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【番外編】花火より綺麗な人

「最近リリアが少女漫画にハマってる?」


自室のベッドで寛ぎながら、報告に来ていたミカゲにウリュウが尋ねる。


「ああ。『アオハルのきみ』という高校生の恋愛を描いた漫画なんだが、これに出てくる『石黒蓮斗(いしぐろれんと)』というキャラを推しているらしくよく俺に蓮斗様の魅力を話してくれるよ。

まあ、彼女も本来なら女子高生だし微笑ましい限り……」


ミカゲが言いかけた所でウリュウはむくれながら

「蓮斗様だー……?僕の方がかっこいいね。」

と口にする。


「……ウリュウ……これは2次元のキャラクターだよ?嫉妬するような対象では……」


「嫉妬なんてしてない、事実を述べたまでだ!なんだあいつ、こんな美しい婚約者がいるのに少女漫画なんかでときめきを摂取してるのか。だから週1しか帰れないわけ。」


ウリュウがあまりにも早口でまくし立てるので、ミカゲは(やっぱり嫉妬してるんじゃないか)と内心ツッコミを入れつつ黙り込む。


「ミカゲ君その漫画貸して!!今から僕がそれを熟読して……僕が漫画なんかよりも遥かに楽しい存在であると思い知らせてやる!」


ミカゲはため息を吐いた後少し微笑みながら「明日持ってくるよ」と返事をした。


★ ★ ★ ★


「は?デート……?」


ブラックホール団の最高司令室に足を運びウリュウへの報告を済ませると、ウリュウが資料を整理しながら「君も最近頑張ってるしデートでもしないか」とあまりに淡白に誘ってきたので、思わずそうオウム返しをしてしまう。


「……忙しい?」


ウリュウは一瞬手を止めてそう尋ねるが、あくまで目線は資料に落ちていた。


「忙しいには忙しいけど……あなたにも言えたことじゃない?」


質問を返すと、ウリュウはまたも淡白に「問題ない。こう見えて意外と余裕があるんだ。」と答える。


「そう……」


(でも確かに、堂々と渋矢の外を歩けるようになった割にデートとかしたことなかったわよね。ウリュウには日頃の感謝も伝えたいし、いい機会かも。)


「じゃあ行きましょうか!どこに行く?あなたなら観光とかの方が楽しいかしら!」


「……連休シーズンに合わせて、今度の土曜に朝草(あさくさ)で花火大会があるらしい。

ので、朝草巡りとか……どうだろう。」


ウリュウにしては庶民派な提案に少し驚く。

彼のことだから、美術館に行きたいだとか高級料理を食べたいだとか、そんな要求をしてくると思っていた。


しかし朝草は観光スポットだ、ウリュウの興味を惹く何かがあるのかもしれない。


「楽しそうね!次の土曜日を楽しみにしてるわ!」


そう答えた時、初めてウリュウの口角が少し上がったような気がした。


……


――土曜日、私は待ち合わせの駅に到着すると探すまでもなくウリュウを発見する。

彼の周りには野次馬が大量に集まっていて、握手を求める女子や写真をお願いする女子で溢れ返っていた。


(芸能人じゃないんだから……)


呆れていると、ウリュウがこちらに気付き手を振る。

彼は見事なまでに地球人の服を着こなしていて、その立ち姿はモデルのようだった。


「……早かったのね。女子に囲まれて気分よく待てたのかしら。」


嫌味を言うと、ウリュウはニコニコしながら「僕が待ってたのはリリアだけだよ?その服似合ってんじゃん。」と口にする。


「――!?」


私はウリュウから発された少女漫画のヒーローのようなセリフに耳を疑った。


(こいつ……こんなこと言うタイプだっけ!?)


しかし悪い気もせず、小声で「ありがとう」と返すと、ウリュウの笑みが一瞬邪悪さを帯びる。


(あれっ……まさか、何か企んでる!?)


