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夢が覚める時

「ちょちょ、ちょっとキアラさん…!

 こんな夜に何騒いでるのよ!」


思わず止めに入ると、彼女の視線の先にはナギがいた。

ああそっか…訓練中は彼も屋敷に入る事になったんだっけ?

彼は申し訳なさそうに俯いて、鞄を大事そうに抱えている。


「…-っリリア様、この男

 こんな物を鞄に入れていたんです」


キアラさんがそう言って差し出して来たのは、ヒーローのマスコットだった。


「あら!これコズミック7のブルーじゃない!」


「…5です」


「あらっ」


そっか…ホワイトとブラックがいないから今は5人なのね。


へー!こんなとこでヒーローがお目に掛れると思わなかった!

あれ?でも待って…?ブラックホール団からしたらヒーローって敵よね?


「ブラックホール団に身を置きながら、

 ヒーローを崇拝してるなんて…!

 噂では聞いていましたがまさか本当だったとは!

 リリア様、近付いては駄目です

 すぐにウリュウ様に報告しましょう」


ああ、やっぱり問題になる訳ね…

ウリュウに言っても無駄だと思うけど

彼ならきっとこんな厄介な事情知っててナギを推薦した筈だもの。


「…いいえ、駄目よ」


私はしばらく考えた後にそうはっきりと言い切る。


「!?」


「この子がヒーローを信奉してる事なんて、

 あの男は知っててここに送り込んで来た筈

 私と…グレイシャ家への侮辱だわ

 この男の沙汰は私が決める、解ったわね?

 たっぷりひどい目に合わせてやらないと」


私が言うとキアラさんは引き下がり


「なんと…誇り高き姿勢

 それでこそグレイシャ家の次女です

 そういう事でしたら私はこれにて」

と言って立ち去った。


「あの…」


不安そうに立ち尽くす彼にヒーローのマスコットを返すと、


「黙って着いて来なさい」

そう冷たく言い放って、私はナギと自室に戻った。


「り、リリア様…!お許しください!俺は…!」


私の部屋に入るなり、彼は頭を深く下げて言う。


「さっきの、見せなさい」


「え…」


「壊したりしないわ、見せて」


ナギは恐る恐る鞄からマスコットを取り出すと、私に見せた。


「可愛いマスコットね!彼、貴方の推し?」


「あ…そ、そう…!そうなんです!僕はブルーが好きで…!」


「どうしてこんな物隠してたのよ?

 見つかったらただじゃ済まないでしょう?」


「俺…ヒーローに憧れてるんです

 5年前、ブラックホール団と地球人との抗争に巻き込まれた時

 ブルーは俺が異星人であると解っていながら守ってくれました

 …憧れて…しまったんです

 駄目だと解っていながらもあの時のブルーの姿が忘れられなくて…」


「…そう」


「罰は受けます!どうか煮るなり焼くなり…!」


「なんであなたを罰さなきゃいけないの?

 好きな物を咎める資格なんて私には無いのよ」


「そんな…だって…リリア様さっき」


「さっきのはあの場を切り抜けるための芝居!

 ああ、でもカモフラージュは必要ね

 腕出しなさい」


私は目に付いた医療箱を取り出すと、彼の腕に包帯を巻く。


「あの、あの…!俺、悪の組織にいるのにヒーローが好きなんですよ!?

 裏切り物なんですよ…!?」


「別にまだ裏切っては無いじゃない、好きなだけで」


「…!」


彼はためらったように下を向くと


「俺の夢は!ヒーローになる事なんです!

 それ…でもですか!?」

と大きな声で言い放つ。


「いいじゃない!夢は誰にでも見る権利があるわ!

 ヒーローになったら私達敵同士ね

 でも今のあなたなんかには負けてあげないわよ?」


「…おかしいですよ…!そんなこと言うなんて

 解った、リリア様も本当はお姉さんと同じ裏切者で…!」


「それは違う」


リリアは最後まで悪役然とした人物だった。

嫌いなキャラクターだったけどその点に関しては認めてるのよ。

私が何でリリアになった夢を見ているのかは解らないけど…

そこは否定すべきだわ。


「おかしいのはあなたの方、何かを好きな気持ちって

 他人にどうこう言われて変えられるものなの?

