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ナギの未来

「リリア…『原作』なんてワードが出るって事は、この男は転生者関係の人間だよね」


ウリュウが顎に手を当てて尋ねる。


「え、ええ…彼は間違いなく、未来を知っている人物だと思うわ」


「…彼が緑川を狙った理由…

 君ならわかるかい?」


あの口ぶりなら、多分…田村喜助は

所謂「原作厨」と呼べる存在…

未来を変えられる事を望まない人物と言える。


「説明が難しいんだけど…私や彼が知ってる『未来』を守ろうとした結果

 緑川が狙われたんだと思う」


「成程…じゃあ未来を変えようとしている僕たちとは明確に対立する立場ってわけ

 また斬新な切り口から敵が出て来たな」


彼はそう言って笑うが、目の奥は笑っていない様に見える。

必死に平静を装っているみたいね…


「…ねえ、私どうしたらいい?

 緑川の事も手一杯だったのに

 ナギがこの調子じゃ…」


こういう時こそ私は彼に助けられて来た。

その彼が今、生命力を使いすぎて弱っている。

普段どれだけ彼に甘えて来たのか痛感して、私は表情を曇らせた。


「まず…ナギの事は申し訳ないけど君じゃどうにも出来ない

 医者である僕の領分だ」


「…えっと…じゃあ…」


私は混乱したように言葉を詰まらせる。

駄目だ、考えてももやがかかったみたいに何も解らない。


「…リリア、大丈夫?」


「だ…大丈夫…」


「見るからに大丈夫な状態に見えないけど…

 もう今日は休みな、明日またここに来て」


ウリュウはそう言って私の肩を抱くと、ふらついた私を家の前まで送ってくれた。


…情けない…本当に困ってるのは私じゃないのに…!

こんなに弱いんだ、私って…!


ーーーー


私は、晩ご飯を済ませるとすぐに部屋にこもってベッドの上で考えごとをしていた。


焔を救えたと思ったら今度はナギと緑川がこんな事になるなんて…

だめね、今まで自分が未来を良い方向に変えてるんだって勘違いしてた。


実際にはウリュウやナギの力がなくちゃ何も出来なかったのに。

…ナギ…ごめんなさい。


こんな事なら…私じゃなくて別の人がリリアに転生してれば…こんな…ことには…



あ…また…夢…


『ナギ!こっちよ!』


『リリア様、待って下さい!』


…ナギとリリアだ、楽しそう。


あれ?でもこの2人って

リリアがナギをいじめていたせいで険悪な仲なんじゃないっけ?


『私…貴方に感謝してますの

 無視もしないし

 友人のように接してくれる…

 これからも私達友達よ』


『…はい』


友達…?リリアとナギが?

それになんかナギの顔…悲しそう。


場面は切り替わり、ブラックホール団のアジトらしき場所でリリアが泣いている。


『どうしてこんな事になるんですの…

 私、レッド様と戦いたくなんか無かった

 なのにあんな酷い火傷を負わせて…!』


『…リリア様は組織の為に頑張りました

 そうだ!これ、良かったら』


ナギはそう言って可愛いクマのマスコットを

リリアに差し出す。


『可愛いマスコットね…こんなの

 頂いてしまっていいの?』


『俺が側にいると思って大事にして下さい』


ーまた、場面は切り替わり、

リリアの屋敷が映る。


そこには鬼のような剣幕のキアラさんがいた。

彼女はナギとリリアの目の前でクマのマスコットを取り上げ、首を切ろうとしている様に見える。


『やめて!ナギから貰った大事な物なの!

 お願い壊さないで!』


『貴方様の為なんです!』


キアラさんはリリアを突き飛ばすと、

クマの首を切り落とす。


…そして、中から何かを取り出し、顔を顰めた。

…これは…?


