俺がいい
ご飯を食べた後、私はシノとカラオケに入る。
その間、ウリュウやミカゲさん、焔には別室にて待ってもらうことになった。
「急に声掛けてごめんね、シノ……」
「心の声でなんとなく要件はわかったからいい。……俺様にヒーローとの協力をして欲しいって?」
「まあ……そうなるわね……ロクタに協力してくれないかしら?」
「……どうかな。俺様、他人の為にひょいひょい手を貸すのは好きじゃねえし……そのヒーローが本当に善意で俺の協力を必要としてんのかも定かじゃねえからな。」
「な、何か必要な事があるなら言って!個人的な出資だってできるし、なん……で、できる範囲のことであれば力になるわ。」
言うと、シノは少し困ったように笑ったあと
「そいつに1度会わせろ、どっちにしろウリュウから研究に加わって欲しいという話は来てるからな。
どういう奴か判断してから協力するか決めてやる。」
と口にする。
その言葉を聞いて、私は笑みを漏らした。
「おい、何勝手に『シノなら協力してくれると思ってたのよ!』とか考えてんだ!別に合意した訳じゃねえぞ。」
「ご、ごめんなさい……そうよね、気が早かったわ。」
しかし、私はロクタのあの訴えが嘘だとは思っていない。
シノがロクタと会えば、きっと力を貸したいと言ってくれることだろう。
安堵していると、隣から焔の叫びが聞こえてくる。
「な、何ごと!?」
「行かなくていいぞ。どうせしょうもない……」
「で、でも急に怪人に襲われたりしたのかもしれないし……!私ちょっと見てくる!」
シノの静止を振り切り走りだすと、シノはやれやれと言った様子で首を振っていた。
「焔、大丈……」
「やだー!リリアの婚約者で俺より顔のいい奴にポーカーで負けたとか信じたくない!もう1戦!もう1戦だけ……!」
急いで隣の部屋の扉を開けると、焔がカードの山に伏している姿が目に飛び込んでくる。
「……何やってんのよ、あんたたち。」
呆れながら言い放つと、ウリュウが涼し気に「リリアたちを待ってる間にポーカーでもしようという話になってね。しかしかなり負けず嫌いなお方だ、何度か負けただけでこの通り悔しがってしまって……
この豪運が憎いなあ、一度も負けて差し上げることができないとは。」
と言う。
(絶対イカサマしたでしょ、この男……)
「な、しょうもないって言ったろ?」
隣の部屋から来て、関心無さそうに呟くシノ。
私はそれに「そうね、あなたの言う通りだったわ」と返した。
……
改めてウリュウ達の部屋のソファに座ると、程なくして冷静になった焔がミカゲさんに向き直る。
「それで……今回の件は一体何だったの?俺、まだ一言も説明してもらってないんだけど。」
焔が尋ねると、ミカゲさんはにっこりと微笑みながら
「風の噂にて怪人組織がヒーロー本部を襲撃しようと企んでいるという情報を耳に入れまして。
ヒーロー本部にいる以上黙って見ている訳にはいかないと思ったのです」
と答えた。
「それにしたって俺やメンバーに相談するとか、ヒーロー本部に通報するとか……いや、違うな……『花岡君の功績』にしたかったのか……元から提携を狙ってて、これが好機だったと。」
焔がじとっとした眼差しでミカゲさんを睨むと、ミカゲさんは眉をハの字にしながら
「そんな滅相もない……急いでいて報告を忘れてしまっていたのです。
異星人と言えど、私も人間ですから。」
と口にする。
あまりの白々しさにシノまでもが焔と同じような眼差しでミカゲさんを見つめていた。
「……まあいいや、地球人に危害を加えた訳じゃないし、今丁度ヒーロー本部は異星人の手を借りたいと思っていたタイミングだったからね。
先刻も少し話があったと思うけど、ブラックホール団の皆様にも怪人化チップの情報は入っているでしょう?今ヒーロー本部あれに手を焼いているんです。」
焔が真剣な表情で言うと、3人の幹部たちは1度顔を見合わせる。
そしてウリュウが静かに口を開いた。
「聞いているよ、実に奇妙だ。良ければ僕の隣にいる彼……シノも怪人化チップの研究に協力させて貰えないだろうか?彼は優秀な技術者なんだ。」
ウリュウが言いながらシノ顔を見るとシノは少し顔を逸らし
「あんたらが信頼に足る人間かどうか判断してからだ、俺はボスの言うことだろうが簡単には聞かねえ。」
と言い捨てる。
「……失礼。シノは人の心の声が読めるという能力を持っていてね……警戒心が少し強いんだ、非礼を詫びよう。」
ウリュウが言うと、焔は少しだけ険しい表情を緩め
「そう、うちの弟も嘘を見抜ける能力者で……陽気に振舞ってるけど、かなりの人見知りなんです。」
と言ってシノを見る。
(弟って……凛太郎のことよね?あいつが人見知り……?)
