表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/36

転生者

キアラさんの一件が片付いたその日の夜、私はウリュウの部屋まで呼び出される。


「やあ!ナギもリリアもお疲れ様!」


と輝くような笑顔で言った。

こっちは疑われた挙句スパイまで送り込まれてるっていいのに

よくもそんな晴れやかな顔が出来るもんね…


「リリアも聞いてるよね?

我が医療班は表向きは傷ついた隊員を癒す役割だけど

裏切り者を暴いて裁きを下すのも役目…

今回リリアは裏切り者では無いと判断されたけど

僕はまだ疑ってるから気を抜くなよ!」


満面の笑みで言う事じゃないでしょうに!


「僕が君に下す任務はしばらく潜入とか工作とか

そんな地味な物が中心になると思う

君は幹部に就任したてで地球人に顔が割れてないしね

やれそう?」


「ぜ、善処します…」


本来だったら絶対嫌と断るとこだけど、この夢の中で私は「リリア」って事になってる

彼女の面子を保つためにもここは逆らわないでおいた方が良さそうね。


「ナギ、少し予定は早まったけど聞こうか、部隊の様子はどう?」


「…キアラが衣類を破いたり皿を割ったりといった奇行を…」


彼はそう言って証拠写真を机に並べる。

ナギのせいにしようとしていた事を考えると、

よっぽど私をヒーローに近付かせたくなかったのね…


「リリア様を殺そうとしたりもしてましたし

 少しメンタルケアを行った方がよろしいかと

 内通者に関してはそれらしい人間はいませんでした」


「なるほど、よく働いてくれたね 

 今日君達を呼んだのは…

 今回の件で騙して悪かったねと言う種明かしもそうだが

 リリア、君の事についても話しておきたかったんだ」


ウリュウは指を組みながら言う。

私の事…?


「君、所謂転生者だろ」


「…え?」


「別世界の人間が死んで何者かに転生する事…

 頻繁にある事じゃないがごく稀にある事らしい」


転生…死んだ?私…が?

そんな訳ない!だって…!


そこで、ここに来る前に見た「夢」を思い出す。

海に沈みながら、怖い思いを必死に押し殺す、あの悪夢。

…まさか…あれが「夢じゃないとしたら?」


私は…須藤真理愛は…死んでいる…?


「君が僕に掛った時、失礼ながら記憶を少し見させて貰ってね

 就任式の前の記憶がほぼ()()()()()()()()()()()()()()

 君は…この世界に転生してきた、転生者なんだろ?」


ウリュウの鋭い目つきが私に刺さる。

息が上手くできない…

これは夢じゃない、転生した後の世界…?


「わ…私…知らなくて…!

 この世界の出来事が夢だと思ってたの…!

