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番外編 ナギの災難 下

翌日、須藤と出かける為の準備をしていると突然スマートフォンが鳴る。


(エリヤさんから……)


嫌な予感がして出ると、エリヤさんは上機嫌に

【今日の13時に回転寿司集合ね!凛ちゃんも誘ってるから!】

と言い放つ。


13時集合……って言っても、どうせ遅れるか話が長引くかで18時にはずれ込むな。

須藤との約束が16時だから、ブッキングしてしまう。


「あの、俺既に約束があって……」


【ん……何で?メンバー聞いたら分かるよね、お仕事の話だよ?それより大事な用事?】


(……結局、バレたらめんどくさいことになりそうだし。)


「いえ、13時に回転寿司屋ですね。」


俺はそう言うとため息を吐きながら須藤にメッセージを打つ。


【ごめん、行けなくなった。支払いは済ませておいたから須藤だけ見てきて。】


(……須藤、もう俺とどっか行ってくれないだろうな。2回もやらかしてるし。)


俺はそんなことを考えつつ支度しながら家を出た。


★ ★ ★ ★


「うちの司令サマは流石だよね〜、こんなイケメンたち集めておいて『ごめぇん☆友達と遊んでたら楽しくなっちゃっていつ終われるかわかんないかも!』とか舐めすぎな。」


凛太郎が怪訝に言い放つ。

俺はどこか安心しながら少し遅めの昼ごはんを楽しんでいた。


「ちょっと、上司の悪口なんて大声で言うもんじゃないよ。」


俺が凛太郎を咎めると、彼は言葉を飲み込むかのように何も言わずに流れてきたドリンクを手に取りごくごくと飲み始める。


「凛太郎……それ出汁。」


指摘された凛太郎は、むせてゴホゴホと咳をした。


「もーやだ……あの女に関わると本当にろくなことがない。」


凛太郎は涙目で弱々しく呟いた。

……その言葉関には、共感できるかもしれない。


「……あのさ、聞きたいんだけど。」


俺は神妙な面持ちで話を切り出す。


「どした?」


「前の……会議にもなった件。灰原君が雑用係になることで落ち着いたのは知ってるんだけど、その後は大丈夫?」


「ああ!その節はありがとね、俺頭悪いからああいう場面切り抜けんの苦手でさ。」


俺の言葉に凛太郎が頭を下げる。


「い、いいよ!改まって……そうじゃなくて、灰原君の今後とかどういう経緯でその処罰になった、とかが気になってて。」


「んー……灰原君、基本はエリヤちゃんに言われた通りに仕事をこなしてたみたいだけど、兄ちゃんやゆかりのリークに関しては私情も挟まってたみたいでさ。

話し合いの結果、『更生プログラム』をこなして貰ったら、本部を辞めるかどうか決めてもらうってことになったよ。」


初めて聞く単語に、俺は少し首を傾げると

「更生プログラムって、何?」と尋ねる。


「やらかした奴にボランティアみたいなことさせる制度のこと。本当ならこれが終わったら研究生に戻れたり活動復帰できんだけど、灰原君にはそれがない感じ。」


凛太郎は困ったようにそう答えた。


「そっか。……灰原君、辞められそう?」


「無理かもね、エリヤちゃん灰原君のこと気に入ってっし。なんだかんだ色々かいくぐってでも縛り付ける気だと思う。

灰原君は辞めたがってるけど……」


「そっか。」


……俺にも、辞めたくても辞められない気持ちが痛いほどわかる。

灰原君と違って手続き的に縛られている訳じゃないが……


昔エリヤさんにかけられた、あの言葉の数々……何度も彼女に救われたし、何度も元気を貰った。


エリヤさんは多分どこかで何かがあって今あんな状態なんだろうが……いつか、もう一度出会った頃の彼女に戻してあげたいとここまで付いて来たはいいものの……

そんな日が来るのか、最近怪しく思えてしまう時がある。


「そう言えばさ、今日のナギかっこいーね!」


暗くなった空気を晴らそうと思ったのか、凛太郎が楽しそうに言う。


「えっ!?」


「どこか出かける予定だったん?」


「あー……」


俺は少し指を突き合わせ

「須藤さんと……映画行く予定だった……」

と呟く。


凛太郎は、それを聞くと笑顔のまま固まってしまった。


「へ……えー……『リリア』と。もう行ってきたん……?」


凛太郎が掠れた声で、やけに名前を強調しながら尋ねてくる。


「いや、これからの予定だったんだけどエリヤさんに呼ばれちゃって。」


「え?じゃあ用事を断ってここに?」


「まあ……ね。別に僕との用事とか、須藤さんはなんとも思ってないだろうし……気にしてないと思うけど。」


視線を落としながら言うと、凛太郎は呆れたようにため息を吐く。


(なわけないじゃん、リリアにとっちゃナギとのお出かけなんてめちゃくちゃ嬉しいに決まって……いや、ナギはリリアのこと忘れてるしそんなのわかんねーよな。)


「……俺、もうお腹いっぱいだから帰るわ〜

ナギ、ご馳走様ー!」


ふと、伸びをしながら凛太郎が言う。


「え!?おい待て、エリヤさんとの約束は!?

てかなんで俺が払うことになってんだ!」


「あはは、冗談だって。あれだ、エリヤちゃんには2人とも食べ過ぎで体調崩したから解散したって言っとくわ。

この後暇だろ?映画でも見てきたらいいじゃん。」


「……!」


凛太郎はそれだけ言うと伝票を持って席を立つ。

俺は彼を見送りながら、小さく「ありがと……ご馳走様……」と呟いた。


(時間的には、全然間に合う……須藤、俺が今更「やっぱ行く」って言っても行ってくれんのかな。)


携帯を見ると、須藤から【本当に行けないの?】というメッセージと怒った熊のスタンプが送られてきていた。


……


【やっぱ大丈夫かも、今から行ける?】と返信すると、すぐに喜んだ猫のスタンプが返ってくる。


(須藤、楽しみにしてるって言ってたしな……しょうがない、行くか。)


俺は弾む足で映画館へ向かったのだった。

【⠀定期⠀】

最新の活動報告にて、この作品の挿絵についてアンケートを行っております。

もし興味があれば是非見て頂けたら幸いです。

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