もう1つのコズミック7?
「リリア……本当に大丈夫か?倒れたって聞いたけど。」
研修後、研修室で私の顔を見ながらゆかりが心配そうに言う。
「尊死した」とはとても言えず、私は真っ赤な顔で「大丈夫よ」と強がることしかできなかった。
(最近はあんまり無かったのに……思い出すだけで尊……腹が立つわ、ナギの奴!)
「そ、それよりゆかり!ロクタのことについて話したくて……」
恥ずかしいのをごまかすように切り出すと、ゆかりは「おっけ」と短く返事して開いていた資料をまとめだした。
「あれだろ、戦闘面的なそういうのを聞きたい感じだよな。」
流石ゆかりといった具合に、彼は私の聞きたかった情報を先回りして提示してくれる。
「そう!まさにそれについて話したかったのよ!」
目を輝かせながら返事すると、ゆかりは「ちょっとこっち来て」と言ってどこかに歩き出した。
……
――連れてこられたのは、大きなプロジェクターのある部屋。
プロジェクターの正面には長いテーブルとパイプ椅子が少々不揃いに置かれている。
あまり使われていないためか妙に埃っぽかったが、広々としていてかなりの人数が入れそうな規模だった。
「研修では使わないから新鮮でしょ、メンバーはたまに使うんだけどなこの部屋。」
それだけ言うとゆかりはスマホをプロジェクターの前の機械を操作しはじめる。
すると程なくしてプロジェクターにゆかりのスマホ画面が映し出された。
「何が知りたい?戦闘傾向とか?」
振り向きながら確認するゆかりに、私は「能力を使ってるところを見せて欲しいの」と頼み込む。
ゆかりはそれを聞いて目を丸くした。
「なんで!?ロクタは能力使わないんだろ?」
「今回に限りヒーロー側も能力を使っていいことになったの。だからロクタが能力を使用している所を見せて欲しい。」
その言葉を聞いて、ゆかりはスマートフォンを操作するとプロジェクターにロクタの姿を映し出した。
「緑太の能力は『機械の操作』……初めて使うような機械も操作可能って、結構すげえ能力なんだけど。
戦闘中はあんまり色々持ち込めないだろ?だから大体『隊』を率いて戦うことが多い。」
「『隊』……?」
隊と言う単語にピンと来ず首を傾げていると、
プロジェクターに映し出されたロクタの後ろから5人のパンダ頭が出てくる。
その向かい側には、触手の生えた怪人がうめき声を上げながら立っていた。
(まるでコズミック7みたい……あれ、まさか!?)
嫌な予感が当たったのか、1人の白いスカーフを着けたパンダが怪人に飛び込んでいくと、怪人に思いきり殴りかかる。
この軽快な動きと武器をあまり必要としないスタイルはどこかフユキを彷彿とさせた。
続いて、ダガーを抜きながら黄色いスカーフを着けたパンダ頭が白いスカーフのパンダに助太刀する。
黄色は一瞬触手に弾き飛ばされそうになるものの、縄跳びのように飛んで交わすと触手を一本切り落とした。
この対応力……このパンダはゆかりの動きに似ている。
白のスカーフと黄色のスカーフのパンダが触手の大半を切り落としたところでピンクのスカーフのパンダと青いスカーフのパンダが遠くからワイヤーガンを撃ち込み怪人の両端にワイヤーを引っかけると、そのままぐるりと回って一瞬で怪人を捕捉した。
そして最後、黒いスカーフのパンダに守られながらパワードスーツを着たロクタが怪人に近付くと、ダガーの柄で腕にはめ込まれたチップを強打し、破壊する。
――1人足りないが、間違いない。
このパンダたちは……コズミック7のメンバーの動きを参考にして動いているのだ。
プロジェクターが真っ白な画面に戻ると、ゆかりが「どう?参考になった?」と尋ねてくる。
「……簡易コズミック7って感じね……」
私が呟くと、ゆかりは「まあ、そんな感じだな。」と言いながら顎に手を当てた。