 だって…!死んだなんて…嘘…!」


私がふらつくと、ナギが背中を支えてくれる。


「…なるほどね、『リリア』には聞きたい事が沢山あったんだけど

 『君』にそれを訪ねるのは残酷なようだ

 まあ少なくとも今の君が内通者とかではないことは分かったよ

 ナギ、家まで送って行ってあげなさい」


ナギは私を支えたまま基地を出る。

私はその間も自身が転生してここにいるという事実がショックで頭がパンクしそうになっていた。


「…リリア、大丈夫?」


「大丈夫…はは、大丈夫に決まってるじゃない… 

 ちょっと驚いただけよ…こんなの」


私の状態を見て、「普通じゃない」と感じ取ったのか、

ナギは私の手を握ると


「助けてって言って?」

と私に言い放つ。


「…え…」


「リリアが助けて欲しい時…そうやって強がられたら俺

 馬鹿だからわかんないよ

 …友達なんだろ、困ってる時は助けてって言って欲しい」


風に吹かれて覗いた彼の瞳が真っ直ぐに私を見る。

私は訳も解らず涙を流すと


「こんなの…どうしたらいいか分かんない…助けて…!」

と彼に訴える。


彼は、私を抱きしめると

「絶対助けるよ」と一言だけ呟いて、私が泣き止むまで傍にいてくれた。



俺は能力が物騒だから、家族からは少し距離を置かれていた。

虐待って程でも無いけど、暖かい関係って訳でも無くて

「怒らせたら何されるか解らない」みたいな、そんな距離感で

居心地が悪いから何となくで戦闘員に応募したら、


「僕の隊で懐刀として戦おう!君の能力は人の意表を突ける!」


悪い大人に捕まってしまい…


表向きは医療班で、裏では「裏切り者」を粛清する役。

しかし裏切者を排除する役といってもその業務内容はその対象に近づき、裏切者を裏切る事。


彼らを欺く度に向けられる、あの目を思い出す度、

俺はこの組織で一番卑劣で恨まれている存在なのだろう…

そんな事を考えてしまい夜に寒気がして寝れなかった。


そんな時にヒーローは現れた、人間と異星人が抗争してる時にたまたま居合わせていた俺を「まだ子供だから」と庇ってくれたあの男。


裏でこそこそ身内を粛清するだけの僕とは真逆の、正々堂々とした正義に

とても心打たれてしまった。


心ではああなりたいと思いつつも、現実は厳しい。

俺なんかがヒーローになれる訳ない、そもそも異星人である時点で、憧れるべきじゃない…

そう思っていたのに。


『いいじゃない!夢は誰にでも見る権利があるわ!』

『ヒーローになりたいなら今すぐやめなさい!』


あの子は認めてくれた、否定しなかった。

裏切ってもまた友達になるって言ってくれた…

変な奴…でも、その不思議な所に救われたから…


今度は俺が助けたいって思ったんだ。


ーーーー


ウリュウに私が転生者だと告げられた、次の日の朝

私は支度をしながら考えを整理していた。


考えなければいけない事はいくつかある。


まず、どういう心持ちでリリアとして生きていくかもそうだし、

 「転生」と聞くと物騒だが果たして私は本当に死んだのか?


それも少し怪しい所だ。


だって死んだ根拠はここに来る前に見たあの夢だけ…

しかも、溺れていただけだもの…助かってる可能性だってあるじゃない!


悲観しちゃ駄目…!とりあえず私の目標は

「元の世界に帰る事!」そして、リリアとしての目標は…そうね、


このままだとヒーローと敵対するのは確定してる。

でも任務を放棄して私まで裏切りでもしたらキアラ含め、

残ってる使用人達がどうなるかわかったものじゃないわ。


なら、やることは明白…

立派な幹部になって、推し達が最高に輝ける環境を作り出す!

光を際立たせる影になる事…!それが私がリリアとして生きる道よ!


…と、決心したのは良い物の…

全然頭が追い付いてない…転生…ヒーロー…もう感情がぐちゃぐちゃ。


『あなたならやり直してくれる』


ねえ…リリア、これがもし本当に「転生」なら

私は貴方に選ばれてここに来たのよね?


何をやり直したくて、どうして私を頼ろうと思ったの…?


「リリア様、早くしないとウリュウ様を待たせますわよ?」


「ああ、お可哀想にウリュウ様…こんな出来の悪い部下をお持ちになって」


相変らず可愛くない奴らね…!

ああ!何でこんな奴らの為に頭を悩ませなきゃなんないの!


ーーーー


「やあ真理愛、元気にしてた?

 君って給仕服が良く似合うね」


呼び出されるなりウリュウが放った言葉に私は青筋を浮かべる。


「あ~れ~?何?怒ってるの?忘れない様に前世の名前呼んでやったのに」


この人デリカシーとか無いのかしら!?

私が転生した事実を飲み込むのにどれだけ時間を要したと思ってるのよ…!


「ウリュウ様…ご要件は何でしょう」


爆発しそうな私を見かね、ナギが訪ねる。


「ああ、そうだった…ナギ、リリア!君達に任務を与える

 うちからヒーローサイドに送り込んでるスパイの動向が

 おかしいとタレコミがあってね

 君達にその調査を頼みたい」


「え!?スパイ…!?」


そんなのいたんだ!アニメじゃ微塵も存在が出て来なかったのに…!


「どうかした?もしかして気が重いかな?」


「ああいえ!」


「君達が乗り込むのは

 名門って言われてる『双星ヒーロー養成学校』

 そこにいる『緑川裕也』って奴を偵察して来て欲しい

 いい報告を期待してるよ

 前にも言ったけど、裏切るような事があれば…解ってるよな?」


ぐ…どうせ殺すって言いたいんでしょ!?

私は軽い緊張感に苛まれながら「はい」と返事をすると、そのまま部屋を出た。


ヒーロー…養成学校…

ウリュウの部屋から出た後、メイド達を屋敷に帰らせると

私は移動しながら学校のパンフレットをめくる。


「コズミック5のメンバーが排出されてる学校らしいよ、

 ちょっと楽しみだね」


コズミック5が…排出…!?てことはもしかして!

私は在校生のページをめくる。

そこにはアニメで出て来るヒーロー達の名前がずらりと書かれていた。


「聖地巡礼ー!」


「うわっ!びっくりした…!何いきなり!」


「コズミック7」には彼等のみならず様々なヒーロー達が出て来る、

その素敵なキャラクター達に任務とはいえ会えてしまうなんて夢みたい!

ああ、夢じゃないんだっけ…?


まあいいわ、任務がんばろーっと!

私は浮かれ気味にそんな呑気な事を考えていた。

この任務で起こる出来事が、後に身の破滅を招くかもしれない事態を引き起こすとも知らずに…

別作品を7月までに完結させたいので、

1度1章で更新止まります!

ここまで読んで頂きありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