表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/40

増える味方

朝になって、私は絶望する。


「リリアのままじゃない!」


どうなってるの!?いつになったら覚めるのよこの夢!


「また訳の分からない事言ってるわあの方」


「頭おかしくなったんじゃない?」


そしてまだまだ嫌われている…!


「あなた達!主人に向かってその口の利き方はなんですか!」


「キアラさん…!?な、何よ怖い顔して」


「行きましょ!」


キアラさんがメイド達を注意すると、

彼女たちはそそくさと何処かへ消えてしまう。


「使用人がとんだ御無礼を…身支度、手伝います」


彼女はそう言って頭を下げると、私の着付けを手伝ってくれた。


「ありがとう…

 あの、何で助けてくれたんですか?」


「…貴方様の昨日の立ち振る舞いに感激したからでございます

 あれでこそグレイシャ家の者の姿であると…

 そう思いました」


「私のお姉様は違ったの?」


「彼女は彼女で素敵な方でしたよ

 …しかし、裏切者の話をしたって仕方が無いでしょう

 さ、できました」


キアラさんはリリアの姉を心から憎んでいる訳では無いのか…

私は彼女にお礼を言うと、堂々とした様子で部屋から出る。

すると、廊下を歩いている最中に割れるような頭痛が襲った。


「-っ」


『リリアはお姉ちゃんには勝てないの』


焼けるような心臓の痛みに、限りない恐怖心と不安感が押し寄せて来る。

誰の声?リリアの物じゃない…「真理愛」の関係者でもない。

リリアの…姉の物?


「リリア様!?大丈夫ですか!?」


何なのよこれ…!


「あなたたち!ウリュウ様の所にリリア様を運ぶわよ!」


「は、はい…」


酷い痛みで意識を失ったかと思うと、

目が覚めた時には病室のような場所で眠っていた。


「やあ」


…ウリュウが私の顔を覗き込む。


「げっ…」


私は顔を近づけて来る彼に思わずそう声を上げ離れてしまった。


「げっとはご挨拶だなあ、こっちは君を治療してやったっていうのに」


そういえばこいつ医療班のトップなんだっけ…

変な解剖とかされてないわよね!?


「聞いたよ?君、就任式の前日に階段から落ちたらしいね

 その後遺症かもしれないから暫く激しい運動は控えときな」


「…そう言えば…リリア様、

 あれから少々記憶もおかしいように感じました

 いつも着ている服の着方が解らなかったり…」


「おやおや、それは心配だ

 頭の中も診てあげようか?」


「ひっ…!結構ですわ!階段から落ちて一時的に記憶が錯乱することなんて

 誰にでもある事でしょ!」


「えー?ちょっとわかんない

 それに僕は君の記憶もそうだけど態度の変化が気になるなあ

 ちょっと前に会った君は僕を見たら顔真っ赤にして目を逸らしてたのに

 今じゃ軽蔑の眼差しで見てくるもん

 まるで別人が憑依しているみたいだ」


使用人達が心当たりがあるかのように顔を見合わせる。

当たり前じゃない、私はリリアじゃないんだもの!

でもこの人達に説明出来ることなんて無いし、誤魔化すしかないわ。


「悪役令嬢3日会わざれば刮目して見よと言う言葉を知りませんの?

私は成長期なので精神年齢が育つのも早いんですわ!」


私は強気にウリュウに言い放つと

彼は大笑いしてから


「君って面白い奴だな」

と言った。


ウリュウに「また頭が痛くなったらおいで」と言われ私は医務室を後にした。

何とか誤魔化せたのかしら?

あの男意地が悪いだけじゃなくて感も鋭いみたいね、気をつけないと!


「リリア様…」


少し遅れて特訓場に赴くと、ナギが心配そうに立っているのが見えた。


「ナギ!ごめんなさいね待たせてしまって」


「いえ...その、聞きました

体調が優れないらしいですが大丈夫ですか?」


「勿論!さあ、特訓を始めましょ!」


ひいき目なしに、彼の学習力はかなり高い。

教えた事はすぐに身につくし運動神経もかなり高いらしく

こう動いて欲しいと指示すればその通りに動くことも出来た。


過度な期待はしてなかったつもり。

でもこの吸収の速さと運動神経があれば、

能力を使わなくてもウリュウの部下に勝てるかもしれないわ!

悔やまれるのは能力が戦闘じゃ使えない事くらいか…


「見て…?あの包帯リリア様がやったんですって」


「恐ろしいわ」


ああ、そっか忘れてた。

そう言えば私ナギを一晩中痛めつけていた事になってるんだっけ?

皆私と彼があんなに楽しく話していただなんて想像もしてないんだろうなあ。


その日は、ナギの疲弊が見えたあたりで私は訓練を切り上げる。


「よく頑張ったわね、休んでいいわよ」


私がそう言って彼にタオルを差し出すと、彼は複雑そうな顔で俯く。


「何?暗い顔して!いい感じに強くなってきてるわ、自信を待ちなさい!」


「いえその…そろそろこの訓練の時間が

 無くなるんだと思ったら寂しくなってしまって

 あの…もし…俺がリリア様を裏切ったら…どう思いますか?」


「…何よそれ?あなたは裏切ったりしないわ」


「それでも満に一つ裏切ったら…俺を許してくれる?」


真剣な顔で彼は訪ねる、その声は震えていて、

眼差しは私を試すかのようだった。


何よ…それじゃあまるでこれから裏切りますって言ってるみたいじゃない。


そうね、ブラックに裏切られたらそりゃ辛いけど、

何の意味もなく人を傷つける人には見えないし…


「私…あなたの事を友達だと思っているの」


「…うん」


「そのあなたが私を裏切ったのだとしたら…きっと理由がある筈

 だからその理由を突き止めてもう一度あなたと友達になるわ」


ふふ、これはアニメ9話で

ホワイトがブラックに投げた名セリフ!

一度使ってみたかったのよねー!

こんな所で使うタイミングが現れようとは!


私に言葉を投げかけられた彼は鼻を赤くして悲しそうに再び俯いた。

様子が変ね…どうしたのかしら?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