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白か黒か

――暫く説得した甲斐あって、シノは不機嫌そうにフユキの隣でパフェを頬張る。


「お兄さんもしかしてリリア様と2人きりだと思って喜んで来たらそうじゃなかったから拗ねてるんですか?」


フユキがシノに無神経な言葉を投げるので、ナギが「フユキ!」と声を上げてたしなめていた。


「そんで、俺様に用って何だよ。」


シノが尋ねるので、私は「ちょっと協力して欲しいことがあって……」と切り出す。


そして説明する間もなく、シノは何か察すると「そう言うことなら協力するぜ」と答える。

話の脈絡が掴めずにナギが不思議そうにしていると、フユキが「この方、人の心の中がわかるらしいんです。」と耳打ちした。


「いいの?まだ概要を話してないけれど……」


「ここにいる奴らの心の声を精査したら何となく察した。エリヤに一泡吹かせるって話なら俺が前向きにならんわけがないだろ。」


シノはそう無愛想に言い捨て、再びパフェを頬張る。


「じゃあまずは、赤い髪のお兄さんと灰原君を会わせる所からスタートですね!灰原君、今日は事務所にいませんでしたが……」


「最近灰原先輩、研修が終わるとさっさと帰っちゃうのよ。でも研修中なら声をかけられるわ。」


フユキに伝えると、彼は「でもそれだとリリア様が声掛けることになっちゃいますよ?」と心配そうに言う。


「大丈夫、灰原先輩にもう私を傷つけようって意思はないみたいだから。」


「そうですか……じゃあお願いします!あ、せっかくだしお兄さんも何か歌って下さい!時間いっぱいまで遊びましょう!」


話が落ち着いた所でフユキがシノにマイクを手渡す。

シノは少しフユキに目をやると

「……お前……マジか……」

と少し驚いたような顔で呟いた。


(どうしたんだろう?フユキの考えてることならきっと純粋だろうし、表裏無くて驚いたとか?)


「次俺が入れる。別に歌とか興味ないけど今はなんか歌ってもいいかなって気分だし!」


ナギが言うと、シノはすぐにそちらを見やり、どこかほっとしたような顔で

「良かった……多少扱いやすそうなのがいて。」と呟く。


(ナギの方が『扱いやすそう』?私はいつもナギとのやり取りの方が手を焼くのに……心の声が聞こえるシノにしかわからないことがあるのかしら。)


暫く皆が歌うところを聞いた後、時間になったので私たちは部屋から出る。

廊下を歩いている時、シノが背後から「あの白いの、中々侮れねえぞ……」と囁く。


「はあ?フユキが……?表裏あるような子じゃないけど……」


「あいつ、俺にマイク渡して来た時……『心の中がわかるって凄いですね!お兄さんもリリア様が好きなんですか?』って心の中で話しかけてきたんだよ。

その後もずーっと『俺の好きな食べ物はー……』とか延々自己紹介してて怖かった。」


(うわぁ、フユキらしい適応力とサイコぶり……心が読めるとわかったからって個人連絡を試みるかしら普通……)


「逆にあの黒髪の方は警戒しなくていいぞ、割とわかりやすいから。」


シノはナギの背中を見ながら小声で呟いた。


「ナギは複雑よ?私いつも噛み合わないの。」


そう返すと、シノは「そりゃお前……相性の問題だろ。」と言って苦笑する。


(そっか……ナギと相性悪いんだ、私……)


私はフユキと話すナギの背中を見ながら、少し寂しい気持ちを抱いていた。


★ ★ ★ ★


カラオケで話した後日、私は研修後帰ろうとする灰原さんにすかさず声を掛ける。


「灰原先輩!ちょっとこの後お話が!」


灰原さんはビクリと体を揺らすと、信じられないものを目にしたような顔をした後で

「……ここで話せないこと?」と尋ねてきた。


「はい、良かったらカフェとか行きませんか!?」


私の圧に押されつつ、「どうかな、ブルーさんを待たせてるし。」と灰原さんが難しい顔で言う。


「……どうしてもダメですか……?」


フユキに「相手が渋ったら上目遣いでこれを言って下さい」と伝えられた言葉を口にすると、灰原さんは少し迷った素振りを見せたものの「……わかった、少しなら付き合うよ。」と返事をする。


(流石フユキ!)


私はよくわからないまま上手くいった作戦に少し鼻を高くしながら、灰原さんと事務所を出て近くのカフェを目指した。


……


カフェに着くと、私はシノが座っている前の席に灰原さんを誘導する。

シノの能力の都合上人が多いと良くないので、人のいない閑散期を狙った結果、他の客はほぼ店内にいない。


「……それで、用件は?」


席に着くなり、灰原さんは少しそわそわした様子で問いかけてきた。


「以前、灰原さんが医務室で話してたこと……チップを渡されたって話。あれって事実ですか?」


小声で尋ねると、灰原さんはなんだそんなことかと言わんばかりにため息を吐いた後

「……ごめんね、あれ俺の勘違いだったみたい。ブルーさんの言う通り事実じゃないよ。」

と答える。


「そう……ですか。」


私は肩を落とすような演技をした後で灰原さんの肩越しにシノを見た。

すると程なくして携帯に【エリヤは黒、灰原の話は事実だ。】というメッセージが入る。


それを見て私は心の中で小さくガッツポーズをしたのだった。


「……話は終わり?俺ちょっと急いでて……」


そう言って不意に灰原さんが腕時計を見やると、その腕の青白さや細さに唖然とする。


(あれ……元々細身ではあったけど、ここまでだったっけ?)


不穏に思いながらも引き止めるわけには行かず、灰原さんに「もう大丈夫です、ありがとうございました。」と伝えると、彼はすぐに席を立ってカフェを後にした。


すると、シノが私の向かいに座り

「何聞いたか、話すべきか?」

と言う。


私は少し緊張しながらも、ゆっくりと頷いた。


「まずは……そうだな、あいつずっと心の中で『リリアは可愛いな』って言ってたぞ。」


「……えっ?」


私は予想外の答えに、少し間抜けな声を上げてしまったのだった。

どうしても書きたくなったので次回番外編挟みます。

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