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レッドの母

「もー! びっくりさせないでよ焔君! 」


事務所内の医務室でコズミックピンクが叫ぶ。

あの後結局異星人は警察に引き渡されたのだが、

その際連絡を受けたピンクがレッドの火傷を見て悲鳴を上げたのだ。


今日は一段と狭い中で高い火力の炎を使っていたから仕方ないかもしれないが、

彼は火傷するのが怖くないのだろうか?


「可愛いお顔に火傷跡残っちゃったらどうするの! 絶対将来イケメンになるのに……! どうして、どうして……! 」


ピンクは涙目になりながら彼の火傷に薬を塗りこんでいる。

……何となくだけどこの人は、善人のような気がする。


「あ、まってピンク! ……包帯はリリアにやって欲しい。」


「え」


「ええー!? そうなの焔君! 拘っちゃってるのー!? やってあげて! えーと、リリアちゃま? 」


「あ、は……はい。」


私は少し照れ臭く思いながらも彼の腕に包帯を巻いていく。


「本当だ、リリアちゃま包帯上手だねえ!

保健委員さんとかやってたのかな? 」


「そ、そうなの……! 経験があって……包帯なら結構巻いてきた方よ! 」


「リリアちゃまみたいな子が保健委員にいたらおじさんも好きになってたかも。

焔君もこの可愛さにやられちゃったんだ。」


「へっ!? 違うよ! リリアは氷の能力が使えるから……! ほらリリア見せてあげて! 」


彼は真っ赤になりながら私に促す。

私は包帯の上に手を当てると、彼の腕を冷やして見せた。


「リリアの手触ってみて? 冷たいでしょ? 」


「あ、ほんとだ! ひんやりして気持ちいいねー…」

ピンクも私の手に触れると、そう言って彼女は硬直する。


「どうしたの? 」

異様な状態にレッドが怪訝な様子で尋ねる。


「……あ、ごめんちょっと尊みの過剰摂取で飛んでた……」


ピンクが恍惚とした表情で言うと、私は咄嗟に彼女から距離を置いた。

この人、いい人なのだろうが様子がおかしいような……?


「ほら、リリアが怖がってるだろ! 変な事言うなよピンク。……リリア、大丈夫? 」


「大丈夫よ、びっくりしただけ! それよりレッド先生こそ平気なの? 毎回こんな怪我しちゃって……」


「大丈夫!俺はヒーローだから怪我とか怖くないし、痛くもないから。」


そんなものなのだろうか……


「焔! 」


私が考え込んでいると、綺麗な黒髪の女性が医務室に入って来る。

そして私は一目でこの女性がレッドの母親である事を察した。

とてもよく似ている親子だ。


彼女は涙目になりながら彼に駆け寄ると、

「事務所に連絡があったって聞いたから駆けつけて来たんだけど…」

と言って息を切らす。


焔の母の態度からは息子思いの母親、そんな印象を受けた。

きっとヒーローの母親なんてやってたら心労も……


「えらいね! えらいね焔! 

世界のために戦えてえらい! 」


彼女はそう言って火傷だらけの彼の体に抱きついた。


……ん?


なんだろう、この違和感……ぞわぞわする。


「今日もこんなにボロボロになって……! の平和の為に痛いの我慢出来る焔かっこいいよ! お母さんすっごく嬉しい…! 」


息子がこんな怪我をしているのに、

「かっこいい」?

私は助けを求める様にピンクに目配せするが、彼女は残念そうに首を振った。


「お母さん、焔が頑張ってヒーロー続けられるように応援するからね、これからも沢山人の命を守るのよ。

私とっても誇らしいわ、あなたのママでいられて……」


今にも飛び出しそうになっている私の体を、ピンクさんが抑える。

「だめ、抑えて」彼女は私の耳元でそう囁いた。


「……ああ!ピンクさん!()()手当してくれてたのね、ありがとう!

……そちらは?」


「私の妹です、可愛いでしょ。今日たまたま見学に来てたんですよ。」


ピンクさんが笑顔で言う。


「へえ、姉妹揃って美人だわー! また来るから、皆さんお勤め頑張ってね! 」


彼女はそう言って医務室から出て行った。


「……レッド先生……何……あれ」


レッドの目は少し陰っていて、バツが悪そうに俯くだけだった。


「代理ミュンヒハウゼン症候群って知ってる?子供の怪我や病気を献身的に世話してるように見せかけて、周りの関心を集めたり気を引こうとする人の事……あれに近いと思うんだ、彼女。」


「どういう事……? 」


「焔君が傷つけば傷つくほど、自分も周りから心配されるようになって……彼女はきっとそれに味を占めちゃったんだと思う。」


「何よそれ! 虐待じゃない! 」


私が言うと、レッドが私の手を掴む。


「違うよ、虐待なんかじゃない。俺がヒーローとして傷ついてしまう事に対して母さんは理解を示してるだけ。」


彼の手は、微かに震えている。

昨日私を勇気づけてくれたあの手が……


「馬鹿じゃないの」


私は、妙に腹が立って彼にそう言い放ってしまった。

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