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2人目の告白

「緑川が連絡をしなかったのは『負い目』があったせい。

シノの能力を使われると都合の悪い事があったのよ。緑川の離反の理由は……とある少女を『ヒーローにしたくなかったから』」


「ヒーローにしたくなかった……?」


「まあこればっかりは想像だけど……惚れたんじゃない?」


私があっけらかんと言い放つ様を見て、ウリュウと緑川が同時に咳込む。


「はあ!?違うって惚れてない!誰があんな頭の中お花畑の女……!」


緑川は焦って訂正しようとするも、その動揺は明らかだった。


「まーじー!?視察先の女に惚れて組織裏切ったのお!?ばっかじゃーん!」


ウリュウは緑川を指さしてゲラゲラ笑う。

緑川は耳まで真っ赤になっていた。


「でもそんな事情がバレでもしたら裏切者として粛清される、だから言えなかった……ここまでがそいつの連絡できなかった理由。」


「ユウヤ君映画の主人公みたーい!ぎゃはははは!」


「笑うな!死ね!」


緑川の軽口にナギがギラっと睨む。


「ああ……すみません口には気を付けます……」


「でも!言ったでしょ?緑川は『現状』は裏切り者。でも近い将来そうじゃなくなる可能性がある」


「君の夢物語みたいな『ヒーローを味方にする』作戦の事か?」


「味方まで行かなくとも、実際組織はヒーロー達と敵対しない方向に舵を取り始めている。

これって単なる夢物語?夢が現実になりかけてるって思わないかしら。」


「……それは思わないけど……確かに『敵対しない方には動いている』ね」


「あと1週間と少し……待ってくれれば、緑川は単なる裏切り者じゃなくなる。寧ろこことヒーローサイドを繋いでくれるいいカードになり得るわ!

捨てるのは惜しい、チャンスを与えない?」


「君って……口が上手いよな。詐欺師でもしてた?」


「失礼ね!進学校育ちで頭がいいだけよ悪い!?」


「なるほど、確かに……ミカゲ君がトップになってヒーローに滅ぼされるくらいなら、表面上は仲良くするに越したことはないし……

その中に身内がいるなら多少安心はできる。懸念すべきはそれが『ユウヤ君』だってこと。

恋に浮かれて裏切るような人間を再度信用するかはかなりのネックだ。」


「私もそれには賛成、ただで信用するのも違う気がするわね。」


「え」


裏切られたと言わんばかりに緑川が私を見る。

当たり前だ、何のお咎めも無しに現状を乗り切れる訳が無い。


「もう一度、別のミッションを与えて役に立つか見るのはどう?そこで貢献すればもう一度雇ってやればいい。」


「まあそうなるよね。下手したらヤバそうなきつめの任務でもさせるか。

……例えば……今、君はヒーロー本部の分断を狙っているよね?でもヒーロー本部の『中核』でも覗きに行かない限り本当にそれが実現可能か解らない……ユウヤ君、それを実行することって可能?」


「合同訓練の日にトップと役員、ヒーロー達が集まるからその日上手く接触できれば或いは……」


「それっていつ?」


「丁度3日後に実施されるよ。」


「双星襲撃前か……リリア」


「はい!?」


「ヒーロー側に味方は?」


「ひ、一人だけ、それっぽい人が……」


「じゃあ決まり、協力者とリリア……緑川の3人で中核を探っておいで。」


ウリュウが笑顔で言う。


「え!?でも私はお姉ちゃんが……」


「大丈夫!ナギ、ユウヤ君の手を握ってみて。」


「え……どうしてですか!?」


「いいから」


ナギが恐る恐る緑川の手を握ると、ふらっと体を項垂れさせた後に

顔を上げ、うさん臭い笑みを浮かべた。


「どうもー!ハイパー美少女ナミちゃんでっす!」


あれ……!?ナギなのに……知性が感じられない……!?


