グリーン
いや、待てよ……アニメのグリーンは「佐伯若葉」という人物が担当してたのにどうしてこの男がグリーンになろうとしてるのだろう?
いや、或いはまた前任の可能性があるのか……
「ジロジロ見ちゃって、僕の事気になる?」
「えっ」
「あるよね、歳上のお兄さんに憧れる時期!君可愛いし良ければ連絡先の交換でも……」
あちらから申し出があるとは……!
ナンパのつもりなんだろうが、好都合だ。
「交換したい!教えて」
「リリア、こいつ女泣かせてばっかで最低なんだ。関わらない方がいいよ!」
レッドがここまで言うとは、余程緑川が苦手なようだ。
まあ、それもそうか……なんだかこいつから果てしないクズ臭がする。
「でもほら、ヒーローになるかもしれない人なら仲良くしたいわ!
私もヒーロー志望だし人脈作りは大事でしょ?
そうだわ!ブルーのも聞きたい!いいかしら?」
これならレッドも納得するだろう。
「俺がいればいいのにな……」
レッドは言いながら顔を伏せる。
おかしい、中和出来ると思ったのだが……
「俺は勿論いいぜ!でも困った時は直接連絡じゃなくって、ちゃーんとヒーロー本部に通報するんだよ!」
「ええ!」
ブルーの連絡先を手に入れる事ができた!ピンクの連絡先も聞いておけば良かったな……彼女とはレッドと行動するかぎりよく遭遇するだろうし次会った時に聞いてみよう。
あとは……
「あなたのも教えて」
私は緑川を見て言う。
「いいよ!はい、送った!よろしくね、リリアちゃん。」
緑川はそう言うと、私のおでこにキスをする。
「な!?」
「僕、そろそろ報告に行かないと!また会おうねー……おっと、おっかない。」
緑川はそう言って事務所の奥へと消える。
おっかない……?何の事だ?
そう言えば背後からやたら熱を感じるような……
振り返ると、焔が炎を出しながらむくれている。
すごい……ハリセンボンみたいだ……!
「レッド先生!?炎出てるわよ!もー……制御できないって言ってたけどまさか機嫌悪い時も出てくるわけ?どんだけあの人の事苦手なのよ。」
「苦手だったけど今嫌いになった!あいついつか消し炭にする!」
レッドが言うと冗談にならないような……
私が助けを求めるようにブルーを見ると、ブルーは手で顔を覆いながら震えている。
「ちょっと……何なのその反応。」
「焔君が……焔君が子供みたいな拗ね方してるぅ……俺久しぶりに青春の香り感じて泣きそう……」
もしかしたらコズミック5は変わり者の集まりなのかもしれない、私はブルーを見てそう思った。
ーーー
私はブルーと別れると、事務所前でレッドと明日の事について話し合っていた。
レッドは良く解らない事もあるけど、
基本は若いのに真面目で仕事のできる優秀な人だ。
エリヤについても「良く思ってない」と言っていたけど
それはヒーロー本部への反抗心から?
それとも異星人を憎んでいるからなんだろうか。
この人は今のヒーロー達をどう思っているのだろう……
私が彼の顔をじっと見ながら考え込んでいると、
レッドは私の視線に気づいてこっちを見つめる。
「……どうしたの?」
「いえその……」
ここで「あなたってヒーロー本部の体制についてどう思ってる?」
なんて聞けるわけがない。
誰にも聞かれないような場所で話ができたらいいのに。
「えっと……私、あなたのこともっと知りたいわ。二人でお出かけ出来たらいいなって考えてたの!」
無意識に口から出た言葉にはっと我に返る。
これってデートのお誘いみたいじゃない!?
レッドは少し呆然と私の事を見つめると、目線を落とした後に
「俺……活動以外で外出する時は母さんが付いて行くことになってて。」
と言う。
「そ、そうなのねー!勝手なこと言ってごめんなさい!」
なんだか振られたみたいでいたたまれない。
もっと言葉を選べばよかった!
「放課後一瞬どこかに寄るくらいならバレないかも。」
レッドは、落とした視線をもう一度こちらに戻す。
それって……一緒にどこかに行ってくれるってことだろうか?
私は満面の笑みで
「じゃあカラオケとかどうかしら!」
とレッドに言い放つ。
カラオケならある程度防音だし、個室に入れるので都合がいい。
「俺、歌えないけど……」
「じゃあ私の歌を聞かせてあげる!」
伝説のロリボイス声優が声を担当するリリアだ、
私は正直歌はからっきしだったが、
リリアならばきっと声の可愛さでカバー出来る!
「じゃあ明日丁度何もないから……学校が終わったら二人で行こうか。」
レッドはそう言って照れくさそうに笑う。
前から感じていたが、レッドは私への好感度が高いと思う。
いつもの穏やかな笑顔とは違う顔とかも見せてくれるようになったし、一緒にお出かけもしてくれる。
まあ、これは仕事なので嬉しい訳では無いが、もしかしたら仲間になってくれる日も近いかもしれない。
明日は普通に遊びに行くという体になっているし、
慎重に話し合わないと関係が修復不可能になる可能性がある。
ヒーロー本部の件は慎重に切り出さなければ。