『最近シノ様が開発された小型の発信器…

 どうしてこんなものを』


キアラさんが言う。


『彼女が…心配で』


『嘘ね、それならこそこそと仕込む必要なんかない

 …あなた…リリア様を疑っていたのね?』


リリアはそれを聞き、絶望の表情を浮かべる。

…そっか、原作のリリアはまだナギとの交流が浅くて…

まだスパイと潜入先の関係だったのかもしれない。


『ごめんなさいリリア様…

 これが俺の仕事なんです…!』


彼がリリアに縋ろうとすると、

彼女はナギの頬を叩く。


『…いいのよ

 私に…味方なんて不要ですもの』


…夢の中のリリアは、そこから人が変わってしまった。


嫌がらせをして来た使用人達を辱め、

ナギに辛く当たる様にもなった。


『貴方、ヒーローに憧れてるそうじゃない

 …馬鹿なことを

 卑劣な鼠の癖に正義の味方になろうなんて

 滑稽ね…ほら、言いなさい

 「汚い鼠はヒーローになんかなれません」って』


彼女は自室で、そうナギに迫る。

ナギは震えながらリリアを見ている事しかできない様だった。


痺れを切らしたのか、リリアは氷塊をナギにぶつけると再び彼を威圧する。


『汚い鼠は…ヒーローになんかなれません』


ナギはとても悔しそうに言い放つ。

酷い…こんな風に夢を踏み躙るなんて…


また、場面は切り替わり

クリアな映像が映る。

…恐らくは、新しい記憶なのだろう。


『リリア…俺は貴方を一生許せないでしょう』


あ…このシーン覚えてる

2期の…ラストだ


ナギの顔、凄く悲しそう。


彼は息の薄くなったリリアの顔にそっと触れる。

…ああそっか、あの時リリアが眠る様に亡くなったのは

「ナギの能力を使ったから」なんだ。


ナギは肩を震わせて…泣いてるの?


『リリア様…!ごめんなさい…!』


…映像は、そこで途切れた。


『真理愛』


突如、傍観していた私の後ろに、リリアが現れる。


「わっ!?」


『さっき見せたのが、

 本来の未来…貴方は無自覚にも

 ナギの未来も救ってくれている』


彼女は私の髪を優しく撫でると

『あなたはすごいわ、自信をもって

 私も…あなたが未来を変えてくれたから救われましたのよ』

と言って微笑む。


私は、その微笑に見とれているうちに目を覚ました。


…リリア…ありがとう

少しだけ元気出たわ。



私は再び医療班のアジトまで向かうと、

ウリュウに


「おはよう!もう大丈夫よ、元気になったから!

 それで私は何をしたらいいかしら!」

と言い放つ。


…正直まだから元気だけど

落ち込んでるよりまずは行動しなきゃ…!


「おはよう真理愛、元気そうで何よりだ」


私は、ウリュウの隣でボーッと立っている緑川の方を見る。


「あ、知ってる人…」緑川はそう呟いた。

やっぱりまだ記憶は戻ってない、か…


「君のやる事は『ユウヤ君の記憶を取り戻す事』

 …記憶って、能力が干渉しても

 そうそう消えたりするもんじゃないんだ

 何か彼にきっかけを与えれば思い出すかも」


「…きっかけ…」


「そうだな、例えば大事な思い出とか

 大切な人の記憶…とか」


私は言われてはっとする。

もしかして…若葉ちゃんに会わせれば記憶を取り戻すかも!


私はウリュウに

「緑川の記憶を戻せそうな人、知ってるわ!

 任せてちょうだい」

と言い放ち、不敵に笑う。


「…君って、中々心が折れないよな

 昨日の状態が嘘みたいだ」


「悪い?うじうじしてたって仕方ないもの」


「いや?…すぐに心が折れて、

 …いつも誰かに甘えてるよりは…

 ずっといい」


彼は遠い目でそう呟く。

…なんか…誰かを想像して言ってる…?


「なら早速その人物とコンタクトを取ってくれ」


「ええ!任せなさい!」


「…真理愛」


「何?」


「リリアに転生したのが君で良かった」


「…え…」


「こういう時…前向きになれる奴がいると

 僕も多少やりやすいから」


「えっ…と…」


不意に、私の頬に涙が伝う。

「私で良かった」と言って貰える事、

それが今の私には救いだった。


「は!?え、おい泣いてるのか!?」


「あ…いや、大丈夫…大したことじゃないの」


私は涙を拭うと、両手で軽く頬を叩く。

泣いてる暇なんかないわ!任務に集中しなきゃ!


「私も…あんたが上司で良かったわ

 いい報告待ってて頂戴!」


私は満面の笑みで彼に言うと、

反応を見るのが恥ずかしくて緑川を連れそそくさとその場を後にした。


…うん、もう大丈夫…!リリア、ウリュウ、ありがとう

私…緑川もナギも救ってみせる!

夏風邪で体調を崩してしまい、ストックがまだあるので

当方の寝る前と起きた時間に引き続き投稿するのですが、

1回投稿になったり更新が止まってしまったら申し訳ございません。

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