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前世の面影

ブルーはあかりの急な提案に目を丸くしている。


「ど、どうしたんだよ急に……!それに『俺』って……」


「ブルーさん、あんたも気づいてんだろ。

俺は普通の中学生じゃねえ!中に……あんたより歳上のおっさんが住んでんだ」


「は……いや確かに大人びてるなとは思ってたけど、中におっさん住んでるって何の話!?多重人格的……な?」


ブルーは混乱している。

……無理もない、「転生者」の存在なんか、同じ転生者でもないと中々理解できるものでもないだろう。


「ちょっとあかり!急に何言ってるのよ!」


「そ、そうだよ……ヒーロー本部を辞めるだなんて……」


あかりの言葉に反応し、私と若葉ちゃんが口々に言う。


「……俺、ほぼ確信してんだ。

焔君のあの事故……あれは恐らく役員の『エリヤ』の仕業だろう。

彼女の能力は『能力の強化』。

焔君の制御が効かなくなった説明も付く。」


「……!」


「それに定かではねえが、緑川の記憶を消したのも恐らくヒーロー本部の人間だ。

……そして、焔君を助けてくれたあの少年はブラックホール団員なんだろ?」


「は!?そうなの!?」


あかりは何かを察しろと言わんばかりにこちらを見る。

私はため息をつくと、

「……そうよ、ナギも私も……緑川も。

元はブラックホール団員なの。」

と、告白した。


「そんな……!緑川君まで……!何かの間違いでしょ……?」


若葉ちゃんはそう言って口を覆う。


「……ブルーさん、俺の正義は『身近な人間が幸せでいられる事』。

まず身の回りの人を救えなきゃ、どんな人間も救えねえ。

今までそう信じて生きてきた。だから俺にとっちゃ、焔君みたいな子供をあんな目に遭わせるヒーロー本部は悪だし、救ってくれた少年が正義だ。」


あかりは真っ直ぐにブルーを見て言う。

その姿には、みたこともない「前世」の面影を感じさせる程の迫力があった。


「あんたなら……解るだろ大吾さん。

今のヒーロー本部は100%の正義じゃねえ!……コズミック5の皆と一緒に俺は本部を出たい。

だから最初に俺とあんたで新しい場所を作らないか?」


あかりは、余程コズミック5の面子が好きみたいだ。

しかし、その中には田村も……


「……言いたいことは解ったけどよ、何の証拠も無しにそれを信じるのは難しいぜ?せめて決定的な証言でもないと。」


……まあ、普通はそうなるか。

あれから凛太郎は連絡をよこさないし、この人達が記憶を見る術はないから田村が犯人ってことも証明できない。


「……なら、証拠があれば来てくれんだな?」


あかりはブルーに問いかける。


「おう、もしあかりちゃんの言ってる事が本当なら……子供の未来を奪おうとするような奴は、『正義じゃねえ』。

一緒に悪と戦ってやるよ!」


ブルーはそう言ってあかりの手を握る。

勇気を出して言ったことだったのか、あかりの目には涙が滲んでいた。


「ありがとう……!あんたがいてよかった……」


あかりは地面を見つめ、そう呟いた。


……


「それじゃ、俺たちは事務所に寄るからここでお別れだ!またな。」


ブルーはそう言って私達に手を振る。

あかりも一緒に帰ってしまった。


……さて……これからどうしたのか。

私は緑川と若葉ちゃんの方を見る。

このまま3人でいても疲れさせるだけだし、もう解散するしかないか。


「あ……2人も、帰っちゃう?」


若葉ちゃんは私の態度を察してか、そう言って俯く。


「あ……そうね!門限もあるし……!」


私が別れを切り出そうとすると、赤いスポーツカーが走ってきて目の前に停まる。


中々お目にかかれない、派手なスポーツカーだ……

感心していると、中から見覚えのある顔が覗く。


「よお、かわい子ちゃん達」


「シノ!」


何でこんなところにシノが!?


「何でって、迎えにきたんじゃないの。

帰りが遅いって王子様が心配してたぜぇ?」


ウリュウのこと……?嫌な比喩ね、あいつが王子なんて……


シノはふいに若葉ちゃんの顔を見ると、面白いものを見つけた、と言わんばかりの顔で

「あんたも来るかい?この2人のホームに。」

と言ってにやけた。


「ちょっと何考えてんのよ!そんなのバレたら……」


「バレやしねぇよ、ウリュウ然り、俺もお偉いおじさん方から距離置かれてんだ。

乗んな、皆でドライブと行こうぜ」


シノが若葉ちゃんの手を取ると、彼女は少し躊躇いつつも

「緑川君がブラックホール団員……そんなの嘘。

この車に乗ればわかるんだよね?」

と尋ねる。


シノは笑顔で頷くと

「ああ、今これに乗りゃユウヤの全部が解るぜ」

と答えた。


若葉ちゃんは意を決した様な顔をすると車に乗り込み、私と緑川もそれに続いた。


シノは勢いよく運転席に乗り込むと、

凄いスピードで渋谷方面まで走り出す。


「ちょっと!法定速度守りなさいよ!」


私の叫びも虚しく、道路にはシノの楽しげな歓声が響いた。


ーーーー


…到着した場所は、何の変哲もない公園の様だった。

そこには、意外な人物が立っている。


ウリュウと……ミカゲ……?


「女で記憶が戻らないならよお、後は友情が物を言わせる番だろ?」


シノはそう言って私にウインクを投げる。


何をする気なのだろうか……?

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