爆風
休憩終わりの合図が体育館に響く
「あぶな!遅刻するとこやったわー!」
とイエローが体育館に滑り込む。
「まーたギリちょんかよ!皆もう集まってるぜ?」
「…?あれ、焔君、俺より早くこっち着いたん?」
「俺はずっとここにいたけど…」
「え???」
イエローが混乱していると、
程なくして赤松が戻って来てマイクを手にし
「皆、十分に休めただろうか?
これより合同訓練を再開する」
と威厳たっぷりに言い放つ。
青柳さんにマイクが移ると、彼はスマートフォンを取り出し
「今から電子手帳アプリを開いて頂き、
右下にあります『くじ』を引いて下さい」
私は言われた通りにアプリを見る。
…右下の「くじ」ボタンを押すと、ガチャ画面に入り
レンジャー5初代レッドの像の口からカプセルが飛び出す。
シュールな演出ね…
「うわ…誰だよこんな演出考えた奴…」
「怒られないのかしら…?」
コズミック5のの面々も驚く中、出て来た名前は
「サンダーファルコンのグリーン、鷹野」だった。
ええっ!?鷹野って…あの鷹野!?
私あいつと戦うの!?
(おっ!いい機会じゃん!ぼっこぼこにして痛い目見せてやれ!)
でもあの人って確かフユキと並んで優秀だった生徒よね?
憑依した状態で勝てるかしら?
(大丈夫大丈夫、俺の能力知ってるだろ?
『ストレスを爆破に変える能力』なんだよ
ストレスの素が対戦相手なら負けねえって!)
き、緊張してきた…!
「名前の横にABCと書かれていますが…それは戦闘の順番です
Aの人間は今から準備を始める様に」
私…Aだ!最悪…!今すぐ並ばなくちゃ!
「お、あかりちゃんはAかあ!頑張れよ!」
「無理せんでな」
コズミック5の面々に見送られながら私はその場を後にする。
他の皆はBとCだったんだろうか…
私が並んでいると、鷹野はニヤつきながら
「運命的だねピンクちゃん!俺が勝ったら連絡先交換してよ」
と笑う。
負ける気は一切無さそうな顔だ。
くっそー…!女だからって舐めてるわね!?
「そんな賭けしないわ、こっちにメリットがないもの」
「俺…指導室で緑川と一緒にいた人見てるよ」
「!」
「さっきちょっと聞いちゃったんだよねー!知りたがってたでしょ?
君が勝ったら教えてあげるよ」
「…男に二言はないでしょうね」
私はそう言って彼を睨むと、彼はニヤつきながら頷く。
やってやろうじゃない…!
私は体育館の一角に通され、彼と対面する。
(サンダーファルコンって確か全員電気系の能力者だぜ
あいつの能力も多分それ関連な筈…)
「俺の能力は手から電気を発生させる能力…!
シンプルだけど強いだろ?」
彼はそう言って手から電気を出してみせる。
なるほど…ならあまり距離は詰めない方がいいわね。
何で威勢のいい奴って戦う前に能力言っちゃうのかしら…
(自信があるのかなー…)
「武器の使用はお互い禁止、相手が降参するか膝をついたら負けです
それでは、初め!」
青柳さんのホイッスルと共にヒーロー達は戦闘体制に入る。
鷹野は私ににじり寄り、そのままこちらに走って来た。
…多分…こうか!
私は不慣れながらも能力で爆風を起こす。
そこそこの威力が出て鷹野がふらつくも、
彼は膝を付かずにそのまま向かって来る。
この程度じゃ膝を付かせるのは無理か…何か大きなストレスがないと
普段はどうしてるの?
(嫌いなMetuberとかの動画見てる)
そんなんでいいんだ…
鷹野が電気の帯びた拳を私に振り上げ、放つ
いった…!何だこれ、痺れて上手く動かない…!
(あいつの両手はスタンガンみたいなもんだ、触れさせちゃいけない)
しかしストレス値が足りないのか、爆風の威力が足りずすぐに距離を詰められてしまう。
これじゃ防戦一方、避けるので精一杯じゃない…!
…そうだ!
「ねえ!好きな女性のタイプは!?」
私は避けながら鷹野に問いかける。
「え!?そりゃ…まず、俺に従順」
…
「で、めんどくせー身の回りの事とか全部喜んでやってくれてー」
……
「俺が八つ当たりしても笑顔で癒してくれて
アイドル並に可愛くてー」
………!
「体がエロい子!」
(わー、クズだあ)
私は彼が私に殴りかかって来たタイミングで力をこめると、
怒りを放出するように爆風を放った。
すると凄まじい爆風が彼を遅い、
鷹野は膝をつくどころか体育館の奥の方まで吹っ飛んでいき、
別のエリアで戦っていたヒーロー達は青い顔で私を見る。
「女の敵ね…!」
私は言い捨てると彼の胸ぐらを掴み、
「私の勝ちよ…!言いなさい
誰が緑川と指導室にいたの!?」
と尋ねる。
「芸人の…田村喜助…コズミックイエローが…」
彼は震えた声でそう答える。
…イエロー…?どうして彼が…
そういえば彼の能力ってなんなの?
(…田村さんの能力は超速回復…
言っちゃえば怪我しても人より回復が早いんだ)
それって能力を目の当たりにした事はある?
(あるよ、骨が折れても三日後には元通り)
…なら、彼の能力は関係ないのかしら
(もしかして…田村さんを疑ってる?)
あっ!ああいえ違うの!だってほら、
一緒に指導室にいた人間が怪しいって話だったから…!
(きっと指導室より前に誰かが記憶操作したんだ)
そ、そう…ね。
「Aブロック1-3、勝者コズミックピンク!」
青柳さんの言葉と共に拍手が起こる。
「あのぅ…ピンクさん、俺もう行っていいっすか」
「えっ…ああ、いいわよ」
ピンクさんと来たもんだ、本当に小物ねあいつ…
私はコズミック5の列に戻ると、イエローを見る。
「おっ!お疲れー!どうしたん?俺の顔に何か付いとる?」
あかりには悪いけど…イエローが指導室にいたなら緑川の事について何か知ってるはず
それを聞くくらいの事はしていいわよね…!
「ねえ…さっき鷹野が言ってたの、
『指導室でイエローと緑川がいる所を見た』って…
緑川は指導室から出てから様子がおかしいの、
何か知らない?」
私は真剣な表情で彼に尋ねる。
「えっ…そうなの?」
ブルーが不思議そうにイエローを見る。
この状況じゃ逃げられない…さあ、答えて…!
「…なあ、あかりちゃん…好きな漫画がアニメ化した事ってあるか?」
「え…何、急に」
「ええから」
「あるわよ、何回も…」
「アニメ化が成功する例もあれば…成功しない事もある
成功しないアニメ化の例って何が悪いんやと思う?」
何よ…急に…
「…原作に人気があってアニメ化してるんだから…
原作通りやらかなったから…とか?」
「そう!原作を尊ばないアニメ化は良くない!
やっぱり小説にしたってなんにしたって原作のリスペクトが大事や!」
「…何が言いたい…の?」
「あかりちゃん…君…原作と随分違うよなあ?」
すみません、改稿したの忘れて凄く破綻した箇所がありました、
喜助が嘘ついたのをリリアが知ってる謎の構図になってました。
修正済みです……