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ねぎらい

「あなたが起こしなさいよ!」


「何で私が…!」


使用人達の声がする。

また性懲りも無く喧嘩をしているのだろうか?


私はゆっくりと起き上がる、ここは、自室のようだった。


「ひっ……リリア様が起きちゃったじゃない! 」


使用人達が何やら言い争いをしている。


「あなた達……こんなとこで一体何を……」


夜は原則、寝室に立ち入り禁止の筈だが。


「何してるのって言いたいのはこっちの方です、全く……医者曰く興奮のしすぎで倒れたそうですわよ。」


「本当に困った主です事! 文句も言い足りないわ! ねえリリア様……その……ちょっと食堂まで来て下さる? 」


「いいって言うまで目を瞑ってなきゃだめよ! 」


彼女達はそう言って私の手を引く。

また私の嫌がらせでもする気だろうか?

こっちは寝起きだというのに……


「ほら、いいわよ! 」


彼女達に言われて目を開けると、

そこにはいつも食べている何だか解らない物体とは似ても似つかない、

美味しそうなご馳走とケーキが並んでいた。


「な……え!? 脈打ってない! 何だか解らない食べ物じゃないし……! どうしたのこれ!? 」


「リリア様の元気が無いかもしれないって……この子が言うから! 」


「私じゃないわ! この子よ! 」


「私はそうかもねって言っただけ! 」


また喧嘩してる……


「とにかく今朝落ち込んでそうだって話が出たから、たまには美味しいもの食べさせてあげようって話になりましたの! 」


使用人の一人が大声で言う。

もしやこれは、彼女達なりのねぎらいだろうか?


「普段変な物食べさせてお腹壊したのかもしれないし……」


「いつもどんなものか調べはしてますのよ!? 普段のも不味そうだけど高級食材なんですから! 」


「あなた達……私の事嫌いだったんじゃ?」


私が言うと彼女たちはバツが悪そうに俯く。


「そ、そりゃ……一度グレイシャの者に捨てられましたもの、怒ってましたし……あなた様の事も気に入らなかったけれど」


「私が熱の時付きっきりで看病してくれましたし……」


「わ、私の相談も聞いてくれて……」


「作った料理いつも残さず食べてくださるし……」


「私たち別にリリア様の事、嫌いって訳じゃないんだからねっ! 」


メイド達は恥ずかしそうにしながらも、口々に言う。


「ふふ……あははははは! 何よあなた達!

結構可愛いとこあるんじゃない! 」


彼女達は顔を真っ赤にして私を睨む。

全く、相変わらず彼女達は素直ではない。


「ありがとう、私の事思って作ってくれて嬉しいわ。ねえ、あなた達自分の食事は済ませたの? 」


「ま、まだですけど……」


「じゃあ一緒にこのご馳走食べましょ!

皆で食べたいの、いいわよね? 」


「ふん、今日だけなんですから! 」


悪態を吐きながら使用人達は食卓を囲んだ。


……ちゃんと向き合えば、解り合えたのね、リリア。


この未来は貴方の悲しい過去を全て知らない私だから辿り着けたとも言える。

リリアと同じ記憶があったら、

この子達含め、誰を許せる気にもなれなかったかもしれない。


でも願わずにいられない、この経験がリリアの物であれば、どれだけ救われたことだろう……

私は久しぶりに大勢で囲んだ食卓で、リリアに思いを馳せたのだった。


ーーーー


「本当!? やってくれるんだ、嬉しい! 」


きつい訓練の後で、私はレッドの手伝いを請け負うことを伝える。

彼は思いのほか喜んでまるで年相応の少年のようにはしゃいでいた。


「具体的には何をしたらいいの? 手当って言ってたけど……」


「俺が能力で火傷したらまた手当して冷やして欲しいんだ。

あれやってもらえると楽になるから。」


…点そんなに痛いのなら、病院で診てもらうことはできないのだろうか?


「いいわ、やる。

その代わり余裕がある時は私のトレーニングに付き合いなさいよ。」


「うん、もちろん! でもリリア、今日もちょっと顔色悪いよ? 」


「えっ」


彼は私の額に触れると

「何か冷たいし…あ、これは元から?」

と言う。

焔の手は能力のせいか少し温かい。


「だ、大丈夫よ! 私は色白だから青く見られやすいの! 」


私は急いで彼から離れる。


「じゃあ早速だけどコズミック5の使ってる事務所に行こうか、今日は特に出動命令は無いんだけど……

報告書出しに行かないといけないから。」


「わ、解った。」


流石現役のヒーロー、中学生といっても多忙のようだ。

私はレッドに連れられるまま電車に乗り込むと、

目的の駅に着くのを待っていた。


コズミック5の事務所は、場所さえ変わっていなければアニメにも何度か登場した施設だ。

少し心が躍る。


「おいどけ! お前ら動くな! 」


ふと、車両の奥から怒声が響き渡る。


「俺は異星人組織『アルスター』の幹部だ! この電車の終点……小木窪をヒーローに奪還されたな……!

ここにいる奴らを殺されたくなかったらヒーロー本部に連絡しろ、『小木窪をアルスターに返還しろ』ってよ! 」


なんともタイミングの悪い時に異星人に遭遇してしまった。

「アルスター」…?ブラックホール団以外に異星人組織があったとは初耳だ。


「ああ……あの人、最近コズミック5が仕留めた人たちだ。

残党が逃げたとは聞いてたけどこんな電車の中に……ついてないなあ。」


「言ってる場合!? どうすんのよ。」


「皆さん、ちょっと通路開けて下さいねー。」


レッドが言うと、乗客たちは戸惑い気味に通路を開ける。

彼はそこを悠々と通り、私は震えながらその後ろをついて歩いた。


「あの」


レッドは異星人に臆することなく声を掛ける。


「あ?何だガキ……」


「そのお姉さん、俺の家族なんです……人質にするなら俺じゃ駄目ですか?

人質は子供の方がきっとヒーロー本部も対応を急ぐと思います。」


「……それもそうだな。

おい、こっちに来い! 変なもんは持ってねえようだが……何だこれ?甘いもんばっかじゃねえか。」


レッドのポケットを漁りながら、異星人の男が呆れた様に彼を見る。


「子供なので、お菓子が好きなんですねえ。」


「何で他人事みたいに言ってんだ…?

 まあいい、お前ら離れろ!このガキがどうなってもいいのか!」


瞬間、レッドが私に目配せをした。

なるほど、そういう事か。


私は厚い氷の壁で二人を囲むと、レッドの炎が壁の中で舞い上がる。

異星人の断末魔が聞こえ、氷が溶けると異星人の男は白目を剥いてその場に倒れ込んだ。


「あはは、お騒がせしましたー。

あ、丁度目的地に着いたね! 」


彼はそう言うと異星人を担いでそのまま電車を降りた。

私はレッドのあまりの強さに驚愕していた。

レッドが敵に回ってしまったら、一体どうなるのだろう?

そんなことを考えながら私はレッドに続いた。

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