「リリア……俺、リリアの事が好きなんだ!愛してる!付き合おう!」


付き合う!?ブラックが私と!?


「ええ!?ななな……なにを急に……!」


「……安心して、本人の言葉じゃないよ。今ナギにユウヤ君が憑依してるんだ。

ほら、ユウヤ君の方は抜け殻みたいに寝ちゃってるだろ?」


本当だ、まるで人形みたいに眠っている。


「ユウヤ君は自分だけじゃなくて他人に他人を憑依させることもできる……

でもそれには憑依先の協力も必要だから……君のやる事、解るよね?」


ウリュウがそう言って微笑む。

つまり……私の任務は、あかりの説得及び

あかりに憑依して合同訓練に潜入すること……!

あまりの重大な任務に、やる前から私の胃は少し痛んでいた。


ーーー


緑川はウリュウに回収され、私はやっと嵐が去ったと一呼吸置いていた。


「大丈夫?今回もリリア任せになっちゃったね。」


「いいえ、ナギがいなかったら緑川の捕獲すらままならなかったし……」


それにしても今日のナギの雰囲気は、いつもと全然違って見えた。

きっと本来の彼はあんな感じで真面目に任務をこなして来たのだろう。


「……リリア」


ナギは私の名前を呼ぶと顔に触れる。


「……ほあ!?」


()()のせいで大分顔色悪くなってる気がして……ねえ、無理してない?

生命力を誰かの為に使いたいって言うのは解るんだけど、それでリリアがまた倒れたりしたら……俺……」


ナギは真剣な顔で私を見る。

今日は顔が隠れていないこともあってか、心臓が太鼓のように鳴っていた。


「だ、大丈夫に決まってるじゃない!無理なんかしてないわ!」


私が笑顔で言うと、ナギは私を壁に追い込み私の右手を握る。


これって壁ドン……!?推しの壁ドンだあ……!


「リリア……」


ナギの顔が近くなると、私は思わずぎゅっと目をつぶる。

このままでは、また尊みで気絶してしまう……!


すると、突如体が暖かくなるような感覚に覆われ、再び目を開けた。


「……?」


「さっき緑川から吸い取った分。

あげるって言っても嫌がられそうだったから……ごめんね、怖がらせた?」


「い、いえ……」


怖くは無かったが、心臓が爆発寸前だ。


「リリア、いつも俺に助けてって言ってくれないし相談もしてくれない……

不安だよ、すぐ無理するんだもん。あんまり安易に大丈夫って言わないで、俺のこと……もっと頼ってよ。」


ナギの真っ直ぐな眼差しが私に刺さる。

至近距離でそんな顔をされたら……顔から火が出そうになってしまう!


「あの……そう……ね。

実は結構疲れてるし……その、幻滅させたくないから言えなかったんだけど」


私はそのまま、レッドの手伝いの事やその顛末を話した。


「レッドに正体がバレた!?」


「そうだ、またウリュウ様に言いそびれた……私殺されるかしら」


「ピンクが仲間になったならプラマイゼロって感じかな……?

でも避けようの無かった事だし怒らないと思うよ。

……今はその報告、しない方が良いとは思うけど。

夜ぐらいに言えば解ってくれる…多分?」


ナギは少し苦笑いで私に言う。

ああ、呆れられてしまったような気がする……


「それよりひどいね、レッド先生。

リリアを連れ回しておいて異星人って解ったら突き放すなんて」


「ち、違うの!焔はヒーローだから仕方なくて……!」


私は言いかけてはっとする。ナギは私を思って言ってくれているのに、何をやけになっているのだろう。


「……ごめん……」


私がナギの顔を伺うと、その表情は少し険しい。

怒らせただろうか?


「リリア……」


優しいナギからどんな言葉が飛んでくるか解らず、思わず身構える。


「俺……リリアの事が好きだ。」


「……え……」


しかし唐突に放たれた予想外の言葉に、私は理解が追い付かず硬直した。

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