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提携

「青柳さん、リリアに潜入をさせたのは……俺なんです。」


焔の言葉に、部屋にいた全員が驚いた顔で彼の顔を見やる。


「赤城君……君は何を言っているのかわかっているのか!?」


「勿論です。1度正式な手法で手続きしようとしましたが、『異星人だから』と理不尽に断られまして……」


取り乱したように声を上げる青柳さんに対し、焔はあくまでも落ち着いた様子でそう告げた。


「おかしな話ですよね……『異星人の役員』が異星人を入れることを拒み……あまつさえ、異星人が経歴詐称をして潜入しているなどと重役に告げ口するだなんて。」


笑い混じりに言う焔に、青柳さんは言葉を失ってしまう。


「焔ちゃんはなんの狙いがあって異星人をここに入れたの?」


青柳さんに代わり、黄色いスーツの男が焔に尋ねた。


「以前より、コズミック7内部でメンバーを貶めようとする存在の影を感じておりまして……その調査をお願いしたかったのと……」


焔は言いかけて、迷ったような仕草で黙り込む。


「………続けなさい。」


赤松に言われ、焔は重い口を開いた。


「ヒーロー本部の人間が、怪人化チップを購入しているという怪しい噂を聞きつけまして。」


(前にナギが言ってたことだ……!)


焔がそう言うと、重役たちの額に汗が滲み、それぞれが動揺の色を見せた。


「ヒーロー本部の人間が……!?研究の為に購入したのではないのか?」


青柳さんが震えた声で呟く。


「それならばコズミックグリーンなり、研究所の人間なり、重役に話が行くはずです。

黙っているということは……」


「個人的な目的で使用する為……か。」


焔の言葉を、赤松が補足する。

焔は「仰る通りです」と言って微笑んだ。


「正直今のヒーロー本部は悪い噂が多すぎる。

俺は、内部の人間を100パーセントは信用していません。

そこで考えたのがブラックホール団に協力を仰ぐという選択でした。」


言いながら焔はウリュウの顔を見る。

勿論でたらめだが、ウリュウはさも前から焔に話を貰っていたかのようにゆっくりと頷いてみせた。


「彼等は非常に戦闘力が高く、ヒーロー志望でもないので余計なバイアスがかからない。

加えて、かねてから地球人に友好的な姿勢を見せていた。

それに……ほら?小暮司令官も元ブラックホール団員ですし。」


焔が白々しく言い放つと、重役達は宙を見つめ始める。


「現に須藤さんが加入してから1ヶ月程経ちますが、彼女はヒーロー達を傷つけるどころか……コズミックホワイトやコズミックイエローのメンタルケアに成功している。

2人の活躍は皆様もよく知るところでしょう。」


「……不調の中……よく立ち直ったと、感心していました。」


青柳さんは言いながら、メガネをクイッと上げる。


「責任なら俺が負います。ですから須藤さん並びに花岡君の件は、どうか多目に見て頂けませんか?

しっかりと監視はするつもりです。」


「監視と言ったって……!花岡君程の戦闘力を持つ人間に反逆なんて企てられたら……」


青柳さんの切り返しを待たず、焔は落ち着いた声で、しかしはっきりと。

「花岡君はとても強い。けれど……赤城焔には勝てません。」

と、言い放つ。


焔の傲慢な発言にウリュウは少しムッとした表情を見せたが、ミカゲさんは意外にも落ち着いてそれを聞いていた。


青柳さんはとうとう大きなため息を吐き首を小さく振ると、

「降参です……赤城君の強さは私もよく知っている。

一時的であれば提携を認めましょう。」

と口にする。


私は喜びで顔が緩みそうになるのをなんとか我慢しながらブラックホール団の幹部、焔たちと共に最高司令室を後にした。


ブラックホール団とヒーロー本部が提携する……つまり、私の任務が「潜入任務」ではなくなったのだ。

そしてウリュウの理想にも大きく近付けた、歴史的な日と言える。


(良かった……今までのことが全部、無駄にならなくて。)


私は心の中で静かにそう安堵していたのだった。


……


以前焔に連れて来られた高級ビュッフェにて、3人の幹部と焔が食事を摂る。

優雅に淡々と食を進めるウリュウを、焔は怪訝な顔で睨んでいた。


もしや、庇ってくれたのは良いもののあまりブラックホール団のことを良く思っていないのだろうか?


(あれがブラックホール団のボス……!俺より顔のいい男がこの国にいたなんて……!しかもリリアと知り合いなのかー……

いやでもボスって立場なら上司ってだけで、リリアとはそんなに親密ではない可能性も……!)


1番場を和ませてくれそうな焔がずっと難しい顔をしていることに耐えかねて、私は口を開く。


「あの……良かったの?こんな高いコースご馳走になっちゃって……」


尋ねると、ウリュウが「嫌なら食べなくていいぞ」と冷たく言い捨てる。


「今回こそは!俺の奢りだからリリアは好きな物食べていいんだよ?

何食べたい?お腹空いてないならスイーツとかどうかな?」


言いながら、焔は私の目の前にガラス製の皿を置く。

そこには宝石のようなケーキが並んでいた。


テンション高めの焔を見て、 ウリュウはピクリと体を揺らし、焔の持ってきた皿を「ありがとう」と言いながら引き寄せ微笑みかけた。


「いつもリリアがお世話になってます、コズミックレッド……いや、赤城焔君。

随分雑用係に優しいんだね、流石は権威ある隊長だ。

この度、君に会うことができて光栄だよ。」


ウリュウが天使のような笑みでそう言うと、焔もにっこり微笑みながら

「俺も双星を救った英雄に会えて光栄です。リリアは雑用係だけど凄く『俺を慕ってくれているから』可愛がってるんですよ。」

と返す。


「そう……『僕の婚約者』はかなりそそっかしいから、君も大変だろう。」


ウリュウのその一言で、焔は動揺しながら「こんっ……!?」と小さく声を漏らす。


「あれ?リリア、僕が婚約者ってこと彼に伝えてないのかい?」


「えっ……?いや、言ったには言ったけど信じて貰えなくて……」


私がそう答えると、シノがイヤホンを取り外しながら少しバツの悪そうな顔で

「おい、その辺にしとけ!飯が不味くなる。」

と言ったが、焔は止まらない。


「ちょっと待って!リリアは俺のことが好きなんだよね!?」


少し目を潤ませながら、焔が私に尋ねる。


「だから!別に恋愛的に好きではないって再三伝えてるでしょうが!」


言い切ると、焔はどこか焦点の合っていない目をしながら固まってしまう。

ウリュウは先刻ミカゲさんに向けられた傲慢な発言の仇を取ってやったと言わんばかりに得意げな顔をしながらまた食事に手を付け始めた。


ミカゲさんはその様子をチラリと見ると「うちのボスもまだまだ幼稚だな。」と小さくシノに呟く。

シノは心配そうに焔を見ながらケーキを頬張っていた。


「あ……そ、そうだシノ!あのね、あなたに話したいことがあったの。後で少し話せる?」


「いいけどよ、ここじゃ話せないことなわけ。」


「そ……そうなの。」


言うと、話す前からシノは何かを察したように私の顔をじっと見た後で

「まあ、たまには聞いてやるか。」

と呟いた。

【定期】

最近の活動報告にて、この作品の挿絵についてのアンケートを実施しております。

もし良ければご参加お願いいたします

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