表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/137

本物

「あーあ、のぼせてんじゃないぞリリア。君なんか僕達からしたら子供、ぺーぺー。

どっからどう見たってただのちんちくりんなんだから」


ミカゲを見送った後にウリュウが言う。


「別にのぼせてないわ……あなたも帰ったら?用は済んだでしょ」


私がそう言って部屋に戻ろうとすると

「……何かあった?顔色悪いぜ」

ウリュウがそう言って私の腕を引き寄せる。


「……前から思ってたけど、君……普段からかなり疲労してるよね。

何度か倒れてるみたいだし、ちゃんと寝てる?変な物食べてない?」


その言葉に使用人たちがぎくりと体を揺らす。

もしかして……心配……してくれているのか?


「だ、大丈夫よ!毎日高級食材のフルコースなんだから!前からこんなもんだったでしょ、気にしないで。」


私がウリュウの手を振り払うと、彼は

「無理すると良くないぜ

 しばらく休んだら?」

と言う。


ウリュウが「休んだら?」などと声を掛けるなんて……!


「ま、まさかあなたも転生者に乗っ取られて」


「違う、人の好意を疑いやがってやなかんじ。帰って来た時から暗い顔してたから心配してやったのに。

ま、いいや……次は倒れる前にしっかり休めよ」


ウリュウはそう言って屋敷から出て行った。


あの男、優しいところもあるようだ。


ーーー


夜、私は色々と考えていた。

勝手にゲームの景品扱いされた事、ホワイトの告白、明日緑川と食事に行く事、

焔に拒絶された事……


そうだ、焔に正体ばれた事をウリュウ様に報告できていない。

私は明日あたり殺されるのかもしれない。


そういえば……ピンクの名刺。

ここに連絡したらあの話の続きができるのだろうか?

もしかしたら味方になってくれて、私が死ぬ未来を回避できるかもしれない!


私はうっすら期待しながらピンクに電話を掛けた。

すると、3コールもしない内にピンクが出る。


【もしもし……もしかしてリリアちゃま?】


ピンクが電話越しに尋ねる。

もしかして、今日の事が心配で電話待っていたのか?


「そう、夕方ぶりねピンク」


【あかりでいいよ。大丈夫だった?その後は】


「も、もっちろんよ!私があんな事で落ち込むわけないでしょ?……ね、ねえあかり……夕方の話の続きをしたいの。」


【続き……?】


私は再度、彼女にヒーロー本部を分断して

まともなヒーローを味方に引き込みたい事を話した。


【そういえば言ってたなそんなこと……今んとこの成果は?】


「0よ。グリーンに声を掛けたけど義理があるから今は無理だって……」


【あはは!あの人らしい回答だな。

じゃあ俺が仲間に入ったら初のお仲間?】


「そう、なるわ」


【勿論って言いたいとこだけど……

今日の焔君見ちゃうと即答しづらいねー……

俺、仲間たちの事結構好きなのよ。誰かが残るくらいなら首を縦に振れない】


そうよね、今のヒーローの中で一番説得が難しそうなのは意外に焔かもしれない。

今日の様子を見る限り、ブラックホール団の信用を勝ち取るのが困難なように感じてしまう。


【でも、全員引き込めるなら手伝うぜ!

……君の言う通り、ヒーロー本部の動きは少し妙だ。

ヒーロー本部以外にも、ヒーローが免許を取って出動してる場所は無くはない。

あくまであそこが最大手ってだけの話。

独立して好きにやれるんなら悪く無いとは思ってる】


「……じゃあ!味方にはまだなれないけど、

全員の説得を手伝ってくれはするってことよね!」


【そういうこと!】


要するに、かなり味方寄りの人間が増えるってことだ。

しかも同じ転生者……これは頼もしい!


「ありがとうあかり!一生恩に着るわ!」


【おいおい、まだ味方にはなってないからな?

まあ今日の事にもちょっと責任感感じてるし……なあ、一応聞くけどさ。

焔君と付き合ってたわけじゃないんだよな?】


「つ……!?馬鹿じゃないの!?ただの友達!」


【お、オーライオーライ…解ったよ

 そんじゃ明日も学校だろ?

