戦闘を終えて
「はい!?」
焔の傷を治すのに協力……?
「兄ちゃんのあの火傷、俺も嫌だなーって思ってたんだよね!一緒に消すの手伝ってあげる!どうやって消そうか!?」
凛太郎は子犬のような目で私を見る。
「どうやって」なんてこちらが聞きたいのだが……
待てよ、凛太郎は本当にレッドに似ている。
レッドのフリをされたら気付けないくらいには瓜二つだ。
「ねえ、ちょっとレッドの真似してみて」
「こうですかー?」
凛太郎は穏やかな口調でレッドを真似る。
すごい、本当に見分けがつかない。
「リリア……好きだよ。」
私が感動していると、レッドの真似をした凛太朗が耳元で囁く。
「ぎゃっ!?なななななな……何やってんのあんた!」
「あはは!面白い反応~!でも今の似てたでしょ?」
似てるも何も、レッドがそんなことを言うはずがない。
「真似して何が解るの?」
「……明日の合同訓練、協力者の話じゃレッドが『疲れる』程ハードらしいわ。」
「ええ!?フルマラソン2周でもすんの……?」
「レッドが疲れてる時に……」
『手を上げなさい!この弟がどうなってもいいの!?』
『えーん兄ちゃん助けて―』
「……という具合にあんたを人質に動きを止めて、その隙に回復って流れはどうかしら!?」
「俺は別にいいけど……どうやってヒーロー本部に入るのさ。」
「……そりゃ……『今日と同じ手法』で入ればいいじゃない。」
「え……入館証は?」
「入館証の仕組みは顔認証とパスワードがあれば配られる!顔認証は簡単に突破できるわ、あとはパスワードが解れば……」
「あ!それなら俺解るよ!兄ちゃんのパスワード全部一緒だもん!俺の誕生時間!」
弟の誕生『日』なら解るが、誕生『時間』って……もしかしてレッドはブラコンなのだろか。
「それが確実なら突破できるわ、一緒に入って訓練中は隠れて貰う。
……で、終わった頃を見計らって決行!ってのはどう?」
あくまでも潜入するのは「ヒーロー本部」。
例え一般人が紛れてバレたとしても、子供相手に命を脅かそうとする者はいないだろう。
「いいね!何より面白そうだし!じゃあ俺明日君と合流したらいい!?」
「そうね、朝は一緒に行動しましょ」
「じゃあ連絡先交換しよ!」
凛太郎はそう言ってスマートフォンを差し出す。
彼と連絡先を交換すると、凛太朗はおもむろに携帯を操作して
「ねえ見て!登録名『ハニー♡』にしてみた!
これでリリアと連絡とったら兄ちゃん風船みたいにむくれると思わない!?」
とはしゃぐ。
「ちょっと!変な名前で登録しないで!」
本当に似ているのは顔だけ。
軽いし行動は突飛だし、双子でこうも性格違うものなのか?
「明日はよろしくね、リリアっ」
凛太郎はそう言って無邪気に笑った。
ーーーー
「リリア様ー!酷いですよ!探してたんですから!」
凛太朗と別れた後、私はフユキたちと合流する。
「ごめんね、変なのに捕まって。」
「リリア様、俺凄かったでしょ!?惚れ直しました!?好きになっちゃいましたよねー!」
ナギもゆかりもいる場所で返しに困ることを聞かないで欲しいのだが……
「かっこよかったけど惚れてない!後離れて!」
「そーだよ調子乗んな!」
私とナギに剥がされると、フユキはむくれながら
「でも欲しいなー、勝ったご褒美的なの!
リリア様……ほっぺにチューして欲しいです、俺!」
「はあ!?」
全員が見てる中でフユキが期待の眼差しを向ける。
フユキが頑張ったことは知っているし、ねぎらいくらいはしてあげたいが……キスなんて求められても困ってしまう。
私は少し迷った後、
「まあ……こんなの他国じゃ挨拶よね」
と精いっぱい大人ぶりフユキの頬にキスをした。
ナギはまた「ヒュッ」と声にならない悲鳴を上げ、
レッドはとても冷ややかな顔でそれを見つめている。
唯一、ゆかりだけは「まあ頑張ったしな」と言って苦笑していた。
この学校に入った日の私は、ゆかりが癒しになるだなんて思わなかっただろう。
「えへへ!今日はすっごい特別な日になっちゃったなー!リリア様大好きです!ゆかり君も!」
「わっおい抱き付くな!」
フユキは私とゆかりに抱き着いた後立ち上がると、
冷ややかな眼差しを向けていたナギと焔にも抱き付く。
「二人のことも大好きです!」
「はあ!?何で俺まで…!」
抱き付かれたナギが言うと、フユキは笑顔で
「俺の能力、『かっこいい』って言ってくれたでしょ?能力を見た後であんなこと言ってくれた人……初めてでしたから!
先生は俺のこと強いって言って面倒見てくれるから好きです!」
と無邪気に言う。
先程まで怪訝な顔をしていた二人は顔を見合わせた後、少し照れ臭そうに笑っていた。
よく考えたらこの空間は、「コズミック7」のメンバーだらけになっていた。
推しフィルターを外すと決意したものの、ファンとしてこの光景には涙を禁じ得ない。
……この人たちが、こうやって幸せに笑っていられるように……私が未来をいい方向に進めなくてはならない。
全員が和やかに笑う中、私は決意を新たにしたのだった。




