求婚…?
全員が焔を見守る中、緑川が
「あ、彼の中にいた人…いなくなっちゃった」
呟く。
全員がその発言を不思議に思っていると、
レッドがゆっくりと目を開けた。
「兄ちゃん!」
凛太朗が嬉しそうに声を上げる。
良かった…!意識が戻ったんだ!
全員無言で目を合わせると、笑顔で頷く。
「皆…何してるの…?」
呆然とした様子で焔が言う。
「焔君、能力の暴走で倒れたんだよ…!
それをこの男の子が治してくれて…!」
ピンクがそう言ってナギの方を見る。
「そうなんだ…!ナギ君、ありがとう!」
ナギは照れ臭そうに「へへ」と笑うのみだった。
…あれ…なんか、ナギの顔色が悪いような…?
「焔君良かったよー!一時はどうなる事かと…!
おじさんお医者様に意識が戻ったって報告してくる!」
ブルーはそう言って元気に病室を飛び出した。
…あんなきつい特訓して生命力を吸われた後でもあの元気…恐ろしいわね。
焔は彼を見送ると、私が手を握っている事に気が付き顔を赤くして
「わっ」と叫ぶと手をほどく。
「な…何で…!手握ってるんだよ!」
「何よやな感じ…そんな触っちゃいけない物
触っちゃったみたいな反応されると複雑なんだけど」
「だって君…俺の手…熱いから嫌だって…前…」
私は少し考えた後に思い出す。
あ…確かに言ったかも。
「慣れたわ、私って強いの」
私は満面の笑みで言う。
レッドは少し驚いたような顔をした後、何か言いたげに私の顔を眺めていた。
「何よ、人の顔じっと見て」
「な、なんでも…」
「あー!私ちょっと水飲みたくなったかも!売店いこ売店!」
あかりは大声で言うと凛太郎や緑川を連れどこかへ消えてしまう。
ナギもその様子を見て何かを察すると、
「俺も行って来る」と言ってあかりを追いかけてしまった。
病室にはレッドと私だけが残され、2人は気まずく沈黙する。
「あー…私も何か買ってこよっかな」
私が離れようとすると、レッドに手を掴まれる。
「…何よ?」
私が尋ねると、彼は伸ばした自分の腕を見て驚愕する。
「あれ…綺麗…」
彼の腕からは殆どの火傷跡が消えており、綺麗な状態に戻っていた。
ナギってば、今日の分だけじゃなくて過去の分まで治してくれたんだ…
「ナギが治してくれたのよ!良かったわね!」
「どういう事?彼の能力って…」
「ナギの能力は生命力を吸い取って人に与えたりできる能力なの!
今回は彼があなたの事救ってくれたのよ」
「生命力…」
レッドは少し考え込んだ後、
「…リリア、慢性的に疲労してて…
『生命力が少なくなってる』
って前に言われてたよね」
「えっ?あ、あー!…その
困った時の貯金として吸ってもらってたのよ!
あんたの為にやってたわけじゃ…!」
私が言い切る前に、レッドは掴んでいた私の手をそのまま引っ張り、抱き寄せた。
「はい!?」
彼は少し力を込めると、
「リリア…俺、リリアの事…好きだ」
と言う。
…え?
…だってレッドは…焔は私の事
敵だって認識してた筈じゃ…
「わ、私は異星人なのよ!?」
「…でも…それでも、君が好き
敵とか、味方とか以前に
俺ずっと君の事ばっかり考えてた」
「…わた…しも」
「リリア…俺ね
リリアと結婚したい」
私はその言葉を聞いて、耳を疑う。
「…えっ?結婚…?
付き合うとかじゃなく!?」
「付き合っても結婚出来なきゃ意味ねーじゃん!
今地球の法律だと
異星人と地球人は結婚出来ないんだ
まずは法律を変えないと…」
「待って待って!法律とか以前に
私達まだ子供だし
急にそんな話されても困るんだけど!」
「何で?俺はリリアがいれば良いし
リリアも俺がいればいいでしょ?」
本当に不思議そうな顔で焔が言う。
あれ…以前から少し思ってた事だけどこの人…
愛が重いんじゃ…?
「あ、あのね!確かにあんたの事
心配してはいたけど…!
結婚したいとかは流石に考えてなかったわ!
ちょっと段階飛ばしすぎなんじゃないの!?」
「そうかな?どうせ別れないなら同じ事じゃない…?」
いやだから、なんで別れないって言い切れるのよ…
「リリアは俺と結婚したくないって事…?」
「そうね…少なくとも今は無理」
私が言うと、彼はしょんぼりと肩を落とす。
「じゃあどうしたら俺と結婚してくれる?」
どうしたらって…まず結婚前提のマインドを何とかしてよ…
付き合うとかの話だったら答えが出せたかもしれないのに…!
「そう…ね、強いて言うなら…
私は強くて死なない奴が好きなの
あんたが物凄く強くなってすこぶる健康な大人になったら…
考えてやらなくもない」
私が言うと、彼は微笑んで
「そうだよね、俺が死にそうになると
リリアは泣いちゃうもんね」
と嬉しそうに言う。
ぐ…!別に毎回泣きたくて泣いてないわよ…!
「俺、もうリリアの事泣かせないよ」
彼はそう言って私に顔を近づける。
え、え…ちょっと待って!
そんな急に…!
私がぐっと目を瞑ると、
「焔くーん!お医者さん連れて来たよ!」
と言いながらブルーが戻って来た。
「…あれ?取り込み中…?
待って!焔君なんかまた燃えてない!?」
焔はブルーにキスしようとしていた場所を見られたのが
よほど恥ずかしかったのか、強く燃え上がると
「後で俺からも伝えるけど…ナギ君にお礼言っておいて!」
彼はそう言い残し、そのまま恥ずかしそうに寝そべってしまった。
まあ…元気になって何よりだわ。