嫌な予感がしつつも、「行こうか」と言いながら歩き出すウリュウに私は黙ってついて行った。


最初に向かったのは有名な食べ歩きスポット。

真っ直ぐ観光に向かうと思っていた私は少しこわごわしながらウリュウの横顔を見ていた。


「ここの通りさ……美味しい削りイチゴのドリンクがあるんだって、知ってた?」


通りを歩いていると、ふいにウリュウがそう尋ねてくる。


「し、知らなかった……」


(というより、あなたが削りイチゴに興味があることを初めて知ったのだけれど。)


「それ、奢ってやる。イチゴ苦手じゃなかったよな。」


「苦手じゃないわ、寧ろ好きよ!」


そう答えると、ウリュウはお店の人に話しかけドリンクを注文する。

ドリンクには可愛いハートの飾りが乗っていて、とても美味しそうだった。


目を輝かせていると、ウリュウが「写真撮る?」と言ってスマートフォンをこちらに向けてくる。


私はウリュウの隣でドリンクを掲げながら微笑んだ。


(なんか……思ってたより普通のデートだ……!漫画で見たやつみたい……!)


――気の済むまで食べ歩きを堪能した後、私たちは歩きながら談笑していた。

そしてウリュウが遠目に見えるスカイタワーに目をやり「あの塔、渋矢でも見えたけどここからだともっとよく見えるな。」と呟く。


「あそこの周りにも色々お店があって楽しいのよ!」


それを聞いて、ウリュウは「今から行く?」と言いながら微笑む。


「えっ……でもあなたにはあなたの行きたいとこがあるんじゃないの……?」


「行ったことないとこならどこでもいいよ。」


ウリュウはそう言うと私の手を引きスカイタワー目指して歩きだした。


(わあ……今日のウリュウ、蓮斗様みたい……!)


その後もお揃いのマスコットを買ったり、遊園地で遊んだりと、憧れていた学生らしいデートができて私はうきうきしていた。


「そろそろ花火の時間だし移動するか。」


遊園地でひとしきり遊んだ後で時計を見ながらウリュウが呟く。


花火大会のある川辺まで移動すると、人が沢山集まっているのが確認できた。


「凄い人ね、皆花火を見に来たんだ。」


言うやいなや、ウリュウは唐突に私の手を握る。


「えっ!?」


「こんな人がいたらはぐれるかもしれないから、しっかり握ってて。」


(わぁー……!これ蓮斗様も言ってたセリフ……!

……あれ、待てよ?なんか……)


私はじとりとウリュウを睨むと「もしかして今日のデート、アオきみを参考にしてたりしないわよね。」と言い放つ。


すると私の手を握っていたウリュウの肩がビクリと跳ねた。


「……しかも、蓮斗様の真似してない?」


続けて追求すると、ウリュウは小さく「バレたか、勘のいい奴め」と呟く。


「やっぱり!なんかおかしいと思ったのよ!今日のウリュウはキャラが違うなって……!何が目的か知らないけどもうバレてるんだから手放したら?」


怪訝に言い捨てるも、ウリュウはさらに強く手を握ってくるだけだった。


手を繋いだまま人の多い通りを抜けると、ウリュウは展望台に登り、そこでやっと手を離す。


「怒ってる?」


展望台の手すりを触りながらウリュウが尋ねる。


「馬鹿にされてる気はしてるわ、私が少女漫画に入れあげてるのが面白いようね。」


腕を組みながら文句を言うと、ウリュウは「別に面白くないよ」と呟いた。


「……じゃあ、何でこんなことしたの?」


「漫画より僕を見て欲しかったから。」


思ってもない言葉が帰ってきたので、私は言葉に詰まってしまう。


「始まるよ。」


ウリュウがそう言って空を指すと、夜空に綺麗な花が咲いた。


「……ここで、蓮斗様のセリフ言わないの?『花火よりお前の方が綺麗だぜ』って。」


少し嫌味混じりに言うと、ウリュウは見とれるくらい綺麗な横顔で

「そうは思わないけど、君と見た花火が今まで見てきた中で1番綺麗だ。」

と口にする。


「…………!」


不意を突かれて真っ赤な顔で絶句している私に、ウリュウは少し意地の悪い笑みを浮かべながら

「今の、蓮斗のセリフとどっちが上?」

と聞いてくる。


私は少し黙り込んだ後

「……今のは、あなたの勝ち。」

と答えた。


少女漫画でしか聞かないキザなセリフだと思っていたが、今なら蓮斗様の気持ちがわかる気がする。

――花火を見つめて少し幸せそうな笑みを浮かべるウリュウは、花火よりも綺麗だと、そう思ったのだった。

今日1日番外編の日になって申し訳なかったです。次回以降本編に戻ります。

ロクタ編完結後、また番外編を上げさせて頂きたいです。

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