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反転

「殺すって…」


兄ちゃんは戸惑いながら言葉を探している様子だった。


「…そんなこと、出来ない?」


彼女は兄ちゃんが答えられずにいる所を見てため息を吐くと、


「残念、焔君お気に入りだったのになー…」

と呟く。


「は…」


「ねえ…君ってさ

 能力が不安定なんだっけ?」


ーーーーー


模擬線はAグループがすべて終了し、

これからBグループの戦闘が開始する。


私は何気なくイエローを目で追っていたが、彼の態度は平静そのものだった。

何だか不気味って思っちゃうのは私だけかしら?


(なあ、焔君飲み物買いに行ってから大分経つよな?

 何か遅くない…?)


そういえば…自販機から距離も離れて無いのに妙ね。


(心配だ、リリアちゃま

 探しに行ってくれない?)


わ…解った!


私が体育館を出て行こうとした時、スマートフォンが鳴る。

着信だ…何かしら、こんな時に…

え、凛太朗?


私は人気の無い場所まで来ると、電話に出る。


「もしもし?」


【よかった…!リリア!大変だよ!

 兄ちゃんの力が暴走しちゃって…!医務室が燃えてる!】


「はあ!?」


【俺、能力と消火器で何とか対応してんだけど

 兄ちゃんの意識がある限り燃え続けるっぽいんだよ…!

 どうしたらいいと思う!?このままじゃ兄ちゃんが…!】


「わ、解った!とりあえずそっちに向かうわ!」


私が電話を切り走り出すと、何者かに行く手を阻まれる。

うっ…鷹野!?


「あれー、ピンクさんやっぱスマホ壊れてないんじゃないすかー!

 ねえねえ、今度ご飯奢るんで連絡先を―」


何よこいつまだ懲りて無かったの!?

…いや、待てよ…


『兄ちゃんの意識がある限り燃え続けるっぽいんだよ…!』


「解った!教えてあげるから一緒に来なさい!」


(え!?ちょっと勝手に何言ってんだよリリアちゃま!)


私は鷹野の手を引くと、医務室の方向に走り出した。



医務室の前に着くと、粉っぽさと煙たさで思わず咳込んでしまう。

相当ヤバい状況みたいね…!


私は医務室前の窓を全て開けると、「凛太朗!」と叫ぶ。

すると煙の中から白い粉まみれの凛太朗が顔を出す。


「リリア…!どうしよう…このままじゃ兄ちゃんが…!」


涙目になりながら訴える彼。


私は煙の中を進んでいくと、そこには能力のせいで

もだえ苦しむレッドの姿があった。


「焔君!大丈夫!?」


「ピンク…来ちゃ駄目だ…!医務室の皆を逃がして…早く…!」


私は医務室に残っていた緑川を連れ、走って医務室の外に戻ると


「鷹野!今から言う通りにしなさい!」

入り口付近でボーっとしていた鷹野に言う。


「レッドを気絶させて欲しいの…!貴方にしか出来ないわ!」


「はあ!?燃えてっし嫌なんだけど!」


くっ…!人がピンチな時に何を悠長な…!

ノーダメージで彼と接触させるにはどうしたらいい…!?

そうだ!リリアの体に戻れば…!


「緑川!私をリリアの体に戻して!」


「え?…え?何?わかんない…」


緑川は動揺するのみで、能力の事まで忘れている様だった。

ああもう、どうしたら…!


(リリアちゃま、「俺」を気絶させてくれ…!)


…え…?


(さっき「意識が無くなる」事でリリアちゃまが抜けちゃったろ?

 「気絶」したりしても戻れる可能性…ないかな?

 ここに俺がいてもどうせ能力的に役に立てねえ…!頼むよ

 焔君を助けてくれ…!)


あかり…!


私は意を決すると、

「…鷹野、じゃあまず私を気絶させて!

 電気の能力で思いきり殴るの、いい!?」

私はそう言って鷹野に詰め寄る。


「はい!?何で…!」


「いいからやって!じゃないと爆風で吹き飛ばすわよ!」


「ひぃっ…解った…後で訴えんなよ!?」


私は鷹野にみぞおちを殴られ、

強い痛みを感じながら意識が遠くなって行くのを感じていた…



…火の音…


私は目を覚ますと、カーテンの外を見る。

目の前には炎に包まれた焔が苦しそうにしていた。


「焔!」


彼は私の顔を見ると、力を振り絞ったように少しずつ後ろに下がる。


「リリ…ア…来ちゃ駄目だ…」


私はベッド側を伝い急いで医務室から出る。


「鷹野!いまからあんたにうすい氷の鎧を付ける!

 手は厚く氷で固める…!だからそれで

 さっきあかりにやったみたいに焔を気絶させて!」


「え…いやでも…」


「お願い!大事な人なの…!助けて…!」


鷹野は視線を落とし少し考えた後

「…解ったよ…俺もヒーローだし…」と言って私を見た。


私は彼に氷のアーマーを付けると、彼は煙の中に飛び込んでいき、

レッドを電気を溜めた拳で殴る。


「…あ…」


焔はまるで眠りに落ちるかのように鷹野の腕の中で倒れた。


「…っふー!あっちい!ほらこれでいいんか!」


鷹野は私に焔の体を渡す。

私の胸の中で眠る焔の体は火傷だらけだった。


「ありがとう…鷹野先輩…」


私は彼の体を抱きしめると、スマートフォンでブルーに連絡を入れる。


…程なくして、

連絡を聞きつけたブルーと青柳さんが到着すると

彼は信じられないものを見たような顔で一瞬固まった後、

すぐに救急車を手配してくれた。

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