれなかったのにそんな大事な物だったとは!
…まあいいわ、結果的に双星に入れたんですもの!嬉しい―!
「リリア、あの…大丈夫?
解ってると思うけど目立たない様にするんだよ」
ナギが心配そうに言う。
大丈夫、私前世…って言いたか無いけど
前の世界では目立たない方だったもの!
生きてるだけで空気になれる自信があるわ!
「大丈夫、任せなさい!
私たち、今回は転校生って事になってるんだっけ?
げっ偽名が須藤リリア…!」
ウリュウのネーミングね!
あの男、いつかビンタしてやる…!
「そう、現役のヒーロー…
コズミックレッドが特別講師を受け持つ教室の新入生として紛れ…
ねえリリア、一応これ仕事だからね?」
コズミックレッド!謎多きカリスマ!
レッドの授業を受けられとか夢みたい!
ああ…夢じゃないんだっけ!
「わかってるわ!早く行きましょう!」
レッドはアニメだと素顔も謎でいつもマスクしてて…
年齢も解ってないんだっけ?
老人説が出てたけど、それにしては姿勢が良かったしなあ。
「だから!話しかけんなって言ってんだろグズ!」
私が期待に胸を膨らませていると、
何処からか罵声が聞こえてくる。
見ると、白髪の少年が金髪の少年に胸ぐらを掴まれており
金髪の取り巻きらしき奴らがそれを笑って見ていた。
「まだ俺の事『親友』とでも思ってるのか?
いい加減にしろよ!お前みたいな臆病者、知り合いとも思われたくない!」
「なにあれ…いじめ!?」
「みたいだね、関わらずにやり過ごして…
リリア!?ちょっと!」
私はナギの制止も聞かず走り出すと、
「やめなさいよあんたたち!
ヒーローになりたい癖にこんな堂々といじめだなんて…!
あなた達に掲げられる正義なんかないわ!さっさと消えなさい」
と言い放つ。このコズミック7が育った学び舎でこんな奴らをのさばらせちゃいけない!
(あちゃあ…目立つなって言ったのにめっちゃ喧嘩売ってる…!どうしよう)
ナギは遠くで他人のフリをしようかどうか悩んでいる様子だった。
大丈夫よ!一人でやれるわ!という意味合いのウインクを送ると、
彼は深いため息を吐く。
…あれ?それにしてもこのいじめっ子
まだ子供だけど何処かで見た顔ね。
「なに?あんた
俺に向かってヒーローのあり方でも問い出す気?」
「あなたが誰か知らないけど…こんなの陰湿よ!
この子震えてるじゃない…!あれ?」
私がいじめられてる子の方に振り返ると、
頭の中に稲妻が落ちる。
この子…!ちっちゃいけど…
ちっちゃいけど間違いない!
この白髪、白いまつ毛!青い瞳!!
ホ…ホワイトだあ~!可愛いー!
ホワイトはレッドに才能を見抜かれた事で物凄く努力してヒーローになった男の子…!
正直者で努力家なとこがもう好きで好きで…!
ブラックとの絡み含めて大ファンなのよ!
コズミック7の主人公にこんな所で会えちゃうとか超ラッキー!生きてて良かった!
「何にやけてんの…?気味悪いよこの女…早く行こう『ゆかり」
取り巻きの女子がそう言って彼の袖を掴む。
ゆかり?男なのに縁だなんて…コズミックイエローくらいしかいないと思ってたのに。
いや、まさかね!
「待ってよ、こういう反抗的な奴は早めに潰しておかなきゃ」
彼は私を壁に追い込み威圧すると、不敵に笑う。
ああ…人生初の壁ドンがこんな小物相手なんて…!
「ちょっと痛めつけたら大人しくなるだろ」
金髪の男はそう言って私に手を上げる。
まずい!殴られる…!ええい、ここは正当防衛よ!
彼の手振り降ろされそうなその一瞬で、私は手に冷気を溜め。
彼の顔を両手で掴むとこちらに引き込んだ。
「なっ…おい!つめたっ…勝手に触んな…!」
そしてそのまま、両手から氷を出して首を冷やしてやる。
首に大きな氷塊を付けられた男は驚いたのか顔を真っ赤にして後ろによろけてしまう。
私はべーと舌を出すと高笑いしながら
「ちょっとは頭が冷えたかしら?お馬鹿さん」
と言って奴を見下してやる。
「氷の能力者…いつの間にそんな奴が入って来たんだ…?
くっそ、気分悪い!お前ら行くぞ!」
「ちょっと!その氷どうするの!?」
「その内溶ける!」
金髪の男はそのまま何処かへ走り去ってしまった。
ふん、イキり金髪坊主め…ざまあみろよ!
「あはは!見た?あいつの顔!耳まで真っ赤っか!
よっぽど凍らせられたのが屈辱だったのね~!」
私が振り返り、幼いホワイトに言う。
「あの…ありがとうございます!助けて頂いて…!
えっと、良かったらお名前を…」
「名乗る程の者じゃないわ!また会えるといいわね」
あー!これ言ってみたかったの!私もヒーローになった気分…!
人助けって気持ちがいいわ!
「リリア!何やってるの肝が冷えたよ!
目立つような真似はするなって言ったよね!?」
ナギが走って来て私の肩を掴む。
「め、目立ってないわ…?ヒーローに紛れ込むための芝居よ…」
「目を見てから言い訳してくれる?」
ナギへの言い訳を必死に考えていると、一連を見ていたのか
校門の方向から少年がこちらに歩いて来る。
まだ幼い…私より少し歳上くらいの男の子だ。
少年は黒髪で小柄、どこか儚げな雰囲気を纏っていて綺麗な顔立ちをしていた。
「君」
「は…はひっ」
思わず見とれていた私に少年が話しかける。
何だろう…背は変わらないのにオーラがあるって言うか…大人びて見えるな。
「見てたよ、よく頑張ったね!
困ってる人を助けられてすごいすごい…」
彼はそう言って私の頭を撫でる。
何だろう、この子の声ってなんだか安心する…それに手も温かくて…
「え…あ…えへへ」
知らない少年に撫でられるという良く解らないシチュエーションだが、
不思議と悪い気はせず私は満更でもなさそうににやける。
「なっ…!なんですかあなた!人の連れの頭を勝手に撫でて!」
ナギが保護者の様に間に入ると少年に言い放つ。
「あ、ごめんね!嫌だった?
じゃあご褒美にこれあげる、男の子にも」
彼がそう言って差し出したのは、おじいちゃんの家で食べた覚えのあるフルーツ型の寒天ゼリーだった。
「ありがとう…」
あ、このゼリー…昔おじいちゃんの家に置いてあったのと似てる、懐かしい…
「人助けもいいけど、授業に遅れないようにね」
「あー!授業!」
「走ってリリア!今なら間に合うから!」
「ごめんなさい!すっかり忘れてたわー!」
「また後でね」
また…?
少年の言葉を疑問に思いつつも、
私たちは全速力で教室まで向かうのだった。
「ふふ、元気だなー」