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心の声

コズミック7のメンバーが体力テストを受けている最中、凛太郎はヒーロー本部の資料室で、「サンダーファルコン」という隊の資料を見ていた。


資料室には電気が付いておらず、凛太郎の懐中電灯が埃を照らしている。


(いた!サンダーファルコンのイエロー……脱退したのは知ってたけど、理由は能力の消滅だったのか……数年前から増えたよな、この病気……)


資料をスマートフォンで撮ると、次は「レインボージェット」の資料に手を伸ばす。


すると、そこで「誰かと」手がぶつかった。


「――――っ!?」


凛太郎は必死に声を押し殺しながら横を見やる。

するとそこにはミカゲが人差し指を口にかざして立っていた。


「お静かに、俺も潜入しているので……バレたらまずい。」


小声でそう言い切ると、ミカゲはゆっくり資料を取り出して凛太郎に手渡す。


「『彼女』について……ずっと調査されていると、赤松さんから伺いました。」


ミカゲの穏やかな笑みを不気味に思いながらも凛太郎は資料を手に取る。


「……まあね、上司のことは誰だって良く知っておきたいでしょ?」


「俺も『彼女』の失脚を狙っているんです。と言っても、メインは『あの子』の護衛ですが……どうです、手を組みませんか?

裏で動く人数が多いといつか衝突する、貴方の邪魔になる前に協力関係を結びたい。」


「最初は役割以外こなさないって顔してたのに、どうしちゃったの?あんたは俺と同類なんだと思ってた。」


凛太朗が言うと、ミカゲは少し口を押えたあとで

「少々……ストレスのラインが振り切れまして。あまり立ち入って欲しくない場所を土足で踏み荒らされたものですから。

貴方のように役割を徹底できなくてお恥ずかしい限りだ。」

と困ったように笑う。


「恥ずかしいって思うんならあんたはそのメインに力を入れなって。

優秀なのは知ってっけどさ、俺はこの調査に3年も費やしてんだぜ?一人で花持たせてよ。」


凛太郎が言うと、ミカゲは少し困ったように腕を組んだ後で口を開く。


「……死ぬ気……らしいですね?」


それを聞いて、凛太郎はピタリと動きを止めた。


「正確に言うと、全てを達成出来れば死んでもいいと思っている、とか。

貴方が以前研究室で出会った赤髪の異星人は心の声を聞けるんです。」


ミカゲの鋭い視線を見れずに凛太郎は俯くと、

「そう、じゃあ聞き間違いじゃない?俺は誰より長生きするつもりだよ。」

と答える。


「お兄様は、貴方が犠牲になろうとすることを知れば悲しむでしょうね。」


「そーだよ?だから死ぬ気は無いって。」


「……強情なお人だ。いつかその嘘を引っぺがして差し上げます。」


「俺、そもそも嘘吐いた記憶ねーし、まあ頑張れ。」


凛太郎が言うと、ミカゲは少し凛太郎を睨む。


「あ、そうだ花岡君?リリアがこの前『ミカゲさんの素顔って、少女漫画のヒロインみたいな感じかもしれないわ』って怖がってたよ?」


凛太郎が失笑混じりに言うと、ミカゲは間抜けな声で「えっ?」と漏らす。

その声は少しだけ広い資料室にこだましたのだった。


★ ★ ★ ★


「リリア様ー!こっちは準備できてます!」


遠くからフユキがそう言って手を振ってくれる。

休憩を終えると、私はストップウォッチを持ってグラウンドにヒーローたちを集めた。


これから……50メートル走と100メートル走の計測を始める所だ。


私はフユキに手を振って合図すると、フユキがこちらに向かい走ってくる。


「5秒72!」


わかってはいたものの、やはりナギ、フユキ、焔の記録は群を抜いていた。


(世界記録更新できるんじゃ……)


