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決意

私ならどうしてた、か……

勿論エリヤを倒す為に動いただろうし、今それを伝えて「ナギも一緒に戦いましょう!」と言うこともできる。

しかしナギの頭の中では私との思い出がそのままエリヤとの思い出になっているから、そう簡単にかけられる言葉でもない。


(ナギが私を思い出してくれたらいいのに。)


そんな甘い考えが頭をよぎったので、即座に首を振る。

今更そんなことに期待したってどうにもならない。私がナギに言えることなんて、今は一つしかないだろう。


「私にも……考えはある。でも今あなたにそれを言っても決断の邪魔になるだけ。

だから……言えないわ。」


ナギの背中を真っ直ぐ見ながら言うと、彼は小さく「そうだよな」と呟く。


「でも、一緒に悩むくらいならできる。その、相談があったら聞くから……また話してよ、今日みたいに。」


「女の子に相談するヒーローなんかかっこ悪いでしょ。

……ごめんな、変なこと言って。」


そう言ってナギはドアの方向へ歩き出した。


(このまま見送ったら……駄目な気がする。)


私はナギに早足で近付くと、彼の手を掴み引き寄せる。

振り向いたナギの表情は不安に満ちていて、泣き出しそうな顔に見えた。

手を掴んだはいいものの何と声を掛けたらいいかわからず、咄嗟に

「ナギ……私を見て!」

と声を上げる。

ナギは驚いたように目を大きく見開いていた。


「あ……えっと……」


自分でもとにかく何か言わなくてはと投げやりにかけた言葉に先を見失う。


(私を見てって……なんか重くない?)


「あの……さ。エリヤさんが好きだから迷ってるんでしょ?

そういう時は私を見て。私は答えを出してあげられないけど……一番あなたを知ってて、あなたが本当はどうしたいかも知ってる。

私の中のナギは……いつだって揺らがないから。」


何とか会話を繋げようと無理矢理そう言葉を投げると、ナギは言われたとおり穴が開くぐらいに見つめてくる。

自分で見ろと言った手前やめてとも言えず、私の顔は赤くなるばかりだった。


「……リリアの中の俺って、どんな?」


唐突にそう尋ねられ、私は少し考える。


ナギは……ブラックは、いつも苦しんでいる人と言うイメージだった。

今まさにエリヤを裏切るかどうかの決断を迫られているナギの姿は、アニメのブラックを彷彿とさせる。


「迷ってばっかりで……いつも正義って何かとか、憧れとのギャップとかに苦しめられてる……人……」


そう呟くと、ナギは苦い物を口に入れたような顔をする。どうやらかなり図星を突いてしまったようだ。

私は息を整えると、覚悟を決めて再び口を開いた。


「でも……最後に出す結論だけは、絶対に間違えない。そんなブラックが……私は大好きだった。

だから、怪人だからとか、私の知られたくない情報を上に報告されたとか、そんなことじゃ私はあなたを見捨てたり諦めたりしないわ。

ナギが……ナギでいる限り、私はあなたから離れないから。」


言い切ると、ナギの目が少し潤んでることに気付く。

ナギは私の頭を軽く撫でると

「ありがと、俺の一番の理解者がリリアで良かった。」

と言って微笑むと部屋を後にした。


ナギの手はただ少し冷たくて、彼が去った後もすこしその温度だけが残っている。


(ゾワッってしなかった……敵意が薄れてる?)


少しうるさい胸の鼓動を抑えながら、私は明日に備え寝ることにしたのだった。


★ ★ ★ ★


――後日、私はいつものように研修室に向かう。

すると受付の方が嬉しそうに何か噂話をしているのが目に入った。


(……何かあったのかしら?)


不思議に思っていると、「おはよう」と声がして振り返る。


……そこには、髪を黒く染めたナギがいた。


私はそれを見て思わずフリーズしてしまう。


「昨日さ……色々……考えたんだけど。その答えを今話してもいい……?あ、急いでるなら別にまた今度でもいんだけど……」


ナギは少し気恥ずかしそうにしながらこちらを見る。

私は固まった唇を何とか動かすと、「ドウゾ」と短く返事をした。


「俺は昔、あの人のことが確かに好きだった。だからいつか元の彼女に戻ってくれるって、信じて支え続けて来たけど……もし彼女が取り返しの付かないくらいの間違いを犯したとして。

一緒に間違えて、泥沼に沈んでいく選択をするのはきっと……俺じゃない。」


そう言い放つナギの瞳には、いつか見た闇ではなく微かな光が宿っている。


(本当に……アニメで見たブラックみたい……!)


「だからさ!もし、あの人が黒だったら……俺、あんたらと一緒に戦う。

……どう?リリア、あんたの中の俺って……こうだった?」


「え!?ええ……!すごくブラックだと思うわ。」


震えた声で答えると、ナギは胸に手を当てて安堵したように微笑む。


「かみ……!髪は……!何で戻した……の……?」


「え?ああ……もう逃げないぞって意志表明と……」


ナギはそこまで言いかけると私の顔を見て少し意地悪な笑みを浮かべる。

そして私の顔を両手で掴み引き寄せると

「誰かさんの好きなタイプが黒髪だったから。」

と口にした。


(ブラックの顔が……こんなに近く……!?)


アニメで見たままのビジュアルで出てきた推しを間近で見てしまったことで、情緒を狂わされ、頭は沸騰しそうな程に混乱していた。


「な……なーんてな!?はは……びっくりした?別にあんたの為に黒髪にしたわけじゃないけどねー……」


ナギは顔を赤くしながらそう言って離れる。

私は尊みに似た感情が溢れると、意識が遠のいていった。

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