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解釈不一致

「…」


(…は?)


「原作通りやったら君は…

 『元気で天真爛漫な女の子』な筈や

 なのに君、なーんかちゃうよな」


「はは…待ってよ…私はリアルな人間!

 アニメのキャラとかじゃないんだよ?

 『原作』って何の話?」


彼は私を無言で見つめている。


ね…ねえあかり…これ…


(待てって、こっちだって

 何が起こってるのか分からなくて混乱してんだ…!

 何で田村さんの口から『原作』なんてワードが飛び出すんだよ…)


「Bの人!そろそろスタンバイお願いしまーす!」


私が動揺していると、スタッフの人が呼びかける。


「あ、俺そろそろ行かんと!また後でなーあかりちゃん」


彼はそう言って姿を消してしまった。


「…ねえ、さっきの何の話?原作がどうとか」


グリーンさんが訪ねる。


「えっいや…!何でもないのよ、彼の好きな漫画の話…!」


おかしい、「原作」についての記憶がある人なんて転生者くらいのものかと…!

まさかイエローも転生者で…「佐伯若葉」がグリーンになれなかったのもあの人のせい、とか…?


(なら言動との整合性が取れないだろ、

 『原作通り』がいいのに

 なんでグリーンを別の奴にしようとすんだ)


そうよね…じゃあ一体…?


(…田村さん…あんた…何者なんだ…?)


ーーーー


コズミックイエローがBのグループ列に並んだ所を見送ると、焔は少し周りを見渡した後


「…俺、Cだからちょっと飲み物買ってくるね」

とコズミック5のメンバーに言う。


「あ?おお!残りは皆Cかあ…

 観戦しなくていいの?」

ブルーが尋ねる。


「イエローさんなら勝つでしょ、それじゃ」


焔はそれだけ言うとメンバーから離れた。



去年と比べて、ちょっとずつ余裕が出来て来たな…

これなら俺もブルーさんみたいに見回りとかできるヒーローになれるかも!


俺が自販機の前で浮かれていると、隣に美しい女性が笑顔で現れる。

…あ…サンダーファルコンとかのマネージャーやってる「小暮エリヤ」さんだ。


…この人、苦手なんだよな

目の奥が笑ってないと言うか、得体の知れないオーラがあると言うか…


いつも何故か俺に優しいけど、

担当でもないのに何でいつも話しかけて来るんだろう…。


「エリヤさん、こんにちは」


「こんにちは、焔君…

 全然疲れた様子もなくて凄いね

 訓練、慣れて来た?」


「そうですね、去年よりは…」


「そっかあ、良かった!」


何気ない会話をしていると、女子ヒーロー達の噂話が耳に入る。


「ねえ、あんたもAだったよね?

 『医務室の眠り姫』見に行かない!?」


「何それ」


「誰も知らないけどすっごい可愛い子が医務室のベッドで寝てるんだって!」


「えー?わざわざ女の子見に行くわけ?」


あ…多分リリアの事だ…

いや別にリリアを特別可愛いって思ってるわけじゃないけど…!

「誰も知らない」って言うんならその可能性が高い。


寝てるだけで目立ってしまうとは彼女らしい、

妙な事にならないといいけど…


俺が危惧しているとエリヤさんは噂話を気にしたのか、何かを考え込んでいる。


「…どうかしました?」


「いえ、ちょっと席を外すね」


彼女は涼しい笑みでそう言うと身を翻して「医務室」の方向に歩き始めた。


…なんだか、妙な胸騒ぎがする…俺は彼女に悟られないよう、ゆっくり彼女の後を着けた。


ーーーー


「やだー!帰る、僕帰るんだもん!」


緑川さんが叫ぶ。


「帰るってどこに!家覚えてるの!?」


「わかんない!凛太郎君の意地悪!うわーん!」


ああ…困ったな…これじゃまるで子守りじゃないか…!


俺が緑川さんの対応に困っていると、医務室の外からヒールの様な足音が響く。

まずい!人だ、隠れなきゃ!

俺は緑川さんと一緒に空いたベッドの上に乗ると、悟られない様に身を低くしてカーテンの隙間から様子を見た。


さっきからリリアの様子を見に来る人が多くて、

野次馬だったら兄ちゃんのフリして追い返してるんだけど…


入ってきた女性はジャージを着用しておらず、ヒーロではなさそうだし

「遊びに来た」という雰囲気ではない。


彼女は入り口近くのカーテンを開き、中を確認している。

まずい!見つかる!


俺は緑川さんを布団の中に押し込むと、頭まですっぽり布団を被り眠ったふりをした。


彼女は俺を見て少し間を置いた後、

「見えないなら噂にならないか」

と言ってカーテンを閉める。


あっぶねー…!


彼女は次々カーテンを開いて行き、一番奥のカーテンを開けると、

何か腑に落ちた顔をした後リリアを見つめていた。


…何だ…?もしかして潜入したのがバレた?

どうしよう、止めに行くか…


迷っていると、また医務室の扉が開き

入って来た「俺にそっくりな少年」は勢いよく彼女に近付くと、

手を掴んで


「エリヤさん、その子に何かご用ですか?」

とあくまで穏やかな様子で言い放つ。


…兄ちゃん…!何で…!


「…焔君、この子の知り合い?」


「…彼女は俺の生徒で…コズミック5の研究生なんです」


「この子を連れて来たのはあなた?」


「いいえ、うちのピンクです

 エリヤさんこそ彼女とはどんな関係で?

 ずっと眺めていたみたいですけど…」


「…顔見知り」


彼女が言うと、二人は黙って睨み絵う。

場の空気は緊張感で張り詰め、異様な雰囲気だった。


「ねえ焔君、この子が『ブラックホール団』の団員で

 敵だって言ったら信じてくれる?」


「…何を急に…」


「お願い、信じて…本当なの」


彼女は真っ直ぐ兄ちゃんを見つめて言う。

…何でそんな事を知っているんだ?

そういえば彼女…なんかリリアに雰囲気が似ている様な…


「根拠のない事は信じられません」


「なら彼女を近所の病院まで連れて行きましょう?

 よく眠ってるようだし多分問題ないわ」


彼女はそう言って兄ちゃんの肩に手をかけると、


「…ねえ、もし彼女が異星人だった解ったら…

 焔君、私とこの子を殺してくれる?」

と問いかける。


兄ちゃんはその問いに、言葉を失ってしまっていた。

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