VSグリーン
私は、目の前の大男…に、見えるロクタと暫く睨み合う。
ロクタは何も仕掛けて来ず、こちらの様子を伺っていた。
(埒が明かない…!)
10分近く続いた睨み合いに痺れを切らし斬りかかると、ロクタは軽く身を翻した後で私の腕を掴み、遠くへ投げる。
「うわっ……!」
片手にも関わらず私の体をいとも簡単に投げてみせるそのパワーに、私の心は少し折れかけた。
(焔の筋力を参考に…って言ってたし、ロクタができるってことは焔もこれができるってことだ…!)
何とか空中で身を翻し、綺麗に着地するとロクタを見る。
ロクタはまた少し体を構えながら再びこちらの様子を伺っていた。
「もしかして…自分から仕掛けないって、そういう戦法?」
私はロクタと距離を取りながら尋ねる。
「イエロー先輩からの知恵さ、僕はあまり戦闘スキルが高くない……故に、この恵まれた筋力を生かすなら『カウンター』を強化した方がいいと研究生時代に教えてもらったんだ。
そればかり練習していたので、攻撃を仕掛けられさえすれば僕は能力がなくても強い。」
流石ゆかり、こんなところでも絡んでくるとは…
しかしよくよく考えて見ればロクタはゆかりには先輩を付けて呼んでいたし敬語だった。
所謂師弟関係だったから親しげだったのか…
しかしカウンター特化と言うなら話は早い。
私の「本来の戦闘スタイル」ならば、ロクタに勝てる可能性はぐんと上がるのだ。
本来私が得意とするのは遠距離からの攻撃。
ロクタと距離を保ったまま、手に溜めた冷気を放出し遠くにいたロクタに撃つ。
すると、ロクタは私が放った氷塊を軽快にキャッチして、物凄い速度で投げ返してきた。
「うわ!」
(おおよそ人が投げていい速度じゃなかった…!あれ、本当に生身の人間の筋力を参考にしてるの!?)
しかし脅威はそれだけではない。
いくら焔の身体能力を反映されているからといって、放たれた氷塊をキャッチできるかどうかというのは「ロクタ本来の反射神経」が関係している。
ゆかりがロクタにカウンター特化の戦い方を勧めたのは、恐らく彼の反射神経が高いことに気付いたからであろう。
高い反射神経を持ったロクタに焔の身体能力が加わった相手…それが目の前にいる「コズミックグリーン」なのである。
(少年だと思って甘く見てた…!)
思えば、あの強力な能力を持った若葉さんが研究生で留まりロクタがコズミックグリーンであることを良しとしているのに弱い筈がなかったのだ。
しかし私も今回ばかりは「負けてから対策」と暢気に構えてもいられない。
組織に関わる情報を賭けてしまった以上はいつもよりも必死になる必要があった。
私は氷の山を形成し、ロクタをどんどんと動きにくい空間へと追い込む。
カウンター特化ならば、恐らく派手な攻撃に移った時に過剰に逃げる傾向があるだろう。
目論見通りロクタは氷の山を警戒して山を形成した方向から遠ざかるように動いている。
つまり、ある程度誘導が可能ということだ。
次第に氷の山に囲まれた場所までロクタを追い込むと、氷の山を一つの点としてそれを結ぶように厚い氷で閉じ込めようと壁や天井を氷で覆っていく。
(よし、これで動きを封じられる!)
しかしロクタは少し動揺したような仕草を見せた後、天井が埋まりきる前にジャンプして氷の部屋を脱出してしまった。
「はい!?」
(今自分の身長くらいジャンプしなかった!?焔なら生身でもそれができるって…そう言いたいわけ!?)
天井から紙一重で脱出したロクタは、氷の山を足で砕くと槍状になった氷塊をこちらに投げ始める。
ロクタと私の間には恐らく50メートル以上の距離が開いているにも拘らず足元に刺さったそれは、私の混乱を招くのに十分だった。
(あんな離れた場所から的確にこちらを狙えるわけ!?)
なんとか壁を形成し隠れると、どうやったらこの状況を打破できるのかを必死で考え始める。
壁に隠れている間、ゴツゴツと氷塊のぶつかる音が私を大きく動揺させた。
(待ってよ聞いてない……!今戦ってるのって、本当に人間なの!?)
頭を抱えていると、物凄い轟音が背後に響き、私の背にあった壁を壊す。
槍が壁を壊した…?違う、ロクタがこちらに攻撃を仕掛けたんだ。
「逃げてばかりがヒーローと言う訳には行かないからね。」
ロクタはあまりにも飄々と言い放つと、私を掴んで地面に叩きつけた。
何が起こったのかわからないままに茫然と空を見る。
するとロクタが見かねたのか私に手を差し伸べた。
「大丈夫かい?……余程、負けない自信があったのかな。」
ロクタの言葉に図星を突かれ、私は俯く。
「あった……ごめんなさい、正直かなり侮っていたんだと……思う。あなたとの約束であるジェド族の能力も使えなかった……」
驚きながら言う私を見てロクタは少し声を上げて笑うと、パワードスーツを脱ぎ捨てる。
「コズミック7に弱者はいない、そのくらいのことは君もわかっていただろう?
それに、約束に関してはシノザキの件のみ守ってもらえればそれで構わない。」
私を立たせながら、ロクタはそう口にした。
まずい……シノの情報を教えるなんてかなり迷惑をかけるだろうし……本人にどう謝罪したものか……
躊躇っていると、ロクタは私の顔を見て何かを察したのか
「……大丈夫、情報を悪用したりしない。ただ本当にシノザキの存在が僕に必要なんだ。」
と優しい眼差しで言う。
「……どうして……?何か開発中の物があるとか……?」
尋ねると、少し目を伏せた後でロクタがこちらを真っ直ぐ見て、口を開く。
「須藤君、実は怪人化チップを作ったのはね……僕なんだ。」
「え………」
そう言い放つロクタを見て、私は小さく声を漏らすことしかできなかった。
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