「……でも、協力を検討頂けるだけでもありがたい。
明日にでもコズミックグリーンと顔合わせをお願いできませんか?」
焔が言うと、シノは無愛想に「仕方ねえな、会ってやる。」と答えた。
「正直ちょっとリリアが事務所でどう過ごしてるかも気になってたんだよなぁ。
お前さんいい男に囲まれてちょっと気持ちが浮ついてんじゃねえの?そのニヤケ顔を拝みに行ってやるよ。」
シノが言いながら意地悪な笑みでこちらを見ると、私は真っ赤な顔で
「別に浮ついてなんかいないわよ……」
と呟く。
「そうだよシノ、こんな美形な婚約者がいたらどんな色男が事務所いようが『眼中にだって入るはずない』のだから。」
ウリュウが勝ち誇った顔で私の肩を引き寄せると、焔の頭が少しだけ燃える。
ミカゲさんはそれに気付くも特に焦る様子もなくコーヒーを呷り、シノはケラケラと笑いながら2人の様子を眺めていた。
……
「それじゃ、僕たちはそろそろ帰るとしよう。
色々とお騒がせして申し訳なかったね。」
ウリュウが言いながら席を立つと、シノとミカゲさんもそれに続く。
そしてウリュウは少しだけ立ち止まると
「……焔君……少し、伺ってもいいか。個人的なことなんだが……」
と切り出す。
「?……はい、どうぞ。」
「コズミックブラック……ナギは……元気だろうか。」
ウリュウが少し悲しそうに尋ねた。
「はい、元気にやってますよ。もしかして彼のファンですか?
もし良ければ個人的に紹介を……」
焔が言い切る前に、ウリュウは「元気ならそれでいいんだ。今は……会うべきじゃない。」と言ってそのまま部屋を出る。
焔はそれを不思議そうに見送っていた。
――――
「ごめんね、こんな時間まで付き合わせて。」
私の家の前で焔が言う。
「大丈夫よ、こちらこそありがとう。あなたがいなかったら私もミカゲさんも危なかったわ。」
そう返すと、焔は少し目線を落とした後で私を見て
「皆……君が好きなんだね。」
と、唐突に言う。
「はあ!?いや何の話……!?」
「今日来てたブラックホール団のボスとイケメン幹部、どっちもリリアのこと好きそうだった。わかるんだ……何故か。
花岡君もあんまり態度には出さないけど、君のこと大切にしてるって、そんな気がする。」
珍しくモジモジとした様子の焔を見て、私はその違和感に少し戸惑ってしまう。
「まあその……仲間だし、お互い大切なのなんて当たり前でしょ?彼らだけじゃないわ、私は焔やコズミック7のことだって……」
「そうじゃなくて」
言いかけた所で、焔が少し大きな声でそれを遮る。
「皆大事な中の1人じゃなくて、1番大事なのは……俺が良かった。」
「えっ」
ほぼ告白のようなセリフに私の頭は思考をやめてしまう。
(お、落ち着け、これは罠よ!どうせまた後から「リリアはおもちゃだから」とか言い出すに決まってるんだから!)
「は、はいはい……?私の反応を見て面白がってるのね、悪趣味な奴」
「違う。俺は……俺のことを心配してくれる人はリリアが良くて。
そのリリアが俺のこと、誰よりも好きで、必要としてたら……それが1番良い。」
まっすぐこちら見てそう言い放つ焔の赤い瞳を見て、私の心臓は高鳴っていた。
年越しギリギリになってすみません……
良いお年を!来年もよろしくお願いいたします!
アンケート結果は23時59分に確認して、0時に何かしらアナウンスすると思われます。
ゆっくり確認頂けると幸いです。
※私も初めて結果を見るので、少し確認に時間がかかったらすみません。




