立場逆転
駅を抜け、学校の前まで行くと
見覚えのある金髪の少年が誰かに絡まれている。
「あれ…縁くん?」
フユキが呟く。
「なあゆかりくぅーん、あんなにイキっておいて最近大人しいじゃん?どうしたのよ」
「俺たちに散々威圧してたのにコズミックレッドに負けてから子猫ちゃんみたいだよなあ?」
あれ…ゆかりの周りにいた取り巻きじゃない!
最初あんなにヘコヘコしてた癖に…!あー!割って入りたい!
でも、ゆかりは多分私なんかより強いんだし
変に介入しちゃダメよ!我慢して…!
「何だよあんたら…俺が負けたのはレッドであってあんたらじゃないぜ」
「生意気ー…なあ、ちょっと殴ってみねえ?
今のこいつなら何も言わないんじゃねえの」
「それな、真白の時こいつがしゃしゃって来たせいで鷹野先輩も俺達もひでぇ目に遭ったし
1発入れたいと思ってたのよ」
まるで初めて出会った日を繰り返してるみたい、
立場は虐められる側に回っちゃったけど…
元取り巻きは大きく振りかぶると、
ゆかりに拳を降ろそうとする。
私の身体が動く前に「白い閃光」が走ると、
それが取り巻き達を吹き飛ばした。
…フユ…キ?
残りのいじめっ子も為す術もないままフユキに蹴り飛ばされ情けない声を上げる。
「フユキ!何してるのよ!」
私は咄嗟に彼の元に駆け寄り、
蹴られた取り巻きの方を見る。
元取り巻き達は勢いよく壁に衝突したのか
気を失ってしまっていた。
「冬樹…お前…何で…」
「ゆかり君が…やり返さないから
こんな奴らより強いのに…」
彼はそう言って拳を握る。
「大丈夫、手加減したし…
特に大きな怪我はしてないと思う」
「そう言う問題じゃないだろ!
お前『あの時』と同じ事になってるって解ってるのか!?
大事になったらどうするつもりだったんだよ!」
「だから!」
フユキは大きな声で言ったあと
「…だから…
俺を遠ざけるの…?
俺が…あんな事したから…」
と言って悲しい顔でゆかりを見つめた。
「…!」
なんの話しだろう?
何だかフユキの雰囲気、いつもと全然違うような…
もしかしてこの前縁が言ってた「事件」と関係あるのかしら?
ゆかりは彼をしばらく見つめた後
「…悪かった、助けてくれてありがとう」
と言ってその場を去った。
「…どうする?この横たわっちゃった人…
ナギさえ良ければあれ使う?」
「いいよ勿体ない…転がして置けばいいだろこんな奴ら
…フユキ、行くぞ」
ナギが言うとフユキはしばらく黙り込んだ後に
「…ナギくんは…気持ち悪くないんですか?
俺の事…
一瞬で人も建物も粉砕しうる力
こんな俺の事…ゆかり君はきっと…」
「は?別に
どういう能力か知らないけど
多分火力系だろ?
…ちょっと…いいなって思うけどねっ…」
ナギは上ずった声で言う。
「え?」
「だって凄い映えるじゃん!
さっきの蹴りも能力使ったんだろ!?
ドッカーンって感じでかっこよかっ…
こほん、ヒーローには向いてると思うけど」
ナギは途中で上がったテンションを抑えるようにニヤけるのを我慢しながら冷静に言い放つ。
「かっこいい…?俺の能力が…?」
「お前も知ってるだろ、俺の能力」
彼はそう言ってフユキの肩に触れると彼の身体を蛇のような黒い痣が這い出す。
「ぎゃっ!それ嫌い!やめてください!
いでででで!」
ナギに生命力を吸われたのか、フユキは苦しんでいる。
「俺の能力、不気味だってよく言われるし
家族にも嫌煙されてる…
お前の能力の方がかっこいい分マシだろ」
ナギが淡々とフユキに言うと、
フユキは少し涙目になりながら
「一緒です!俺も親に気味悪い能力って言われました!
なーんだ、ナギくん俺とお揃いですね」
と言って抱きつく。
「抱きつくな!生命力全部吸うぞ!」
「俺のは中々吸いきれないですよー」
…なーんだ、険悪かと思ってたけど
アニメの時と形は違うだけで仲良しなんじゃない…ちょっと安心した。
私は、入学した日を思い出してふと校門の方角を見る。
…何期待してるんだろ
…馬鹿みたい…。
何かを振り払うように、フユキとナギに続いて教室へと向かった。
エピソードが溜まって来たので多分また朝と深夜で2回投稿すると思います!