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幸せになって

公園に着くと、私は車からから荷物を取り出しウリュウの隣を歩く。


ウリュウと好きな人が今どの程度の関係性かは分からないが、「好き」と伝えるのは失礼に当たる。

彼には感謝の気持ちだけを伝えよう。


そう心に決めたはいいものの中々言い出せず、まずは簡単な世間話から始めることにした。


「あ……の……聞いてもいい?お相手ってどんな方なの?」


沈黙の時間がを破るように、ウリュウに尋ねる。


するとウリュウは少し間を置いた後で

「企業秘密だ、そろそろ他人になる奴に教えられることじゃないね。」

と悪態をついた。


「ああ……?そう……!」


私は怒りを必死に押し殺し、必死に平静を装う。


(今から感謝を伝えるって時に感情的になっちゃダメよ……!)


「あ、あのね!お父様から、遺恨が残らないように言いたいことは全部ウリュウに言ってから別れなさいって言われたのよ!」


「それは恐ろしいな。どんな恨み言を吐かれるやら。」


ウリュウは退屈そうな様子で呟く。


(まあ、そっか。ウリュウからしたら早く話をつけて帰りたいわよね、手短に済ませないと。)


「ウリュウ、あのね……私、あなたには感謝してるのよ。

あなたは無視せずに認めてくれて、話を聞いてくれて、一緒に戦ってくれた。

まあ、これからも仕事では関わる訳だけど!

いつもありがとうって、言いたかったの。」


ウリュウは、視線を落として私の話を聞いていた。


「だから、じゃーん!これ、あなたへの餞別!

可愛いでしょ?ペアの花束!気が早いかもしれないけど、2人が幸せになれますようにって思いながらお花を選んでみたのよ!」


後ろ手に隠し持っていたそれをウリュウに渡すと、彼は口元を引き攣らせながら「ありがとう」と呟いた。


「それからこれ、地球人の間で流行ってるミサンガ!これを付けるとずっと一緒にいれるんですって!

ウリュウが好きな人と、ずっと仲良くいられたらいいなと思って赤を選んでみたの!」


笑顔で手渡すと、ウリュウはじとっとした目でミサンガを見つめている。


やはり、ウリュウは大人だしお金持ちだからこういった物は好まないのかもしれない。


「ありがとう、大事にする。

……言いたい事ってそれだけ?そろそろ帰らないといけない時間なんだけど。」


ウリュウはそう言って時計を見る。


「ええ!忙しいのに時間を取らせてごめんなさい。」


言いたい事は概ね伝えた。きっとこれで後悔せずに済むだろう。


「そう、じゃあ……せいぜい元気出やれよ。」


そう言って去っていくウリュウの背中を眺めながら、私の頭に余計な考えが過ぎる。


……本当に……言いたいことを言いきっただろうか?


私の言いたかったことは、本当に感謝の気持ちだけだったのか?


「――っ」


私の体は咄嗟に動いて、ウリュウの腕を掴んだ。

意志とは関係なく溢れる涙が頬を伝ったことで、やっと自分が馬鹿な行動をしていることに気付く。


ウリュウの後ろ髪を引くようなことをしてはいけない。

頭では分かっていても、体が言うことを聞かなかった。


「何……やっぱり恨み言の1つでも言いたくなった?」


ウリュウが呆れたように言うと、私は息を軽く吸った後

「私ね……ウリュウのこと、大好きなの。」

と言い放つ。


その言葉に、ウリュウは目を見開いて固まっていた。


「あ……勘違いしないで!別に恋愛的な意味じゃないわ。

そうじゃなくて……私、あなたのこと凄く信頼してるんだ、これからもきっと同じ。

それに……その、勘違いかもしれないけど……あなたも、同じな……気がして。」


何とか言葉を選びながら、私は必死で胸の内にあった言葉を引き出していく。


「ウリュウから信頼されてるって思ったら、私凄く頑張れたの!

離れてても、あなたに守られてるような気がしてた。

だから……だからこれからは、それが無くても一人で頑張れるようになるから!

何にも、不安に思わないでこれからも私に任務を任せて!」


「真理愛……」


ウリュウは何も言葉が出ないといった様子でただ私の名前を呟く。


「ウリュウ……あのね、あのね……!

私、ウリュウが大好きだから……!だから……!

幸せになってね……?」


ボロボロと涙を流しがら、何とか声を絞り出してそう伝える。


――良かった。今度こそ……


今度こそ、全部言えた。


安堵していると、突然腕を引き寄せられ、ウリュウは私を抱きしめる。


「……え……」


「最後だけかける言葉を間違えてる。

『幸せになって』じゃなくて、『幸せにしてね』或いは『幸せにするね』が婚約者に向ける適切な言葉だ。」


(婚約者に……向けるっ……て……)


ウリュウは持っていた花束を1つ分けると、私に差し出す。


「真理愛……僕も君にちゃんと伝えてなかったことがある。

僕は、君が好きだ。

……これは、恋愛的な意味と取ってもらっていい。」


「………」


一瞬で顔が熱くなり、言葉を失ってしまう。


「で、でもそれじゃ……好きな人ができたっていうのは?」


「でまかせだよ。……そうでも言わないと君が引かないと思ったから……

僕はただ君を束縛したくなかっただけで、嫌いになったとか本当に他に好きな人ができたわけじゃない。

ずっと前から僕は君しか見てないからね。」


淡々と気恥しい言葉を吐かれ、私の心臓は爆発しそうなまでに鼓動していた。


「婚約解消は……やめだ。君を思って決断してやったのに、愚かにもそうやって焚きつけるから気が変わった。

もう少しだけ縛り付けてやる。」


私はその言葉を聞いてどこか安心してしまう。


「腕、出してごらん。」


ウリュウに言われるがままに腕を出すと、彼はミサンガを私の手に結んだ。


「……別に、僕が君のことを好きだからって、気を遣うことはない。

これからも誰を好きになるかの自由は君にあるし、縛るつもりは無いけど……」


ウリュウはミサンガを結び終わった後で少しだけ黙った後、ゆっくりと顔を近付けて私の額にキスをした。


「はえ!?」


「……僕を選べよ、真理愛。」


耳元で囁かれ、私は心のキャパが足りずにプルプルと震える。


(こんな直球に好きって言われたことなかったから、どう反応したらいいのか分からない……!)


「な、ナギの記憶が戻るまで手は出さないんじゃなかったの!?」


「今出たのは口だから問題ない。

……まずいな、本当にそろそろ帰らないと……

じゃあ、お父様の方には君から適当に説明しておいてくれ。」


ウリュウはそう言い捨てると公園を後にする。


その後、ミカゲさんに車を出してもらい婚約解消の話はなくなったとお父様に報告しに行った。


ミカゲさんもお父様も、私の持っている花束と腕に結ばれたミサンガを見て、少し嬉しそうに顔を綻ばせていたのだった。

右手小指の骨にひびが入った為13日から長期で更新が止まります。(スマホならタイピングはできるのですが、痛むので……)

ピンク編以降暗い展開が続いたので明日と明後日に番外編を挟みます。

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