「でも武器がないとロクタは戦えないし……能力の使用許可だけ降りてもそんな意味ないと思うけど。」
宙を見つめながらゆかりが口にすると、私は「武器の使用も認められてるわ」と補足する。
ゆかりはそれを聞いて「ええっ!?」と声を上げると顔を青ざめさせた。
「それって、何個までって話だった?」
「私が持ち込めば持ち込むだけ、ロクタが持ち込める武器の個数も上がるってルールだけれど……」
「あんたは何個持ち込む予定なのさ?」
ゆかりの問いかけに、私は頭を悩ませる。
怪人化チップにどれほどの種類があるかはわかっていない、通常であれば一つ持ち込めば十分な様に思うが……作戦によってはもっと多くの種類を使い分ける可能性もあるかもしれない。
「……まだ決めてないわ。」
眉を八の字にして答えると、ゆかりは真剣な顔で
「なら先に忠告しとく、最低限の武器だけで挑むべき。
あんたが武器を持ち込めば持ち込むほど、あのパンダの数が増えると思った方がいい。」
と忠告してくれる。
プロジェクターに映し出されていたパンダ達は、それぞれがメンバーの特徴を持ちながら動いていた。
コズミック7の皆が能力無しでも十分強いことを私は知っている。
1人でも加勢されれば、かなりの苦戦を強いられるだろう。
(強い怪人化チップだけ持ち込んで、短時間で勝負を挑むのが効率的かしら。
例えばそう、龍族とか……それならウリュウとかにも少し話が聞けるだろうし。)
「ありがとうゆかり、かなーーり参考になったわ!」
笑顔で礼を言うと、ゆかりはいまいち冴えない顔で「よかった」と呟く。
「……どうしたの?暗い顔して。」
尋ねると、ゆかりは苦笑しながら
「あ、やっぱりわかる?なんだか複雑だなと思ってさ……緑太は結構可愛がってた後輩だから、どっち応援したらいんだろって思っちゃって。」
と言う。
(そういえば……前にロクタが言っていた『私と同じ言葉を掛けた人』って、あと一人残ってたわよね?
これだけ心配そうにしてるし、やっぱりゆかりだったのかしら。)
少し興味が湧いて、私はゆかりに「ねえ、ロクタにあなたの発明は凄い、もっと誇っていいんだって言葉をかけたのって、あなた?」
と尋ねる。
するとゆかりは否定するでも肯定するでもなくきょとんとした顔をしていた。
「俺じゃないけど……すっごい聞き覚えあるわそのセリフ……!なんだっけな、確か……」
暫く悩んだ素振りを見せた後、ゆかりは何かを思い出せたと言わんばかりに明るく笑い
「そうだ!凛太郎が言ってたんじゃん!」
と言い放つ。
(凛太郎が……?)
「凛太郎って緑太の同期なんだよ、そんで研修中にそんなこと言って励ましてるとこ、見たことある。」
ゆかりのその言葉に、私は妙な悪寒を感じる。
凛太郎とロクタが研修室で出会った時、異様に親しげだったこと、ロクタが凛太郎を見送る時心配そうだったことを思い出し……何かが、不穏に思えた。
「あの……ゆかり、その……『本物の怪人化チップ』について……知ってる?」
恐る恐る尋ねると、ゆかりは目を瞬かせた後で「え?本物とか偽物とかあるの?」と口にする。
(あれ……)
正体のわからない不安が心の中に渦巻き、戸惑っていると……不意にプロジェクタールームの扉が開く。
「あ、いたいた。リリア、なんかフユ吉が探してたよ。
用事終わらせたらすぐ来てってさ。」
声の方に振り向くと、そこには気怠そうな顔をした凛太郎が立っていた。
私は凛太郎の元に静かに歩み寄ると、彼の顔をじっと見る。
「な……何?顔怖いよ。」
「ねえ凛太郎……ロクタに怪人化チップの被検体を名乗り出たのって……あなたなんじゃない?」
そう言い放つと、凛太郎は柄にも無く動揺した様子で目を見開き……絶句していた。
3日前くらいからインフルエンザになってしまって、後々見た時にこの期間に書いた回を修正するかもしれません。
それと投稿に穴が空く可能性があります。