 ゆっくり休めよ、君慢性的に疲労してるように見えるから】


ピンクはそう言って電話を切った。


これで少しでも生存率が上がったらいいのだが……!


★ ★ ★


来てしまった、緑川との食事の日。


焔の所には……寄らなくていいだろう。

授業では普通だったが、今更個人的に付き合いたいとも思っていない筈だ。


何故か学校に居ることに対して何も言われないだけでも感謝しなければ。


「ナギ!一緒に帰りましょ!」


「うん……」


ナギは少し複雑そうに肩を落とす。


「何?緊張してるの……?あなたらしくもない」


「緊張って言うか……まあいいや、ちょっと早いけど行こう」


ナギはそう言って歩き出すと、更衣室の前で止まり

「ぜっっっったい、笑わないでよ!」

と言う。


「え……ええ……?」私が苦笑いで返すと、ナギは30分程で出て来た。


「ほわ!?!?」


彼の姿はどこからどう見ても美少女……

顔面大優勝、ウリュウ顔負けの可愛さで出て来た。


ブラックの女装……!?

しかも服装は地雷系ファッションなのもいい!


こんなもの、本編じゃ見たことが無い…!無料で見ていいのだろうか!?

まずい、また気が遠くなる…!


「う……変じゃない?たまに任務で女装が必要になる時があるんだ。でも俺、これ苦手……」


「か、可愛いわ!世界一!自信もって!!」


私は彼の方を持ちながら大声で言う。


「ああ……今目立つのは流石にやめて!皆見てるから……!」


こんななは可愛かったら私の大声に限らず目立つに決まっている。

ああ、私はきっと今日の為に転生したのだ。

その点はリリアに感謝しないといけない!


学校から出て待ち合わせの駅に着くと、程なくして緑川がゆっくり到着する。

堂々の10分遅れ……この男、大物だ。


「やっほ~!リリアちゃん!今日も可愛いねえ。あ、隣の子はお友達!?えー!いいじゃんいいじゃん!

系統違うけどイケてるー!ね、連絡先教えてよ!」


「……遅刻に対する謝罪は。」


眉毛をひく付かせながら、高い声でナギが言う。


「え?ああ、ほんとだ結構遅れてんね!

ごめんごめん!食事奢るから許して、ね?」


「そういえば行く店はあなたが決めたんだっけ?」


「うん!可愛い子とは雰囲気のいいお店で食事したいじゃん?」


そう言って連れてこられたのはモダンな雰囲気の綺麗なカフェだった。

確かにいい趣味をしている。


「何でも好きな物食べていいんだよ?

俺、リリアちゃんみたいな可愛い子大好きだから」


席に着くなり緑川がそう言って笑う、

ナギはあともう少しで爆発するんじゃないかという様子で震えていた。


まずい、この2人の相性はあまり良くないみたいだ……


「あれ?なんか具合悪そうだね彼女。

君のお名前も知りたいなー、何て言うの?」


「黒峰ナミ……」


「ナミちゃんかー!可愛い名前だね!

君も遠慮せずたくさん頼んで!」


緑川はナギが彼にイラついていることなど知らない様子で

メニュー表を差し出す。


「じゃあこの高級フルーツ全部乗せパフェと欲張りフルーツ盛、マスクメロンのオリジナルジュース、高級チョコレートガナッシュ……」


「え?待って待ってそれ全部頼むの……?」


私は二人のちぐはぐなやりとりを見てため息を吐いた。


注文が終わり待ってる時間、私はずっと聞きたかった事を切り出す。


「あの……緑川さんって何で学校休んでコズミックグリーンになろうとしてるんですか……?」


「え?憧れてたからじゃない?そこに深い理由なんてないよ!コズミック5って大手じゃん!

だから入ったらモテちゃうかなーくらいの事しか考えて無いけど」


と、緑川はあくまであっけらかんと答えた。


そんな理由……?組織を裏切っておいてモテようとしているなんて浮かれた奴だ。

私はナギと目を合わせ、静かに頷く。

こいつだけは何があっても許してはいけない。


緑川を鋭く睨んでいると、

「お待たせしましたー!……あれ?」


という声と共にドリンクが運ばれてくる。

ウェイターの顔を見て、私は驚愕した。


……佐伯若葉……!

本来コズミックグリーンになる筈だった人物だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