アニメを見ているだけでは気付けなかった数値を目の当たりにして、改めて私はコズミック7が超人集団であることを思い知った。


恐れていると、あかりの後でロクタがこちらに走ってくる。


(あれ……?凄く早い。)


「6秒27!」


焔達の記録で麻痺しそうになるが、その数字はかなり優秀なものだった。

記録を読み上げると、ロクタは嬉しそうに笑顔で振り向く。


……なるほど。スタミナはないものの、瞬間的な速さなら上澄みなのか。

だから戦闘での反応も早かったんだ。


私はロクタにグッドサインを向け、にっかりと笑った。


……


一通り記録を終え、一息つく。


「はあー……終わった。」


そう零すと、あかりが私のおでこに冷たい何かを当てながら

「お疲れ、飲みな!」

と口にする。


見ると、近くのタピオカ店にあるライチソーダだった。


「わー!私これ大好きなの!ナタデココも入ってる……!」


「よくそのトッピングで飲んでるってアンナちゃんが言ってたから。」


「ありがとう!」


私は嬉々としてそれを飲むと、爽やかな笑顔を浮かべる。


「……で、ヒーロー達の身体能力データは模擬戦の役に立ちそ?」


あかりが言いながら休憩しているヒーロー達を見ると、私は少し顔を曇らせた。


「役には立つだろうけど……特にナギと焔は人間離れしてて戦うのが怖くなったわ。」


「はは……間違いないね。俺もあの二人とは極力戦いたくないもん。」


あかりが呆れたように言ったところで、ナギがこちらに歩いてくる。


「お……僕のこと話してなかった?」


あかりをチラリと見た後で、ナギがそう言い放つ。


「話してたわよ、凄い記録だって。」


「そうでしょ?凄かったよね、僕の記録。」


ナギはそう言って、少し照れ笑いした。


「前灰原君に聞いたんだけどさ、須藤……さん、って、僕のファンらしいじゃん。ファンクラブにも入ってるって。」


「あ……ええそうよ。」


「じゃあ今日僕の記録見てより推したくなっちゃったんじゃない?」


ナギにそう尋ねられると、私は無言で首を傾げる。


「あれ、何その反応。」


「凪人君も意外に焔君みたいなタイプなんだね……」


あかりがそう呟くと、ナギは頭の上に?が浮かんでいるような顔で私とあかりを交互に見た。


「リリア、俺の方が凪人より凄かったよ?だからブラックのファンクラブは辞めて俺のとこに入りなよ。」


唐突に背後から現れたかと思うと、焔が私を見下ろしながらそう言い放つ。


「……あれー?レッド隊長ってこの前『リリアは俺のファン』とか言ってませんでしたっけ?

なのにファンクラブにも入られてなかったんだー」


ナギが爽やかな笑みで言うと、焔も穏やかな笑みを返しながら

「その代わり俺とリリアは距離が近いもん。

凪人は結局『推しとファン』の関係だから、リリアのこと下の名前で呼んでないもんねぇー?」

と切り返し、お互いが睨み合う。


あかりと戸惑っていると、白い手が伸びてきて私の手を掴む。

そしてナギと焔に挟まれていた私を引っ張り出してくれた。


「もー、リリア様が困ってるじゃないですか!2人とも喧嘩しないでください。」


「フユキ……!」


(た、助かった……!)


「リリア様、ちょっと話したいことがあって……俺とゆかりくんの部屋来れますか?」


「あっ……え、ええ!行けるわ、丁度ゆかりとも話したかったし……変装する時間だけ頂戴!」


そう答えると、焔が「打ち上げ?俺も行きたい!」と口にする。

どうするかと言わんばかりにフユキが目線を向けるので

「焔にも話したいことがあったし、来てくれたら助かるわ!」と返事をする。


フユキは「じゃあ隊長も一緒に」と言って歩き出す。


ナギはそれをどこか悲しそうな顔で眺めながら、「またな」と小さく呟いて手を振った。

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