リリアの記憶
『レッド様が、私の能力が暴走した時凍えて動けないのを暖めてくれたのよ。だめね、あの人は敵なのにこんな……』
そうか、アニメでのリリアの人生において、この潜入のイベントを通らなかった訳が無い。
リリアは……焔に惚れていた?
場面は切り替わり、焔とリリアが二人でいる所が見える。
『ねえレッド様……もし……もしよ?私が異星人だったら……私の事殺したいと思う?』
試すように尋ねるリリア。
でも私は半ば確信していた、焔ならきっと否定してくれる。
『殺したいとは思わないけど、戦わなきゃいけないだろうね。』
リリアと共に、私の心までもが裏切られたような気持ちで満たされる。
……焔は……私が異星人だと分かったら……
敵に、回ってしまう……?
『リリア、今度『ネメシス』が双星の行事を襲撃するらしい。
僕らもそれに乗じて双星を襲撃することになったよ……緑川の件でお上はかんかんでね。』
ウリュウ……?なんでそんな悲しそうな顔してるの……?
『嫌よ!やりたくない……!何で私がレッド様と戦わなくちゃいけないの!』
ナギがリリアを慰めている。
もしかたらリリアは、この頃までは普通の女の子だったのではないだろうか。
また場面は切り替わり、学校の屋上で炎に囲まれたリリアがいた。
『レッド様……!やめて!私は貴方と戦いたくありませんの!』
『俺だって嫌だけど……君は、敵だから。』
焔の冷たい視線が突き刺さる。
リリアは一生懸命彼の攻撃を防いでいるうち
……彼に重症を負わせてしまった。
『違う……!違うの!いやあ!あなたが私を殺そうとしたから……!どうして……お姉様の事もあなたのことも、愛してたのにっ……!』
『リリア様との戦闘でレッドは顔に大火傷を負ったらしい。
流石グレイシャの娘、やる事が残酷だな、次回から幹部補佐会議にも招いてみよう。』
……やめて……もう、見たくない……
また、場面は切り替わる。
ぼやけていた今までの景色とは別の、まるで現実のような光景……
息の薄いレッドが、リリアの膝の上で呆然と彼女を見る。
『顔の火傷のお陰で……女子も寄り付かなくて散々だったよ……』
『……嘘よ、貴方の支持者が多い事は知ってるわ。自分から遠ざけていたのでしょう。人のせいにしないで下さいな。』
『バレた……?俺、結構一途な男……だから……っ』
『……寒いわよね……熱いのが嫌いなあなたが凍えながら眠る様に死ぬなんて滑稽ですわ。』
……突如、レッドの顔の上に大粒の水滴が落ちる。
『嫌よ……レッド、死なないで……』
リリアの震えた声を聞いて、レッドは微笑むと……静かに息を引き取った。
……こんなシーンを、私は知らない。
アニメでは、ホワイトが戻った頃にはレッドの息はなくて
氷の花の中に囲まれて、眠るように亡くなっていた筈。
やけに手厚い弔いだとは思ってた、
……そうか……リリアは……
『ーやり直したい』
誰かの声が響く。
……リリアの、声……?
『やり直したい……!』
……
私は、そのまま目が覚めた。
約束の時間よりかなり早い、寝坊することにならなくて良かった。
さっき見たのは、きっとただの夢。忘れなければ。
気付くと、頬が濡れてる。
原作のリリアは、今どこにいるのだろう?
気の強かった彼女が、他人に人生を乗っ取られるなんて許せないはず。
少しだけ……リリアと話してみたいと思ってしまった。
ーーー
私は呼び出された時間になると、
恐る恐るウリュウの部屋の扉を叩いて中に入る。
彼は特に変わった様子もなくいつもの天使の笑みを浮かべていた。
「あ、あのー……話って何かしら?ウリュウ様。」
私が訪ねるとウリュウは笑顔で一言
「リリア、幹部補佐会議に出よう」
と言った。
なんだ……緑川のことでも焔のことでもなかったのか。
しかし会議に出る…?私は出る事を禁止されている筈だ。
「出たいのはやまやまだけど、私出ちゃ駄目って言われてるのよ。」
「そこなんだけど……この前のリリアのヒーロー本部のメモ、お上に見せたら好評でね。
内容が評価されたっていうよりは、気概を買われたって感じなんだけど……
明日の会議には出て良いって事になったから出席しようか。」
「え……!」
ウリュウが私の為に上司に掛け合ってくれたというのだろうか。
とてもじゃないが、信じられない……!
しかしこれはチャンスだ!内部に関わることができればこの組織が破滅に向かいそうな時軌道修正ができる!
「その代わり、君が会議に出る時は僕も同伴しないといけない。ずっと一緒にいれてうれしい?」
嬉しくないに決まっている。この男、私が嫌がっているのを知りながら言っているに違いない。
「でも仲間外れよりはよっぽどマシだろ?出たくないなら無理に出さないけど。」
「も、勿論やるわ!やらせて!」
「じゃあ明日、俺の部屋に同じ時刻に待ち合わせしよう。……あ、先に言っておくけど」
「な、何?」
「ミカゲ君に色目使ったら殺す」
「……は!?」
ーーー
会議当日、私はウリュウに連れられていつもは通らないような基地の深部へ入っていく。
とても緊張する、しかしミカゲに色目使ったら殺すとはどういう意味だったのだろう?
ミカゲは確か男だった筈。なら、もしかしてウリュウは私に色目を使って欲しくない……つまり、嫉妬してるという事では!?
上司に掛け合ったりもして……もしかしてこの男、私の事が好きということはないだろうか?
私がそんなことを考えていると、重たい扉が開き補佐達の顔が見える。
……前から思ってたがこの組織、本当に美形が多い。
戦闘員やうちの使用人ですら美男美女揃い、そして幹部補佐達の顔も非常に整っている。
ヴィラン萌えの人間がファンの中にも一定数いたが、
確かにこんな美形揃いなら人気が出てもおかしくない。
……知らない顔もいるが、見覚えのある顔がそこには並んでいた。
彼らの最後までしっかり覚えている。なんだか複雑だ……
私が周りを見渡していると、
1人の男が私を見るなり立ち上がり、こちらに歩いてきた。
「お久しぶりです、リリア様」
彼はそう言って私に跪くと手にキスをした。
黒曜石のような黒髪に鋭いつり目、アニメではメガネなどかけていなかったと思うが…間違いない。
こいつがミカゲ……!後にこの組織のボスになってヒーロー達と敵対する男!
作品添削中な為まだ前後のおかしい部分があるやもしれないです、
ご不便お掛けしております。