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凛太朗

凛太朗らしき人間に連れてこられたのは体育倉庫だった。

彼は私をマットの上に突き放すと、そのまま拳銃を構えながら


「いい戦いが見れて満足?」

と言う。


「あなた…誰なの!?凛太朗のフリなんかして…!」


「俺は凛太朗だよ、正真正銘本物…その証拠に嘘を見抜けるだろ?」


彼はケロッとした様子で言う。

なら余計おかしいじゃない!何で彼が銃なんか持ってるのよ!


「な、何が目的で私を拉致したの…?」


彼は私の言葉に少し笑みを浮かべた後

「君を人質にして…俺は明日『合同訓練』に参加するんだ」

と言い放つ。


「合同訓練」…!?しかも私が人質って…!


「最近、兄ちゃんの様子がおかしくってさ

 明らかに元気ないし、

 一時期怪我が減ったかと思ったのに今度はまた悪化して…

 多分『双星』か『ヒーロー活動』

 どっちかが原因なんだろうって思ってたんだけど

 兄ちゃんに聞いても『大丈夫』って嘘つくから…」


うっ…多分それ原因私かも…!

でもこんな状況で素直に名乗り出たら殺されかねないわよね…!


「見た感じ、『双星』の環境は問題なさそう

 …何ならちょっと楽しそうだよねー…

 いいなー!ヒーロー志望の子ってかわいい子多くってさー!」


あ、こいつ凛太朗だわ、間違いない…この銃偽物ね!?


「事情は解ったけどそんな偽物で脅して…!

 言っておくけど私はレッドに嫌われてるの、

 人質としては役不足よ」


「あ、バレた…?そう、これ水でっぽうなんだー!

 見た目は本物っぽくてかっこいいんだけどね」


彼は無邪気に言い放つ。

げっ…水鉄砲!?水を操るあなたが使ったら立派な凶器じゃない!

こいつ…私が知らないと思ってわざと油断させてるのね!?


「あと…多分君は人質として最適だよ

 俺がチューしようとした時兄ちゃんすっごい焦ってたもん

 『俺を合同訓練に連れて行かないと

 リリアのほっぺにチューしちゃうぞ!』

 って送ったら兄ちゃんも合同訓練に俺を連れてってくれる!

 で、兄ちゃんを困らせてるやつを水鉄砲でドーン!と!」


なんというそこそこ怖い計画…!

無邪気に語るもんじゃないわよそんなの…!


でも、この子の計画って兄を思ってこそ…よね


「ねえ、その銃捨ててくれたら…知ってる事を話すわ

 どこか遠い所に置いてくれない?」


私が訪ねると、

「え?こんなのただのおもちゃだよ?何怖がってるの?」

と彼は微笑む。


「お願い…!私が嘘言ってるわけじゃないってあなたなら分かるでしょ」


彼は私の言葉を聞いて少し首を掻いた後、

少し離れた跳び箱の上に銃を置いた。


「…これでいい?話して」


私は自分が異星人であることやレッドとの関係やそれに亀裂が入った事…

彼のけがを治したい事等を全て話した。


「ふんふん…嘘は言ってない…でも何で?

 敵の癖に兄ちゃんの怪我治したいなんて変だよ」


彼は半笑いで言う。


「それは…あいつが強がるから…じれったいだけ

 それ以上に理由なんかない」


私はそう言って目を逸らす。


「何で俺に嘘つこうって思える訳?」


「…何、敵意なんかないわよ…

 私だってこの気持ちががちぐはぐなのなんて分かってる

 彼がこんな事望んでない事だって…

 気に入らないなら銃で撃てば?やろうと思えば致命傷を与えられる筈」


「いいや?俺ってヒーローがどうとかどうでもいいから!

 兄ちゃんの敵が俺の敵でー、兄ちゃんの味方が俺の味方」


凛太朗はそう言ってにっかり笑う。


「…なら…私は敵よ」


私が眉をひそめながら言うと、

彼は真顔になって


「違うよ、立場はそれでも…気持ちや行動は『味方』以外の何者でもない」

と言って真っすぐ私を見た。


「そ…そんな訳…!

 私の裏切りが少なからず彼の今の状況を作ってるのに…!」


「それはそうかもだけど…もっと根底に何か問題がありそうな気がするな

 『兄ちゃんを無理させるよう焚き付けてる人間』がいるとか…

 君、最近まで近くにいたんでしょ?何か知らない?」


「あ…」


私は咄嗟に、「レッドの母親」の顔を思い浮かべた。

あの人がレッドに火傷を「勲章」なんて呼んでるのは

彼との会話でも察することが出来る。


「何?誰かいた?」


凛太朗は目を輝かせて言う。

…でも言いにくいよ…あの人ってこの子のお母さんでもあるんでしょ…?


私が黙りこくっていると凛太朗は

「いいよ、言えないならそれでも…でもいいの?

 早くしないと君が兄ちゃんの事好きってバラしちゃうよ?」

と意地悪な笑みで言い放った。


「は!?今までの話聞いてて何をどう勘違いしたらそんな話になるのよ!」


「いや…勘違いじゃないっしょ、誰が聞いてもラブだなって思うわ」


ふ、ふざけないで…!そんな情報を流されたら…恥ずかしさで死ぬ!

やっと最近レッドとの決別が出来そうなのに…!


「わ、わかったわ…!貴方のお母さん…

 レッドの母親が、怪しいと…思う」


私が言うと彼は目を丸くした後に、何処か腑に落ちた様な顔をする。


「続けて」


「…私が彼の手当てをしてた時…彼女が焔に抱き着いて

 『傷だらけの焔はかっこいい』って言ったの…

 きっとあの火傷を『勲章』なんて言ってるのもあの人だと思う…」


私が恐る恐る言い切ると彼は怪訝な顔をして少し考えた後

「うん、嘘は言ってないみたいだし俺も…心当たりがある

 だから信じるよ、兄ちゃんを焚き付けてるのは多分母ちゃんだ」

と言い切った。


「…それで、どうするの?双星にもヒーロー本部にも原因は無いわけだし

 私は解放して貰えるわけよね?」


「まだ駄目!」


彼は私に近付き顔を覗き込むと

「俺も…兄ちゃんの傷を治しちゃおう大作戦に参加する!」

と言って笑った。

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