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守りたい

どうして「終わった」と感じているのだろう。

焔はもう私とプライベートでは会ってくれないだろうし、きっと学校でも距離が出来る、そんな気がする。


……やだ……なんで泣いてるのよ、こんなことで

これじゃまるで失恋したみたいじゃない……!


私が涙を拭っていると、扉の開く音が耳に入る。

顔を上げると焔がドリンクを持って唖然としていた。


焔は冷静にテーブルにドリンクを置くと、私に向き合って膝をつき顔を覗き込んだ。


「また泣いてる……会う度泣くよな、君」


「焔……帰ったんじゃないの……?」


「ドリンク取りに行っただけだよ、もしかして俺が帰ったと思って泣いてたの?」


「う……!」


なんて紛らわしい、

ドリンク取りに行くのならそう言ってくれれば良かったものを。


「リリア、何でもするんだよね?」


「え、いやその……!」


「目閉じて」


私は言われた通りに目を瞑ると、おでこに焔の唇らしき物が触れた事に気付く。


え……?今……


「俺、こういうのしてみたかったんだ」


焔はそう言ってまた無邪気に笑う。

女子を遠ざけられてきた反動だろうか……?

あの女っ気を微塵も感じさせなかったレッドが、宿敵のリリアにキスをするだなんて……!


「リリア顔真っ赤!泣くのか驚くのか照れるのかどれかひとつにしなよ。」


「だ、誰のせいで……!」


「緑川君の時より俺の時の方が顔が赤いから、俺の勝ちだね。ほら、涙拭いて?時間まで歌おう!」


焔はそう言って私にハンカチを差し出した。


「なんでさっき……距離取ろうとしたのよ。」


私が涙を拭いながら言うと、焔は一瞬驚いた顔をした後

「もしリリアが俺の事好きになっちゃったら可哀想だなって。」

と言う。


「はあ!?」


「俺に告白してくれた子とかと遊びに行った時とかさ、母さんが凄い付き纏っちゃって……親の仕事は、とか…持ち家か、とか、凄くやな事ばっか聞くんだよ。それで一緒にいた子に」


『ごめん、全然楽しくなかった』


「って言われちゃった事があるんだ。

だからもしそういう関係になったら……俺のこと嫌いになるかもって。」


あの母親、傷を心配しないどころか過干渉までしているとは。

焔のことをなんだと思っているのだろう?


「調子に乗らないで!私はあんたに惚れたりしないわ!

……でもそんなことで嫌いになったりもしない……」


「俺が帰ったと思って泣いてたくせに」


焔はそう言って楽しそうに笑う。


「あれは……!め、目にゴミが入ったの!」


焔はずっと親の事に悩んで来たのだろう。

こんな若いうちからヒーローとしてやって来ただけでもすごいのに、

一番身近な大人からの圧力にまで耐えなければいけなかっただなんて、

想像していた以上に彼は苦労人だっようだ。


こんな感情おこがましいし、立場的に抱いちゃいけないのは解ってるんだけど、


でも…この人の事、守ってあげたいな。


ーーー


「たっだいまーーーーー!」


私はご機嫌に屋敷の玄関から顔を出す。


「おかえりなさ……何よ、気味が悪いくらいご機嫌じゃないですか。」


「うざったいわ、近寄らないで下さいまし」


使用人の冷ややかな態度を受けても、にやけた顔は元に戻らない。

私が好きな癖に素直ではないメイド達だ。

今更そんな態度を取られてもこちらは落ち込んだりしないというのに。


「もー、そんなこと言わないの!そうだ、今日は機嫌良かったから皆にマカロン買ってきたのよ!あなたはイチゴが好きでしょ?あなたはチョコよね。」


「な……なによ、こんなの貰ったって嬉しくありませんからね!」


「ふん、甘いものなんかで懐柔できると思ったら大間違い!私紅茶を淹れて来ます!」


「そうですわ、リリア様……明日朝一番に屋敷に来いとウリュウ様が。」


まずい、怒られるような事しかしていないから、どれがバレたのか解らない。

緑川のことだろうか?それとも仕事そっちのけで焔と遊んだことだろうか?


「わ、解った!明日顔を出してみる、ありがとう!」


一気に現実に引き戻されてしまった、

明日が命日にならないといいのだが……!


……


私はその夜、焔の事ばかり考えていた。

ウリュウの事も気にはなったものの、焔の事にどうしても頭が行ってしまうのだ。


焔……コズミックレッドは元々、リリアと因縁があった。

かなり昔にリリアがレッドを「裏切って」

重症を負わせてしまってから、

能力相性もあって特に敵対するようになったとか。


2人の因縁とは、どんなものなのだろう?

これから私と焔にも起こるようなことなのだろうか?


……


あれ……まずい、寝落ちてしまったみたいだ。

明日は早く起きなければいけないのに、目覚ましをかけるのを忘れてしまった。


『ナギ、私好きな人ができちゃったかもしれないの。』


……リリアの……声?

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