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痛くない、怖くない

「馬鹿じゃないの」


「ちょ、ちょっとリリアちゃま……!  」


「昨日助けてくれた時……あんたはやっぱり最高のヒーローなんだと思ってた。

でも私の目が節穴だったみたいね。

何が『ヒーローだから痛くない』よ、何が『ヒーローだから怖くない』よ……!

ヒーローだからってそんな怪我が痛くない訳ないじゃない! 」


私は感情が抑えられず、レッドに強く言い放つ。

レッドは動揺した様子でただ黙ってこちらを見つめていた。


「ねえ気付いてるの!? この手だって震えてる! 本当は能力使うのだってお母さんのことだって怖いんじゃない!?

あなたってヒーローの癖に自分自身が助けて欲しい時に何もしないわけ!? そんなのヒーローじゃないわ! あんたなんかヒーロー失格よ! 」


全て言い切った時に、はっと我に返る。

言い過ぎた……! こんな物言いをしたら絶対に怒らせるに決まっている。


私は恐る恐るレッドの顔を見た。

彼は悲しそうに私を見つめている。


「ご、ごめんなさいレッド先生! 違うのよ、ついカッとなっただけで……! 」


「何でそんなに怒ってくれるの? 君って俺の家族でも何でもないのに。

この前も死なないでって泣いてた……どうして? 」


それは勿論レッドのファンでもあるからだ。

好きなキャラがこんな扱いを受けて喜ぶオタクはいない。

しかしそんな事をレッド本人に言えるわけがないし……


「と、友達……だからじゃない……? 友達が傷ついたら悲しいわ! あなただってそうでしょ? 」


「……それだけ? 」


レッドは唖然とした様子で言う。


「悪い?」


「ううん、ふふ」


「何がおかしいのよ! 」


「可笑しいんじゃなくて、嬉しかったの。」


レッドはそう言って楽しげに笑う。

怒ってはいないが、これはこれで腹が立つ。

こっちは真剣なのに……!


レッドは私の両手を引いておでこを付き合わせると、

「母さんは俺が怪我しても喜ぶだけだけど

、 リリアは死なないでって泣いてくれるし、 怪我したら怒ってくれる。

凄く嬉しいよ……ありがとう。」


そう言って少しだけ視線をこちらにやる。


ありがとうって…なんかズレてない…?


「私の言った事理解してる!? 痛いし怖いなら無理するなって言ってるんだけど! 」


「んー…でも俺ヒーローだから痛い怖いとかで仕事サボれねーし。」


この男、反省0のようだ。


「駄目だよリリアちゃま、ブルーとか私が口酸っぱく注意しても聞きゃーしないんだから」


「……ふん、じゃあもういいわ、あんたの手伝い辞める。」


「えっ? 」


「私はヒーローの手伝いが出来るって言うからあんたの頼みを呑んだのよ、 ヒーローじゃない奴とは仕事しない。

あといつまでくっついてるの?あんた異性との距離近いわよ! 離れて! 」


「ええ……それは……困るよ、俺どうしたらいい? 」


離れろと言ったにも関わらずレッドは私の手を握ったまま尋ねてくる。


「私、弱い奴とか生きる気が無い奴って嫌いなの。怪我しないように気をつけること、死なないように気をつけること、あと…怪我したらすぐに適切な治療を受けること。

守れないならこの件から降りるわ。」


「……守る……だから一緒にいて」


一緒にって……

こちらは手当するだけなのにやけに大袈裟な表現だ。


「わ、分かればいいのよ……」


「あああぁぁ! 美少女と美少年のてぇてぇ過剰摂取で死ぬ! 」


私が困惑しているとピンクがそう言って痙攣し出す。


「うわ! びっくりした……! 大丈夫!? 」


「む……ピンクのせいで雰囲気台無し。行こうぜリリア、あんなのほっといても死なねーから。」


「えぇ……」


蟹みたいに泡吹いてるけど…?


「ピンク、手当いつもありがとう。またね」


レッドはぶっきらぼうに彼女に言い放つと医務室を離れた。


レッドが報告を終わらせ、帰りにまた双星でトレーニングでもするかという話をしていると

事務所のエントランス方面から


「ほんっと最低! 」


という叫び声と破裂音が響く。

見ると、狐顔で三つ編みをした男が渋い大男に見られながら頬をさすっていた。


「殴ることないじゃんね、大吾さん」


「いや、あれは殴られても仕方無いだろ……よく付き合ってる女に好きか分からないとか言えるよな、裕也くんサイテー。」


渋い大男がそう言って彼を睨む。


…ん? 裕也…


「ねえレッド先生、あの人誰? 」


私がもしやと思って尋ねるとレッドは困った様子で

「知らなーい……」

と言う。


「お!焔くんじゃーん! 元気してたー? 今日も可愛いね、あれ、そっちの子は?」


「……」


「ちょ、無視ー!? 今日も塩なんですけど! 」


レッドが無視するって……どれだけ嫌われているのだこの男。


「お、お嬢ちゃんこの前ヒーロー本部で焔君といた子じゃんか!

焔君もついにそういう……ガールフレンド的な人が出来るようになったのかなー? 」


「ガールフレンドって女友達ってこと? ……うんそう。」


「たはー! 焔君にはまだまだそういう時期は来ないかー! 」


この大男、焔と私が一緒にいた事を知っている……? まさか!


「コズミックブルー……? 」


「お、正解! そっか俺ヘルメットしてたから名乗らねえとわかんないか! 」


ブルーの中身はこんな感じの青年なのか。

酒と食べるのが好きと言う割に、体は絞られていて流石ヒーローといったところだ。


「私はリリア! レッドのお手伝いしてるの。」


「俺は青山大吾! コズミックブルーだ、よろしくな! 」


「……ねぇ、そこの胡散臭いのは誰? 」


「こいつは研修生の緑川裕也。コズミックグリーンになる……かもって感じの奴! 」


緑川!やはり緑川裕也だ!

この男、スパイ活動をサボってこんな所で何をしているんだ……!?

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