 別に反逆を許した訳じゃないわ、

 胸の内にしまっておく分には咎めないってだけ

 それじゃ物足りないかしら?」


「いえ…!

 あの!絆創膏貼り過ぎじゃ…」


「あれ」


カムフラージュに夢中になるあまり彼を絆創膏とガーゼだらけにしてしまった。

…まあ、見せしめには丁度いいかもね。


「内緒の話だけど…私も好きよ、ヒーロー」


「え!?」


「貴方が夢中になってるヒーローとは少し違うかもしれないけど」


アニメに出て来たメンバーはまだ子供だったりするだろうから今のコズミック5は私の知らない人達で構成されている筈だ。

彼なら今の構成員についても詳しい筈…話を聞けないかしら?


「リリア様...あの」


「その『様』っていうのもやめなさいよ

どうせ同じくらいの歳でしょ?私達」


「俺は今年で13になるので、リリア様のひとつ上です」


このリリアは12歳なんだ、て事はアニメ1期放映範囲の4年前…

こんな子供に嫌がらせするなんてあのメイド達もどうかしてるわ。


「ならタメ口でいいわよ!

名前もリリアでいいわ、2人の時ならね」


「リリア…?」


「ふふ、そう!リリア!

ねえ、ヒーローの話聞かせてよ

 この時代のヒーローには詳しく無くて」


「本当に話していいの?」


「ええ、聞きたいわ」


彼は私の返事を聞くと明るい顔をして話し始めた。

ヒーローが好きなもの同士で話す時間は楽しくて、

私もつい時間を忘れて話し込んでしまう。


そして何より、この夢の中で初めて

友達の様に気兼ねなく話せる存在が出来た事が嬉しかった。


ーーー


リリアと話し込みすぎちゃったな…


あの子の部屋を出た頃にはもう深夜の2時…

かなり話し込んでしまった様だ。


彼女、俺の夢を否定しなかった…

いいじゃない!って笑ってくれた...

変な奴…でもいい子だったな…か、可愛い…し…


「おかえり、ナギ」


その声に思わず体を強張らせる。

俺の部屋の前に立っていたのは、ウリュウ様だった。


「で?どう?あの女

おかしな動向はあった?」


「まだ...何とも言えません

もう少し様子を見れば分かるかもしれません」


「ふーん、一応警告しておくけど

 変な情で人生棒に振るなよ?

 あいつらがあれの味方をしている様なら…解ってるね」


彼は身も凍るような目で僕を睨むと、何処かへ去って行った。


ーーーーーー

ナギが帰った後、私はベッドの上で彼の話の整理をしていた。


ナギの話を聞いた感じ、今のコズミック5の構成はこう

レッドとピンクがアニメと同じメンバーで、

グリーン、ブルー、イエローはアニメの構成員とは別人…


私の最推しブラックはそもそも加入もしてないじゃない!

まあそれもそうか、

ブラックはブラックホール団を裏切ってヒーローになった所謂「光堕ち」枠…アニメでも1期の後半から登場したしこんな時期にいる訳…

いる…訳…?


いるかも!?だって元ブラックホール団員なんでしょ!?

きゃー!テンション上がって来た!もし会えたらどうしよっかなー!

サイン貰う!?それとも握手お願いしちゃう!?


私の推しブラックは…性格も顔も最強にかっこよくって、

裏切りに苦しみながらも健気に頑張るとこが最高なのよね…!


…ああ、でもそうだった。

これって確か夢なのよね…寝たら私はリリアじゃなくなってしまう。

結構悪くない夢だったわ、好きなキャラになれなかったのは残念だけど


好きな作品の中に入るって…オタクなら一度は妄想する事だもの…


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12歳!?ミリア幼っ!ってなりました ミリアの体と中身の真理愛でどのくらいの年齢差あるんでしょうか 誰にも言えない趣味の共有をしたミリアとナギ。 歳も近いですし組織の中で疎まれ、はぐれものな2人には…
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