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内輪バトル

「……わりぃ、順を追って伝えようと思って言ったけどこの情報は絶対重要じゃないな……」


灰原さんが内心私を「かわいい」と思っていたことを伝えた後で、シノは額を抑えながらそう呟く。


「そうね、報告されても困るかもしれないわ……」


「……ここからは間違いなく重要だ。あいつ……どうやら『怪人』とつるんでるみたいだぜ。」


その言葉に私は目を見開く。


(怪人と……!?だって、怪人化チップは使わなかったんじゃ……)


「さっきもそろそろ『怪人会のことをあの人に話さなきゃ』って心の中で呟いてたぜ。

ちょっと注意して見張っておいたほうがいいかもな。」


シノは私をまっすぐ見ながらそう忠告した。


(灰原さん……この前話した時は憑き物が落ちたみたいだと思ってたのに。

また……足を踏み外そうとしてるのかな。)


少しやるせなさが込み上げるも、今私がやるべきことはこれをフユキ達に報告すること。

個人的な感情は少し脇に置いておくべきだ。


「ありがとうシノ、フユキ達に報告してみる。あなたのお陰でかなり状況が進展したわ。」


……シノのお陰で灰原さんの証言が嘘か否か、ハッキリした。

これで焔やロクタ、ナギの協力を得ることができる。


そして、もうひとつハッキリしたことがある。それは――

凛太郎が医務室でフユキに灰原さんの証言が嘘か否かを尋ねた時、彼は嘘をついていたということ。


疑いたい訳じゃない、だが凛太郎の行動は日に日に不穏さを増していく。


(一番嘘を吐いてるのは凛太郎……あなたじゃない。)


私は心の中でそう呟いた。


……


シノを連れ、手筈通り私は皆の待つフユキとゆかりの部屋を目指す。


(ロクタもいるらしいし、ちょっと緊張する。)


インターホンを鳴らすと、ゆかりが少しバツが悪そうな顔で迎えてくれる。


「あらっ……どうしたの?なんかやつれてるけど。」


「すっごいしょうもないことで凪人と隊長がずっと揉めてんの。

ナギと隊長には何の集まりとか伝えてなかったから、顔合わせるなりバトりモードでさ。

……今リリアが顔出すと事態をややこしくしかねないなって。」


私は助けを求めるように後ろにいたシノを見た。

シノはゆかりの心の声を聞いて少し呆れたらしく、「リリア、お前さんなんでそういつも争いを産むんだか。」と呟く。


(え!?私のせい!?)


「……待ってな。ゆかり、横通るぞ。」


シノはそう言うと、ゆかりの横を通ると居間に向かっていく。

ゆかりはシノを見て「あれ、俺名乗ったっけ……」と呟いていた。


不安になり皆に悟られないようこっそりシノの後を追うと、居間にはスティック型のゲームコントローラーを持って睨み合うナギと焔の姿が見える。

居間に入って来たシノのことにも気付かずゲームに夢中になっているようだった。


「だから……言ってるじゃないですか。リリアは俺のファンクラブに入ってるし俺を見ると倒れるくらい好きなんです……!」


紫のコントローラーを持ちながらナギが引きつった笑みで言う。


「いーや違うね!リリアは絶対俺のファンだから!何故なら前好きって言われたし好きなタイプとか聞かれたもん!」


そしてピンクのコントローラーを握っていた焔がそう切り返した。


「好きなタイプなら俺も聞かれました!」


「あ、俺もリリア様に聞かれた気がします。」


「僕も聞かれたぞ……あれ、結局リリアは誰のファンなんだ?」


ナギとフユキ、ロクタがそう名乗り出たことで場は混乱する。


(まずい、このままでは私が気の多い人みたいに思われてしまう……!

そもそもあいつら何をあんなに揉めてるわけ!?)


目を白黒させていると、ゆかりがこっそり

「あんたの最推しが誰かってので揉めてんの。」

と小声で教えてくれた。


(本当にしょうもない……懲りないわねあいつらも。)


睨み合う焔とナギの間にシノが割り込むと、

「なぁお二人さん、いいこと教えてやろうか」と言ってニヤつく。


少し嫌な予感がしつつも私はそれを見守った。


既にシノと面識のあるナギと焔はシノの顔をやっと見ると、少しビクリとしつつ「あ、どうも……」と小さく呟く。


「なんだかよくわからんけどリリアは誰が好きかってので揉めてんだろ?」


シノが言うと、ナギは「いや好きっていうかファンかどうかとかそういう話で恋愛的な意味を含まなくて」と早口で反論し、フユキが途中割り込むように「まあそんな感じです。」と補足した。


「なら知ってるか?リリアには婚約者がいるんだぜ。」


シノがとんでもない爆弾を投下すると、ナギは石化したように固まり、焔は苦い顔で目を細める。


「前に聞いたけど、なんか恋愛感情とかは特にない婚約って聞いたよ?」


焔が震えた声で切り返すも、シノは臆することなく

「そりゃかなり前の話だろ。リリアが手に着けてる赤いミサンガ……

あれ、地球人の若者の間で流行ってる切れるとずっと一緒にいれるおまじないらしんだが……あんたらなら知ってるよな?」

と尋ねた。


「ああ、それなら俺広告やったことあるよ。赤城焔もおすすめ赤い糸!ってキャッチフレーズで。

二本あるからカップルで着けれて……」


焔はそこまで言いかけて、顔を真っ青にして口を押さえる。


「……それ……2本組ってことは、もうひとつを身につけてる人がいるんじゃ……?」


焔同様青ざめたナギが言いながら狼狽えていた。


「そのもうひとつ、誰が着けてるか知りたいか?」


シノが言うと、焔とナギは少し息を呑んだ後で「知りたいです」と答える。


「ブラックホール団のボス……つまりはリリアの婚約者だ。

あのリリアが嫌々こんなもん着けたままにするわけないのは説明しなくてもわかるな?つまりこの戦いは不毛ってこった。」


シノに赤いミサンガを身につけたウリュウの写真を見せつけられた焔とナギは、魂を抜かれたようにソファに座り込むと身を寄せ合った。


その様子を見たロクタが

「なあ、ファンかどうかの話し合いだったのに2人は何故リリアが婚約している事実に動揺してるんだい?」

と無邪気に質問する。


フユキは困ったように宙を向いた後

「男ってプライドが成長すると素直になれなくなっていく生き物なんです。」

と笑顔で答えた。

それにとどめをさされたように、ナギと焔は項垂れる。


「……私、今日はもう帰ろうかしら……」


震えながら呟くと、ゆかりはため息を吐いた後

「ちょっとコンビニとか寄ってからまたおいで。」と言い放ったのだった。

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