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嘘と混乱

凛太郎は灰原さんの前まで来ると、無感情に彼を見下ろし

「透明になってどこまでやったの?女子のプライベート覗いたりした?」

と尋ねる。


すると、灰原さんが「覗きとかはやってない」と静かに答えた。

凛太郎は「本当みたいだよ」とメンバーたちに伝える。


「任務って、誰からの任務?メンバーから?」


次は、ゆかりが尋ねる。

それにまた灰原さんは「違う」と答えた。


「これも嘘じゃない。」


「じゃ、役員?」


凛太郎が伝えると、ゆかりは矢継ぎ早に問いを投げる。


「……違う。」


灰原さんの答えを聞いた後、凛太郎は少し黙り込んだあと

「……嘘じゃないよ。」

と、呟く。


(あれ……なんか……)


私はなぜかその様子に違和感を覚えた。

凛太朗は嘘を吐く時、少し悲しそうな顔をする。

その特徴が、今回にも出ていたような気がしたのだ。


凛太郎が……嘘を吐いている?

凛太朗は何かを考え込むように暫し黙り込んでいた。


「……凛太郎、続けて?」


「俺、詳しくないから何聞いたらいいかわかんねんだけど。」


焔に促され、凛太郎はハッとしたように我に返りそう言って首を傾げる。

焔は「それもそっか」と呟いた後で

「俺やゆかりを貶めようとしたのも任務の一環?」

と灰原さんに尋ねた。


「まあ、はい。」


灰原さんが肯定した時、少し凛太郎の眉が動く。


「……なんだ、嘘じゃん。」


凛太郎は失笑混じりに呟いた。


「もしかしてさぁ、任務がどうとか言って他人に責任転嫁しようとしてない?本当は誰に言われたわけでもなく独断で全部やったんだろ。

兄ちゃんとゆかりをはめたのは正義感の暴走、リリアをつけてたのは勝手に怪しいと思って誰に相談もせず調べてた……違う?」


凛太郎は冷酷な表情で言う。

灰原さんは何かに気付いたような顔をすると、俯きながら

「流石ですね……ブルーさんに嘘ついても仕方ないや、そうなんです。

リリアが異星人かもしれないって気付いたから、個人で調査してました。」

と呟いた。


それを聞いてその場にいたメンバーは顔を見合せ、ナギはどこかホッとした顔をしていた。


「なーんだ。そんなことかよ……いるんだよなあ、正義感が暴走してとんでもないことする奴って。」


あかりが呆れたようにそう口にする。


「……それなら、どうします?警察沙汰ってほどでも無いなら上に報告して処分を待つとして、それ以外はお咎めなしで放置する感じですか?」


フユキが納得いかない様子で尋ねると、焔は難しい顔をしながら「まあそうなるかなー」と答えた。


「……ちょっと待って下さい。今の会話聞いてましたよね。

今、ここでリリアにも尋問してくれませんか?『お前は異星人なのか?』って。

多分、嘘を吐く筈です。

もしリリアが異星人だって分かれば、俺のやったことが正しかったって皆さんに伝わると思います。」


灰原さんは私をまっすぐ見ながら言う。

すると、凛太郎は首を押さえながら私に向き直った。


――凛太郎は、私の味方だ。

きっと私が嘘を言っても誤魔化してくれるだろう。


頭では分かっていても、この張り詰めた空気には少し耐え難いものがあった。


「リリア、お前異星人なの?」


凛太郎が尋ねる。


意を決して口を開いた時、どこからともなく「そうだよ」という声がして、私の心臓は跳ねる。


声の主は、焔だった。


「リリアに聞くまでもなく俺が知ってる。彼女は異星人だ。」


私だけでなく、事情を知ってるメンバー達全員が信じられないものを目の当たりにした時のような目で焔を見る。


「は……え?レッド隊長、こんな時に冗談は……」


ナギが口元を引きつらせながら言う。


「冗談じゃないけど……皆何そんなに驚いてるの?これってそんなに問題にするようなことじゃねーじゃん。」


焔はあくまでも冷静に、淡々と答えた。


「いや、大問題でしょ。何言ってるんですか……」


灰原さんが呆れたように吐き捨てると、焔は少し間を置いた後で

「いーや?問題じゃない。だって、ヒーロー本部に異星人がいるなんて、今に始まったことじゃないからさ。」

と口にした。


その場にいた全員が、焔の言葉を聞いて驚き言葉を失う。


「なんなら、役員にもいるけど……誰が異星人か、聞きたい?」


焔が笑顔で尋ねると、灰原さんは震えながら

「異星人が仮に問題じゃないんだとしても!経歴詐称をして入った時点で怪しいでしょう!」

と声を荒らげる。


「おっと、失礼……まだ周知が行き届いていなかったようだ。それは誤解だったんですよ。」


ミカゲさんが、タイミングを図ったように笑顔で言い放つ。


「……誤解……!?」


「先日、黄村さんに再度確認を取ったところ……リリアの経歴詐称の告発が『完全ではない』と認められたのです。

確かに双星は中退しているものの、『オーロスヒーロー学校を卒業していないという完全な裏取りは困難である』と。」


悠々と語るミカゲさんを見て私は絶句した。

初耳だ。知らない間に私の罪が帳消しになっている……!?


「つまり、リリアの罪は『双星卒業を隠していた』ことのみであり、この程度ならバレないと思って隠してしまうヒーローが多いこともまた事実。

正直に中退情報まで書くかどうかは人によりますからね……別に他人に迷惑をかけた訳ではない、彼女はしっかりここに認められて入った異星人だ。」


ミカゲさんが言い切ると、灰原さんは額に汗をかきながら虚空を見つめていた。


「それより、おかしなこともあったものじゃないか……俺はリリアに説明されたから経歴詐称のことを知っていたが、何故一研究生の灰原先輩がリリアの経歴詐称について知っているんです?

リリア、彼にこのことを話したかい?」


私はミカゲさんに尋ねられ、「いいえ」と答える。


「ならば……どうして内部の情報を知っているのでしょう?先輩は、『正義感が暴走しただけの一個人』である筈なのに。」


ミカゲさんは言いながらゆっくりと灰原さんに近付いていく。


「透明人間になれるなら、そこで知ったんじゃねえの。」


凛太郎が冷静に言う。


「それじゃ、前後がおかしいです。

灰原君は『リリア様が異星人だと疑っていたから透明になって監視していた』

経歴詐称の情報がそのきっかけだった筈なのに、その前から監視していたとなれば私欲を満たす為にリリア様にストーカーしていたと証明することになっちゃいますし、

違うなら内部情報を漏らした人間が確実にいることになる……どっちにしても黒です。」


フユキがそう切り返すと、凛太郎は少し動揺したように押し黙った。


「あー!混乱してきた!つまりどうすればいいわけ!?」


ゆかりが頭を抱えると、ナギが

「俺が……教えたんだ。」

と大きな声で言い放つ。


「え……?」


私は驚きで、そう声を漏らしたのだった。

明日だけ0時と18時で2回投稿します、日曜からまた18時に1回に戻ります。


【⠀定期⠀】

最新の活動報告にて、この作品の挿絵についてアンケートを行っております。

もし興味があれば是非見て頂けたら幸いです。

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