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不正解連発

「ん……」


夜も深けてきた頃、ナギが唸りながら目を開く。


「あ!やっと起きたわね。」


言うと、ナギは暫くボーッと私を見たあとで、握られている手に視線を落とす。

そして、段々とその顔が赤くなっていった。


「わー!え、何……ここどこ!?」


「私の家だけど……夜中だからあまり騒がないで欲しいの。」


冷静に伝えると、ナギは目を白黒させながら

「ごめん……あの、俺……!」

とただただ焦り出す。


「もしかして覚えてない?あなた私と話した後で倒れたのよ。

でも病院は嫌だって言うから家に連れてきたの。」


その言葉を聞いて、ナギは数秒フリーズした後、震えながら布団の中へと消えていく。


「えっ何……どうしたのよ!?もー……訳わかんないわねあなたって……」


まるで(まゆ)のようになってしまったナギを見て、私はため息を吐いた。


……数分後、慣れてきた猫のようにナギは布団から顔を出すとこちらの様子を伺う。


「何?なにか必要?」


尋ねると、ナギはやっと布団から出てきて

「違う……ごめん、迷惑かけたみたいで。」

と口にする。


「別に私はいいけど、明日は休んだ方がいいってあかりが言ってたわよ。」


「あ、ピンクさん来てたんだ。それは更に悪いことしたな……」


「どうして病院を嫌がったりしたの?あなただって怪我や病気くらいするでしょ。」


質問を投げられたナギは、深刻な顔をした後で自分の腕を抱えた。

何やら訳ありのようだ。


「……言いにくいことなら言わなくてもいいわよ。」


「いや、迷惑かけたし言う。……俺……怪人になっちゃったみたいなんだ。

しかも怪人化チップが流行る前から。」


その衝撃的な言葉に、思わず「え!?」と声を上げる。


「ヒーローになってから初めて健康診断を受けた日、俺……身体が異星人みたいな構造だって……言われて。」


(…………あれっ)


すぐに違和感に気付くも、震えながら言うナギの姿に「あなた元々異星人じゃない」などとは言えず、私は黙り込んだ。


「そこで伝えられたんだ……俺、エリヤさんと一緒にいた時にキャトルミューティレーションされたことがあったらしくて、その時改造されたんじゃないかって……!

だから詳細がわかるまでは医療機関を避けるべきだとエリヤさんに言われたんだ……」


(なーるほど……そういう風に処理したんだ。雑に誤魔化したわね……)


呆れていると、ナギは辛そうに

「軽蔑した?」

と言って目を伏せる。


「そんなことないわ。私も異星人なのに何で今更軽蔑しなきゃいけないのよ。」


「……リリアはヒーローが好きだから……怪人だと嫌かなって……」


ナギの答えを聞いて私はジトッと彼を睨む。


「ヒーローは怪人でも異星人でもなれるわ、馬鹿なこと言わないで。」


軽く伝えただけの悪態だったが、ナギはその言葉を聞いて目を輝かせた。


「……本当にそう思う!?じゃあ俺怪人でも問題ないな!」


ナギは言い切るとご機嫌にベッドから降りて私の部屋を見回す。

そして神棚に目をやると

「あ、俺のグッズだ。……何で昔のやつばっかなの?」

と尋ねてくる。


「黒髪だからよ。言ったでしょ、茶髪似合ってないって。」


軽蔑に言うとナギは私の顔をバツが悪そうに見やった後、「これには事情があるんだよ」と呟いた。


「事情?」


「黒髪にすると……その、特定の人に好かれすぎるっていうか……凛太郎も同じ理由で髪明るくしたんだぜ。

初めは黒髪だったけど……」


(特定の人……?好かれすぎるとまずい人なのかしら?)


「でもそろそろ戻そうかな……?最近この色にも飽きてきてたっていうか……」


前髪をくるくると指で巻き込みながらナギはチラチラとこちらを見る。


「そう?でも事情があるならそのままでもいいと思うわよ。」


正直な感想を述べると、ナギはバツが悪そうに黙り込んだ。


(え、何か間違えたかしら……?やっぱり今のナギはちょっと精神構造が複雑だわ。)


そしてナギがまた神棚に目をやり、「あ、これ……コズミック5のキーホルダーじゃん!」と声を上げる。

――彼が見ていたのは、かつてナギが私にプレゼントしてくれたキーホルダーだった。


「俺も同じやつまだ持ってるよ。この時代のコズミック5イケてたよな!」


嬉しそうに笑うナギを見て、心が軋む。


「……そうね。それ、友達がくれたのよ。宝物なの……」


顔を伏せながら言うと、ナギは何かを察したのかこちらにゆっくり歩み寄り隣にしゃがみ込む。


「……何?」


「久しぶりにその顔してるなって思って。その友達ってさ、海で会った時言ってた人でしょ。」


「……そうよ、よくわかったわね。」


「リリアがそいつの話してる時、辛そうだけど特別そうにもしてるから。」


感覚的に……ナギにもわかるみたいだ。

私は悲しい気持ちを押し殺すのに必死で、ナギの顔を一切見れずにいた。


「……ねえ、笑ってた方があんた可愛いぜ。」


ふいにかけられた言葉に、私は驚きナギの方を見やる。


「俺、海でリリアに会った時もそう思ってたんだよ。

なんか辛そうで、ほっとけなくて……このイケメンである俺を見たら元気出るかなと思って話しかけたのに全然相手してくれなくてさ。」


膝を抱えながら、ナギは宙を見つめていた。


「そんでやっと話した後でわかった。……この子は、誰より俺の仮面の下を……『俺』をよく知ってる人だって。」


「……ええ、あなたのことはよく知ってるつもり。」


「でも再会して、リリアが雑用係に落ちた時思った。

俺の1番の理解者はもう俺に笑顔を向けてくれることはない、もし向けてくれたとしても……真実を知ったら軽蔑される……と、思ってたけど……」


ナギは言いながら膝の上で指を組む。


「想像より関係が壊れなくてほっとしてる。

別になかったことにしようとか、勝手に許された気になってるわけじゃないよ?

でもほら、こうやって部屋に入れるってことはその……少なくとも信用はされてるわけじゃん。」


「当たり前じゃない、あなたを警戒なんてするわけないわ。」


少しナギが可愛く思えて微笑みかけると、ナギは「へえそう、よかった。」と言い拗ねた顔をする。


(あれ、また間違えた……?)


何が正解だったのか考えていると、ナギは持ち直したようにまた笑みを浮かべ

「だから……笑って。その方が絶対あんたに合ってる。」

と言い放つ。


「ありがとう。」


私は言いながら、最大限の笑みを返した。


「……あ、やば!思ったより遅い時間だったんだ。流石にこのままお邪魔しちゃ悪いな、帰るわ。」


ふと時計を見やると、ナギは焦ったように鞄を掴み歩きだし、何かを思い出したかのように足を止める。


「なあ……まだ迷ってるんだよ、俺……もし、もしエリヤさんが本当に悪事を働いてたら、どうするべきなのかって。

フユキと違って優柔不断で……すぐ答えが出せないんだ。

もしリリアだったらどうしてた?」


後ろを向いたまま問いかけるナギ。

表情が見えないようでいて、その握られた手の震えからは迷いが滲んでいた。

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